第2章
奇病■■専門―奇人
⻆谷 春那
第2章
「・・・君、こんな所で、何をしているんですか?
時計屋は下ですよ?」
「そういうお前こそ、何をしているんだ?
ここは、診察室だぞ?」
お互いに、頓珍漢な事を言う。無論、お互い、「順当な理由」がある事は、理解しているが、頭と感情を理性で綺麗に一致させる事が出来るほど、人間と言う生物は高等なものでは無い。
「・・・名前を見て、
『奇遇な事もあるものだなぁ。』
とは、思っていたが…。」
「私は、こんな事、思いもしなかったよ。」
「おいおい。せめて、これから行く医者の名前くらい、確認した方が良いんじゃないのかい?」
「私の直接の用事ではないからね。出会ってから、覚えても、因果関係が逆になるだけさ。結果が変わる事では、ないだろう?」
「いや、結果が変わる事だって、あるさ。僕は今確かにこの椅子に、あたかも医者のように座っているが。本当はただの研修医とかだったら、どうするんだよ。」
「その時はその時さ。臨時出費が、臨時収入に変わるだけさ。」
「全く、君は薄情な人だな。相変わらず。」
「そういうお前こそ、変わらないな。ヴァンパイアか?」
「全く、たった2年で、変わる訳ないだろう?君が、変わり過ぎなんだ。」
「そんな事、無いさ。実際、あのクラスのマドンナ―今川さんなんて、もう第二子を出産したそうだ。」
「そんな事、僕も知っているさ。それこそ、君じゃないんだから。」
白衣の男は、スーツの男に向かって、
「もう、第三子妊娠中だそうだが?」
と、突っ込む。
もっと年月が積み重なっていれば、話も積もっていただろう。しかし、「石器出土」程にしか、積もっていない。さらに、患者はスーツの男のみではない。そのため、少しの脱線をカバーする程度に、スピーディーに話を進めていかなければならない。
「へぇ、姉君が。それは、災難な…。」
そう言いかけてから、驚く医師。
「・・・って、姉?」
「あぁ、血は繋がっていないがね。ほら、小5の頃の、母親の。」
「あぁ、『三月天下』の?」
「そうそう。」
「って事は、二人で破局させた?」
「そうそう。あのヒス。」
「あぁ、あのヒス。あ?あのヒス、娘居たっけ…?」
「あぁ、前夫との子供の。」
「あぁ、あの人か。まさに、『トンビが鷹を産んだ』みたいな、知的な人か。あの人がまさか、発症するとは…。まぁ、もう25年も経つのか。って、あ。問診は?」
後ろの通路を、ちょうど通りかかった看護師に聞く。
「問診?」
「渡されなかったかい?」
「まぁ、そうだね。」
偶然通りかかってしまった、今日の星座占いは12位だったのかもしれない看護師が、戻って来る。しかし、その手の紙は、プリンターから噴出されたらしきインクのみで、ボールペンからのものはなさそうだ。
「あ、また掛野さん、忘れたのか…。」
「受付の、レディかい?」
「そうそう。真面目で良い人だけどね…。」
「『仕事の出来=経験値の高さのお局様』よりかは、幾倍も素敵だな。」
「・・・あ、次かその次の診察の時は、僕がその姉君のところに行きたいんだけど。」
「あ、ちゃんと現場まで来てくれる医者?」
「いや、現場と言うか…。逆に聞くけど。内視鏡とかでも、患者の隣に、医者は立っているだろ?それと同じさ。」
「成程。」
「姉君の予定、分かる?」
「まぁ、多分?」
「じゃあ、あとは君の予定だな。」
「あ、私も同伴?」
「君さ…。全く、少しは人の心を持て。」




