03.クリストファー・ルーンフォールド公爵令息と、リア(アリア)の過去と再会と。
クリストファー・ルーンフォールド公爵令息は、幼い頃からとても優秀だった。
教師の言う事をよく聞き、文武どちらにも優れ、それでも決して奢らず努力を続ける彼は、公爵家の跡取りとして期待されていた。
しかし、そんな彼にも欠点があった。
彼は、家族を、婚約者を大切にしている。
しかし、彼はほとんど笑わず、心から笑ったり怒ったりしなかったのだ。
家族に対しての笑顔も、それが必要だからそういう表情をしている、つまり状況に応じて仮面を付け替えるのと同じような感覚で彼は表情を作っていた。
家族や婚約者を大切にしているのも、大切にするものだと周囲から言われたから。
それだけが理由だった。
彼は家族の情や誰かを愛する心がすっぽりと抜けていた。
もちろん、公爵家の次期当主として、時に感情に流されず行動することは素晴らしいことだ。
しかし、心から笑ったり怒ったりしたことが無いものが、他者の心を理解できるだろうか。
両親である公爵夫妻は悩み、彼に高位貴族の多くがしている趣味、男色を少し早いが進めてみることにした。
彼が気に入る男の子を見つけ、その子と共に暮らさせる。
そして、その子が優秀ならばLLドール候補として公爵家で育成する。
そう計画したのだが、なかなか思惑通りにはいかなかった。
何人か美少年を紹介したが、クリスは興味を示さなかったのである。
困った公爵夫妻は、非公式で奴隷を売買している組織にまで手を広げてみることにした。
この組織は世界にネットワークを広げており、非合法の仕事をしている。
そして、国問わず数多の王侯貴族が裏の仕事を依頼しているのだ。
ある日、公爵夫妻は組織が売っている少年奴隷の市場をクリスと見に行った。
あまり期待はしていなかったのだが、なんと入ったばかりの幼児をクリスは気に入ったのだ。
クリスがあまりに頼むので、その幼児をその場で長期間専属雇用にしたくらいだ。
クリスの幼児に対する思いは強く、何度も勉強の合間をぬっては会いに行き、両親がその幼児の事をクリスに聞くと、今までなかったほどの笑顔で幼児の話をしたのだ。
ちなみに、その幼児には組織は番号しか名前を付けていなかった。
そして、組織は幼児の上客であるクリスに、幼児の名前を付ける権利をプレゼントしたのだった。
そして、クリスはその幼児に名前を付けた。
アリア、と。
そして、ある日。
専属期間が終わったので、今度はアリアを購入しようとしていた公爵家だったのだが、すでに先約が出来ており、アリアは外国へ行くことになってしまった。
そして、別れの日。
クリスとアリアは、体の関係を持った。
二人にとって初めての行為。
クリスはその行為がどういったものかを事前に勉強していたし、アリアも組織の人間から勉強させられていたので、初めてでぎこちなかったが、お互いに心を満たす時間だった。
ちなみに、アリアは年齢からして精通など普通はするはずないのだが、薬によって無理矢理精通させられれていたので、問題は無かった。
そして二人は再会を約束し、別れた。
その後。
アリアは戦場に向かいながら、様々な変態男との肉体関係を組織から強要されるようになる。
そして、組織が潰れて、(正確には組織の一支部が潰れただけだが)アリアはレムスが所属していた傭兵団に拾われることになる。
そこで名前を尋ねられたアリアは、アリアと名乗らず、リアと名乗った。
それは、過去と決別、だけど捨てられない過去への思いが混ざった名前。
初めてつけられた名前を本名と呼ぶのなら、リアの本名はアリアだ。
しかし、その名前を名乗るのをリアはやめたのだった。
アリア改めリアは、もうクリスには会わないと決めていた。
自分はあの頃の自分ではない。
剣の才能に恵まれ、数多の人を卑怯な手を用いて殺した、
多くの人に体を売り、数多の変態行為に及んだ。
昔の自分との決別から、もう会わないと決めたのだ。
