04:レムスの元に訪れた意外な客人と、LLドールのアクアマリン。
レムスがクリスとリアの元から逃げ帰ってから数日。
レムスは抜け殻のようになって日々の仕事をしつつ過ごしていた。
クリスとリアはあの決闘の日から誰に憚られる事なく日々を過ごしている。
その熱々っぷりは、聞きたくないと思っているレムスの耳に入ってくるくらいだ。
曰く、保健室に体調を崩した生徒が行った所、空いているベッドで二人が裸で寝ていた。
曰く、放課後の個室で二人が出てきて、二人とも服が崩れていた。
誰もいない夕方の教室で、音楽室で、クリスが生徒会長を務める生徒会室で……
そんな話が聞こえてきている。
とはいえ、LLドールをそういった扱いするのは珍しいがあり得ない話ではないのだが。
だからクリスに憧れる人たちの嫉妬の炎が燃え上がったが誰も邪魔することはできず、二人の愛の日々をただただ見守る事だけしているのだ。
そんなある日。
レムスに客がやってきた。
借金奴隷であり、知り合いもリア以外いない彼に客、しかも内密な客と聞いて、レムスは少し緊張しながら待っていた。
「失礼。待たせたかしら」
レムスは礼をしてその客人を迎え入れた。
「頭をあげて構いませんわ」
そう言われて頭を上げると、驚いた。
「あなた様は……」
「初めまして。私はクリストファー・ルーンフォールド公爵令息の婚約者、ルーナ・ガルデリアと申します」
「は、初めまして」
こういった時の礼儀作法などよく知らないレムスは唯々直立不動して彼女を迎え入れた。
そんな失礼と思われてもおかしくないレムスをルーナは笑わず、
「そう緊張なさらないで。大切な話がありますから、座ってくださいな」
そう声をかけ、レムスを座らせた。
「話の前にまず確認しますね。あなた、クリスのLLドールのアリアの知り合いだというのは本当かしら」
「はい。一緒に旅をしていました」
まだ数か月前の話なのに、もう何年も前の気がする。
レムスはそう思いながら質問に答えた。
「そう。で、あなたもご存じの通り、私の婚約者はアリアに夢中なの」
「噂はよく耳に入っております」
「でね、私としてはね……」
ルーナはしばらく息を吸うと、思いっきり吐き出した。
「大好きなクリスが私以外の人に笑顔を向けるのが絶対に許せないの!!!」
そう叫んだ。
「確かに、LLドールに嫉妬するなんて馬鹿な事だって事はわかってるわ。でもね、それでも我慢できないのよ。私がこんなに嫉妬深いなんて初めて知ったわ」
婚約者のLLドールに嫉妬するなんて愚かな事。
これは貴族間では当然の考えである。
婚約者はLLドールを大切にするのは当たり前。
だって、LLドールは買い主が自らの好きなようにコーディネートされるのだから。
そんな中嫉妬を明らかにする彼女は珍しい人であった。
「で、よ。私としては、クリスからあいつを引き離すためにあなたに力を貸して欲しいわけ」
「か、かしこまりました」
緊張してレムスは答える。
クリスからリアを引き離せばリアが自分のもとに帰ってくるかもしれないという願望も込めて。
「で、どうするかというとね」
ルーナの説明が入る。
「へ?」
その内容に、レムスは驚くのだった。
そして、それから一か月。
ルーナは新たなLLドール、アクアマリンを従えていた。
「あの、ばれないのでしょうか?」
「大丈夫よ。何のためにこの一か月色々勉強させたと思っているのよ」
そう、アクアマリンの正体は、長髪のかつらをつけ、化粧をしたレムスであった。




