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「んー……」

 だいたいの位置がわかったら、はっきりするのかな?

 リアムよりは、多分好き。イハル兄(にぃ)とだと……うーん……。えーっと、こう、向き合ってギュッてされるのは、イハル兄でもオッケー。んでもって、後ろからギュッてくるのも……頭に顎乗っけるって形は平気だと思う。でも、イハル兄の顔が横にあるのは、ちょっと嫌。ってか、無理。

 ……状況によっては、イハル兄がほっぺたにキスしてきたら、ムカつくかも? それどころか、それが親愛の証って状況じゃなきゃ、されたら『セイ』かますかも。

 あれ? じゃあ何で、将軍だと嫌じゃないんだろ? イハル兄と、何が違うわけ?

 ……うぅ、解説つきの本とか、ズバッと言ってくれる人とか、いないかなぁ?

 イハル兄が考えろって言ったことは、何となく答えが出たんだけどさぁ。こっちは、いまいちよくわかんないよね。

 そういえば、昔、お姉ちゃんたちに、あたしって『好きかそうじゃないか』しかないって言われたっけ。

 家族やイハル兄は好き。一緒に剣の訓練する子たちは好き。遊んでくれる人も好き。でも、大きくなってから、あたしに理不尽な不満をぶつけてきた子たちは好きじゃない。だからって、嫌いってわけでもないけど。

 ……ひょっとして、そもそも、あたしに『好き』の区別がないのが問題ってこと?

 あたしが覚えてる頃にはもう、イハル兄のお父さんとお母さんはいかなった。お兄さんもいるって聞いてるけど、会った覚えがこれっぽっちもないんだよね。顔も名前もわかんない。話も聞いたことないし。

 近所だからなのか、イハル兄のお母さんと仲良かったからなのか、ずっと一緒に育ってきた。だから、あたしにとっては、イハル兄も家族同然ってわけ。

 よく、妹みたいな立場を利用して、とか言われてたんだけどね。イハル兄はイハル兄だもん。あたしが妹だろうが、同郷の人間だろうが、多分、戦場で会った時には態度は変わんない。

 態度が違うのは、戦ってない時だけ。

 でも、今だから思うよ。あの頃のイハル兄って、全然くつろいでなかった。いっつも、ピンと張り詰めた感じでね。はっきり言っちゃうと、警戒しっぱなし。

 そんなだから、あたしが「どっか行っちゃえ!」みたいな憎まれ口叩いたら、ホントになっちゃう気がしてたんだろうけど。

 ……あれ? そういえば、将軍はそんな感じしなかったね。

 「大っ嫌い」って言っちゃった時、謝って許してもらえるか、ってことは心配だったよ。でも、二度と会えないとか、謝ることもできないんじゃないかって心配は、全然してなかったっけ。

 将軍は、ここが居場所だからかな? どんなことがあっても、ここから離れないって、わかってるから?



 夕ご飯とかお風呂の時はスパッと切り離して、考えながらうっかり寝ちゃって。

 朝はエレンさんに連れられて、ドナに餌やり。

 いつ見ても思うんだけど、ドナってすっごくゆっくり食べるんだよね。この辺も個性なのかな?

「ユノ嬢、昨日イハル隊長から聞いたのだけど、私と訓練をしたいの?」

「イハル兄でもいいって言ったんだけどね。エレンさんに頼んどく、って言われた」

「またヴァージルと何かあったんでしょ?」

 ……ひょっとして、エレンさんも、鋭い人種?

「あのヴァージルを見てから、イハル隊長にユノ嬢を頼まれたら、そのくらいは察しがつくわ」

 クスクス笑いながら種明かししてくれるエレンさんは、何だかすっごく楽しそうなんだけど。

 まあ、エレンさんは将軍のこと、嫌いだもんね。

 嫌いな人が落ち込んでると、楽しいって気分になるらしいね。あたしはそういうの、わかんないけどさぁ……ちっちゃい頃、リノ姉が言ってた。メッチャいい笑顔で。

 ただ、将軍が見てわかるくらい、どうかなってるってのはわかったよ。

「でも、私だと、相当手加減がいるんじゃない?」

「あ、打ち合いはあんまりしなくていいよ。走り込んで筋肉つけてる間、一人だとつまんないじゃん? 休憩してても、おしゃべり相手いないと寂しいし。そういう意味での訓練相手って思ってくれたらいいよ」

 休憩してても、訓練してても、黙りっぱなしって息苦しいじゃん?

 そういう意味でも、騎士(エクエス)様たちと訓練するのって楽なんだよね。打ち合いは、あたしの戦い方と違いすぎて、あんまり参考にならないけど。

「そう? じゃあ、私はいつもどおりに訓練するわ。よかったら、今から訓練するから、一緒にやっていく?」

「うん!」

 あれ? でも、エレンさんって、素振りとか、あたしがやるようなこと、あんまりやらなさそうだよね?

 どうやって訓練するんだろ?

 ボーッと見てたら、朝ご飯が終わったっぽいドナを、つなぐのやめちゃった。で、槍持って、自由になったドナからある程度距離を取って。

 ……うん、何となくわかった。

「ドナ!」

 エレンさんが名前呼んだら、ドナはひと声吠えて、ちょこっと羽ばたいて浮き上がる。エレンさんはバッチリ、槍を構えて準備。

 予想どおり、ドナとやり合ってるーっ!

 ドナの両手の爪を、槍一本で器用に防いだり受け流したりしてるんだけど……あれって、人間に可能なんだね。ちょっとびっくりしたよ。

 そりゃあ、エレンさんが強いわけだよね……。毎日、自分の騎竜とこんな過激な訓練してるなんて、誰も思わないっしょ?

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