042 王都での生活開始
「ごめん!こっちのお客様の相手をしてくれない?」
裏で商品を出していると、表から声がかかった。
王都に来てから数日経ったけれど、私たちの生活に大きな変化はなかった。
私の降雪魔法でモノを出して、お客様に売る。でも、まだ仕事先はできてない。
ヌリズ領では農村での仕事をルカンが持ってきてくれたからこそ、外でも働けていたけれど、王都に農村はない。じゃあ中にある商店でお仕事はできないかと思っていたのだけど、それも家族のお店は家族で切り盛りして、入る隙はなかった。
私たちは全員変わらず身寄りのない子どもの集まりだからこそ、受け入れてもらえないだけな気もするけれど、とにかく働く許可は出なかった。
ちなみに、家もヌリズ領のときと同じ感じ。街の大通りから離れた、空いている家に勝手に住まわせてもらっている。ここの家は前までの家と比べて狭くて小さいけれど、みんなとの距離が近くなったからこそ、そんなに悪いところばかりではないと思う。
そして今は、降雪魔法で出した野菜や果物を売っている最中だ。
王都でお店を構えるには…あそこの、王城よりは低いけれど家よりは高い建物の集まりの中にある黄色い屋根の商業省で許可をもらう必要があるけれど、露天でお店を開く分には許可が必要ない。その場所はヌリズ領では門の外だったけれど、王都では門までが遠いためか露天であれば基本的に王都内のどこでやっても罰されることはない。と、ルカンは言っていた。
でも、ヌリズ領と同じで王都では、露天でモノを買った場合なにかあっても自己責任とされており、その分お客様の警戒度は高い。
そのためほかの商店よりも安く売るか、ほかの商店にはないものを売るしか金を稼ぐ方法はない。安くても品物が良いとか、愛想がいいとかほかにも気をつけるべき部分はたくさんあるけれど、大体はそんな方法で露店商の人達は金を得ている。
表に出ると、ジアが一人のお客様に接客しており、もう一人のお客様には誰もついていなかった。
「すみません!お待たせいたしました!本日はなにをお求めでしょうか?」
私は謝罪から入り、接客を開始する。
こんな風に露天商を始めると、子供の集まりなため警戒心が下がるのか、一日目でお客様が来てくれて、露天商三日目の私たちにも知っているお客様ができた。
そのうちの一人であるのが、この目の前にいるおばさまである。
この方は自分語りをするようなお客様ではないため、ご家族についてや暮らしについて私たちは何も知らないけれどこのように毎日買いにきてくださっている。
「あぁ。このロッキングを三つと、あっちにあるアオナリを一つくれるかい。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」
えっと、まずはロッキング…その後にアオナリ、っと。
ロッキングはこの緑色の葉っぱの野菜のこと。ハムや卵と合わせて炒めると美味しくて、茎や味が比較的癖のないもの(癖の有無は感じ方にかなり個人差あるみたいだから言い切っていいのかは微妙)。アオナリは青って付くけれど、青くはない。皮が黄色で中身が白くて、甘いもの。甘いから果物?って思えるけれど一応野菜らしい。
ロッキング三つにアオナリ一つを手に持ち、あのおばさまのもとへ戻る。
「お待たせいたしました。こちらでお間違いないでしょうか?」
確認に品を見せると頷いてくれた。
「ああ。合っているね。」
「ありがとうございます。では、ロッキング三つにアオナリ一つで、銅貨17枚…のところ、三つも購入してくださったため…銅貨15枚になります。」
「あぁ。」
銅貨15枚を握って、こちらへ差し出してくれた。
「ありがとうございます!では、こちら商品になります。」
私が商品を差し出すと黙々と買い物バッグに入れて、おばさまは去っていった。
「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております。」
そんなおばさまの背に感謝と礼をして、私は顔を上げた。
さっき裏で出してきたロッキングを少し補充しよう。
「さっきはありがとう、ロルーリお姉ちゃん。」
補充していると先程呼んだジアがお客様の接客が終わったのか、こちらへ寄ってきた。
「ううん、こちらこそ。呼んでくれてありがとう。」
そんな言葉を返していると、ジアが籠から箱にロッキングを移してくれている。
「ありがとう。ジア。」
「うん。さっき助けられたし、これでおあいこ。…にしてもロッキングが売れるね。」
先程のお客様が10個も買っていってくれて、一瞬空になったロッキングの箱を思い出したように話す。
「そうだね。ここらへんではそんなに出回らないのかも。」
たしかロッキングって寒めの地域で育つんだっけ?だからかなあ。
「おーい!」
そんなことを話していると右から声が聞こえてきた。
「あ、もう終わった?」
今日は少し溜まった洗濯をするために私、ジアの露店組とルカン、レーヤ、ツィーゼの洗濯組に分かれていた。
そして、すべての洗濯が終わったのだろうか、レーヤが声をかけにきた。
「うん!洗濯終わったから、店仕舞いして夕飯にしようって伝言に!」
「そっか、ありがとう。じゃあジア。出してすぐになっちゃったけど、もう一回籠に入れ替えて持って帰ろっか。」
「うん。俺は向こうのものから籠に入れてくる。」
そう言って、籠を持って店の反対側から余った品を籠に入れていってくれた。




