025 降雪魔法の覚醒
ん...?どうなってたっけ...?たしか、知らない男の人、青年ぐらいの人が来て、ルカンお兄ちゃんが対応してくれて...そしたらルカンお兄ちゃんが殴られてて、ついカッとなって飛び出しちゃって......そうだ、私、吹っ飛ばされたんだ!
あ!今どうなってるんだ!?ルカンお兄ちゃん!
「っが!」
腕をついてなんとか起き上がって見てみるとルカンお兄ちゃんが蹴り飛ばされたところだった。
「お前しつけえなあ...本当にぶっ殺してほしいわけ?」
「俺は、生きている、限り...みんなを守る。」
そう言ってふらふらと起き上がる。
「うるっせえなぁ!じゃあお望み通り殺してやるよ!」
そう言って青年は足を大きく振り上げたところで、私は正気に戻った。
あ、ルカンお兄ちゃん...!駄目だ、一方的にやられている...私も、私も役に立たないと、みんなばらばらになっちゃう!
そう思ってなんとか足を踏ん張って動く私を視界に入れたのか、ルカンお兄ちゃんが声を張った。
「駄目だ!ホノール!」
その声に青年は表情のない顔でこちらを見た。
「あ?あぁ、お前起きたのか。でも悪いな、今はこいつを殺さなきゃだから、殺した後に構ってやる。少し待ってろ。」
「ホノールっ!俺はいいから!逃げろ!」
ルカンお兄ちゃんはそう言うけど...私は、ルカンお兄ちゃんを見捨てて逃げるなんて...できない!逃げるなんて...
「やだ!!」
「え...?」
ルカンお兄ちゃんがぽかんとした顔でこちらを見てくる。でも、私はルカンお兄ちゃんを見捨てるなんてできない。
「ははっ、なに?ここで仲間割れ?まあ俺には関係ない。ほら、殺してやるから来いよ。」
「くっ...ホノール!はやっ...っぐ!」
「おらおらおら、仲間の前で殺されるのは楽しみか?...って、なんだつまんねえな。もう話さねえじゃねえか。っおら!向こうで寝てろ!」
ルカンお兄ちゃんがさっきのように飛ばされた。
あ、ルカンお兄ちゃんが...私がみんなを守らないと...
私の魔法、雪とか雨とかじゃなくて...どうせなら、剣とかナイフが降らせてくれれば役に立てるのに...!
「あ!?なんだこれ!?なんで急に剣とナイフが降ってきたんだ?俺に対する武器の供給か?じゃあまぁ、ありがたくもらうとするかね。」
そう願うと同時にどこからか剣とナイフが一本ずつ降ってきた。そしてその降ってきた剣を訝しげながら、青年は手に取った。
...え?剣とナイフが降ってきた?雨でも、雪でもなく?
でも、これじゃあ武器を渡してしまったのか。...あ!じゃあ、針をたくさん降らせれば...!
「チッ、いってえなあ!おい!これお前の仕業か?よく見たら、お前のところには降ってきてねえじゃねえか!」
そう願うとまたどこからか針が無数に降ってきた。
「わっ私はなにもしてない!あなたの仲間の裏切りなんじゃないんですか?」
本当だ、私のところにもルカンお兄ちゃんのところにも降ってきていない。でも、本当に私は何もしていない。降ってきてほしいと願いはしたけど...
「ははっ可能性はあるけどよ。こんな高級な針を降らせるほど、うちに金はねえんだよ!っつうか、本当に痛えなあ。ちくちくちくちく、鬱陶しいなあ!」
そう言って青年は身体に刺さっている針を抜いた。
そっか、これだけだと致命傷にはならないのか...もっと!早く降り注いで...!
「ッチ、これ程度で俺が怯むとでも思ってんのか?...やべ、身体の中に入りかねん速さになりやがった!...って、あ?」
なんとか面と向かって話していると後ろからルカンお兄ちゃんがさっき降ってきたナイフで青年の背中を刺していた。
「お前、背中ががら空きだぞ?」
「お前!まだ生きてやがったのか...!流石に...この俺でも...これは...」
そう言って青年は床に倒れ込んだ。
終わ、った...?
「...ふー...!ホノール!大丈夫か!?」
ルカンお兄ちゃんは一目散に私のところに駆けてきてくれた。
「う、うん、私は大丈夫...ルカンお兄ちゃんは?」
「俺も大丈夫だ。とりあえず、俺はこいつを外に捨ててくる。あの傷を受けて、攻撃してくることは流石にないだろうからな。」
そう言って青年の首根っこを掴んで持ち上げた。
「わかった、気をつけてね。」
「ああ。あと、帰ってきたらさっきの魔法について聞くからな。」
ルカンお兄ちゃんはそう言って怪しむような目を向けてきた。...当然のことだ。私にも分からないけど、願ったらどこからか剣にナイフ、針が降ってきたんだもん。
「あ、うん...」
なにをあとで聞かれるのか、そんな訳のわからない不気味な魔法を使えたから追い出されたりするのか、その恐怖に怯えながら、なんとか返事を絞り出した。
「別に怒っていないから大丈夫だぞ?」
ルカンお兄ちゃんは優しい顔に戻ってそう言った。
つまり...そんなに不気味だとは思われていないのかな?
「とりあえず遅い時間に悪いが、もう少し起きていてくれ。」
申し訳無さそうな顔をしてルカンお兄ちゃんは言ってきた。
いつもの寝る時間を過ぎていると思うのに全然眠気が来ないし、待っていられるだろう。
「うん、わかった。いってらっしゃい。」
そう言って青年の首根っこを掴んで引きずるルカンお兄ちゃんを見送った。
ルカンお兄ちゃんにまた迷惑かけちゃうのかな...やっと少し役に立てたと思ったのに...
でも、雨と雪以外にも降らせることができた、のかな?なんでかわからないけど...
とりあえず追い出されない、よね...?