しかし、リアの心の奥底、本人が絶対認めたくない本心。
それは、クリスに嫌われたくない、ただそれだけだった。
クリスに嫌われる事は、美しかった幼い頃の思い出を傷付ける事だから。
そう思い、会いに行かなかった。
アリアという名前と共に、美しい思い出も封印した。
その思いが、凍っていた彼の心を、より冷たくしていったのだった。
一方クリスの方はというと。
支部壊滅の知らせと共に、アリアが死んだとの知らせが公爵家に入って来た。
それを聞いたクリスはその場に倒れ、起き上がれなくなってしまう。
食事も喉を通らなくなり、痩せ細ったクリスを心配した公爵夫妻は、アリアが生きているかも、という嘘をクリスに伝えた。
本来のクリスなら、そんな嘘に惑わされない。
だが、アリアはクリスにとって、何より大切な人だった。
クリスはその僅かな光に全てを掛けた。
アリアは生きている、その思いだけで、クリスは生きていた。
両親に頼んで人をやり、自身も行商人や奴隷商人から話を聞きに行った。
外国人を売る奴隷商の話を聞くと、必ず奴隷を見に行った。
もちろん貴族としての勉強等も行った。
疎かにしているとアリアに再開した時に彼を悲しませますよ、との両親の言葉に、クリスは奮起し様々な事に力を入れた。
こうして文武外見全てに優れるようになったクリスは数多の女性のみならず男性にも想われるようになり、第二王女の婚約者にもなったが、クリスは王位を争うことはしなかった。
ただ、いずれ妻になる第二王女は大切にした。
贈り物やパーティなどは欠かさず行った。
彼女もいずれはアリアと同じ家族になるのだから。
そしてある日。
しばらく学校を休んで奴隷市場を回っていたクリスは、小さな奴隷市場を訪れていた。
借金奴隷を売っているという奴隷市場を見に行った際、彼は息を飲んだ。
少年は、自分と別れた時より体が大きく、やつれ、無表情。
だが、クリスが見間違うはずがなかった。
その奴隷、商品名リアは、アリアだと。
速攻で買った。
金に糸目を付けるわけがなかった。
そして、引き渡しの日。
「久しぶりだね、アリア」
引き渡されたリアを見て、クリスはすぐ抱きしめた。
「違う。俺は、リアだ」
「私が見間違うと思うかい?アリア。ずっと探していたんだから。生きていてくれて、本当に良かった」
「違います」
そう言うリアに、クリスは口づけをした。
「いけません。俺はまだ汚れて」
「かまわない。君はどこも綺麗なのだから」
そうした再会後、アリアは公爵家に連れられ、即LLドールとして登録された。
「クリス様、俺はリアです」
「いつまで言ってるんだい?君の見えないところにある小さなほくろも、僕の記憶のままだった。まぁ、そんな物がなくても、僕が君を見間違えるわけがないけどね」
「ですが、人は間違いを起こすものです」
「それなら、アリアとは別に君を大事にするまでだ。僕のたった一つの宝石によく似た君をね」
「……わかりました。そこまでおっしゃられるなら、俺もLLドールとして、あなたにお仕えします」
こうして、二人の日々は始まった、いや、再開した。
二人は空白の日々を埋めるように一緒の時間を過ごす。
そして。
「だ、駄目です。俺の手は血塗れで、それに多くの変態と体の関係を持たされて……」
「私は気にしない。でもアリアが気になるなら、僕との思い出で上書きして見せる。ほら、それに君の体も、こんなに大きくなって私を求めているじゃないか」
二人は離れていた間に冷めた体を、再び温めあったのだった。
えー……。私、ギリギリを責めるのが大好きなのですが…………。
この話では特にヤバイ内容が出てきます。
小説でよかった。絵にしたらかなりヤバい内容。
あー、でも誰かに絵をかいて欲しい。
さすがにこれはまずいかな?と思ったのですが、まぁ男同士だしいっか!という気持ちでOKしちゃいました。
これが男女だったり女性同士だったら絶対NGでしょうね。




