029 新たな作戦会議
洗濯を終えたあと、ちょうど起きたレーヤも連れて私たちは仕事をしに、農村に向かった。
仕事が終わったあと共有事項としてルカンは皆に言った。
「今日の分の仕事が終わったから、明日一日は仕事が休みで明後日から少しの間一日置きに休みと仕事になる。ひとまずお疲れ様。」
「うん!ルカンお兄ちゃんもお疲れ様!」
「ああ。帰りは約束通りお店で夕飯を買おうな。それからホノール。帰ったら魔法について確かめよう。」
ルカンは身体を向けてそう言ってきた。そうだ、なにができるのか確かめないと。
「そうだ!なにができるのか確かめないとなんだった!ごめんね、ジア。文字を教えるの、明日でもいい?」
「それは別にいいんだけど。魔法ってどういうこと?この前雪と雨って答え出たんじゃないの?」
「そのときはそうだったんだけど、できることが増えたかもしれなくてね。」
「そうなんだ!じゃあ、そっち優先だ!」
「うん、ありがとう。」
笑顔でジアはそう返してくれた。
「みんなは家の中に避難させたし、大丈夫だろう。さて、ホノール。昨日のように針を降らせることはできそうか?」
ご飯を購入し、家についてからルカンは言い出した。みんなが避難している理由は一つ。今の魔法はなにができるのかわからないからだ。危険なことが起こらないとは限らない。
「わかんない、とりあえずやってみる。」
針様よ、降ってきてください。
私は手を合わせて心のなかでそう唱えて祈った。
「ふむ、降っては来たが一本か...昨日のようにたくさん?速く?みたいなアレンジはできるのか?」
針様、私とルカンのいるところを避けて、速く、たくさん降ってきてください。
そう祈ると本当にその通りになった。
「ん?俺のところには降ってこない?なんでだ?」
心の中で祈っているからわからないルカン不思議そうに聞いてきた。
「あ、それは私が祈ったから、かな?」
「なるほど、ありがとう。ふむ...一回祈る態勢を取らず、心の中で唱えるだけでやってみないか?今までは祈って応えてくれていたけど、昨日、祈る態勢を取らなくても思い通りに降ってきたようだったし、祈らなくても成功するようになっている可能性があるような気がするんだが...」
「たしかに気になるね。なにを降らせてみる?」
ああ、たしかに。昨日祈る態勢を取る暇なんてなかったから心の中で思っただけだった。
せっかくなら昨日降らせたものと違うものを降らすことができるのかって一回に二個試せたほうが良いよね、と思った私はルカンにそう聞いた。
「あぁ、針がこれ以上あっても困るだけだもんな...あ、食料、パンとかどうなんだ?」
「パン...」
今まではどのような運搬方法でも比較的壊れないものだったけど、ふわふわなパンなんて大丈夫かな...
「パンなら食べ物は無理なのかわかるし、降ってきてくれれば俺らの夜ご飯が手に入るからいいかと思ったんだが。」
利点が多いもんね。べちゃんこで降ってくるのかも分かるし。
「たしかに...じゃあやってみるよ。」
ふわふわのパンがルカンのところにゆっくり一個だけ降ってきてほしい...
そう祈ると見ただけでも分かるほどふわふわなパンがルカンの手元に降りてきた。
「俺のところにパンが降りてきた...早さ的に降ってくるというより、降りてくるだが、パンもいけるのか...ホノール、一回かじってみていいか?」
潰さないように優しく持ちながらルカンが聞いてきた。
「え!?お腹壊したりしない?」
魔法の原理が分からないから、いつのものか、何も仕込まれていないかも分からない。そんなのを食べるのって大丈夫なのかな。
「俺一人がお腹壊すだけなら降ってくるものは安全じゃないってみんなにわかるし、食べてみる分にはいいんじゃないか?」
「...わかった。食べてみてほしい。でも!なんか違和感とか変に感じたら、すぐに食べるのを辞めてね?」
これでルカンが倒れたりするのは怖い...
「ああ。......味も食感もいいな。これは俺が今まで食べてきたパンと比較して、ランクが高い方に入る気がする。」
食べる手を止めないでルカンはそう言った。
「本当?私も食べてみてもいい?」
ルカンがそんなに美味しそうに食べるのは初めて見たから、私も味が気になってしまった。
「んー...一応夜ご飯まで待とう。俺のお腹にあたるなら、それまでには反応が出てくるはずだ。」
「そっか、わかった。」
たしかに、時間経たないと症状って出てこないもんね。
「ホノールのお腹の空き具合はどうだ?」
「今のところ大丈夫。いつも通りだね。前回はあれだけ使ってお腹が本当に少し減ったけど、今回は回数も注文している数も多いのにお腹が空腹になったりはしてないかな。」
一回の使用で空腹に耐えられないほどになったのが夢のようにお腹が空いてこない。
「そうか...じゃあ、もう少し魔法を使ってもらうことは可能か?二つのものを同時に降らすことができるのは、昨日剣とナイフを降らせてくれたからわかるけど、昨日も今も針はいつの間にか止んでいるし、少しその法則を解明したい。」
「あ、たしかに言われてみれば...いつの間にか止んでる...」
「大きさも自由自在なのかも気になるから...次は〜」
そのままルカンの言う通りに魔法を使っていった。
「お疲れ様、ホノール。魔法をたくさん使ってもらって悪かったな。」
いつの間にか側に立っていたルカンがそう言った。
「ううん、大丈夫。でもこれで少しはルカンたちの役に立てそうだね。この魔法でとりあえずなんでも降ってくることが分かったんだし。」
やっとこれでルカンの負担が減るよね。
「ホノールは元からいつも役に立ってくれていたけどな。でも、本当にすごい魔法だな。針とか降らしたものが消えないのが難点だが、ものを売ることを考えれば、消えない方がいいし...」
確かに仕入れ値がかからない魔法なら商売は利益が大きそうだけど、
「ものを売るのって、大変じゃないの?」
「そこまで大変ではない。街の中で商売をする場合は届け出を出さないといけないんだが、門の外であれば届け出を出す必要はないからな。代わりに、なんでも売っていいところだからこそ人からの警戒は強く、売るのは至難の業だが。」
「なるほど...なんらか警戒されないように頑張っていけば、それで金を得ることができるようになるんだ。」
商家の息子なだけあってさすがよく知っているなあ。
「そうだ。だがまあ、ホノールに頼りっぱなしなのも悪いし、働くという大切さが分かってほしいのもあるから農村での仕事は当面継続だな。」
「うん、それは賛成。私を頼ってくれるのは嬉しいけど、働いた対価に金をもらうことの大切さだってわかってほしいしね。」
「ああ、あとはなにを売るかを今後決めていかないとだな。」
「うん。どこをターゲットにするかどうかとかも。」
「ねーねー!ホノールお姉ちゃーん!ルカンお兄ちゃーん!もうそっち行ってもいいー?」
商売についてルカンと話し合っていたら家の中から見ているレーヤから声がかかった。
「ああ、いいぞ!気を付けてくるんだぞー!」
「「「はーい!」」」
ルカンの声にみんなが元気よく返事をして家の中から出てきた。
「ホノール。後で昨日の分と今日の分、降らせた針を回収しないとな。」
「そうだね。歩くのに危険だもんね。」
なんでかわからないけど魔法が育ってくれたから、やっと私もルカンたちの役に立つことができそうかな。
このスラムのグループの頭を取ってくれているルカン、ルカンがいないときにツィーゼやレーヤを見てくれているジア、みんなのことを見て臆せずに意見を出してくれるツィーゼ、いつでも場を明るくさせてくれるレーヤ。
なにもできなかった私は、この捨てられた原因である降雪魔法でやっと役に立てるかもしれない...!




