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024 ルカンのスラムのピンチ

「おい、お前。こんなところでなにしてんだ。」

 ドアを開けて早々、ルカンお兄ちゃんの低い声が放たれた。

 久しぶりのルカンお兄ちゃんの低い声にびっくりしたけど、お前らってことは人がいたのか。......ん?人?なんで?

「チッ、お前起きてたのかよ。」

 ルカンお兄ちゃんの声に応えて、青年ぐらいの声が聞こえてきた。

「ああ、起きていた。それでここになんの用だ?」

「いやー別に?お金盗んで、ガキらは奴隷商に売って、目障りなうるさい奴らを一掃しようとしただけだぞ?」

 なんてことないようにその青年の声の人は言った。

 ...奴隷商?

「...は?」

「おぉこわいこわい!んで、用は言ったからさ早くお金出して、この縄でほかの奴ら縛ってきてくれない?」

「はい、わかりました。なんて言うわけないだろ!金を出すのも、奴隷商に行くのも無理だから帰れ。」

 更に語気を強めてルカンお兄ちゃんはそう言った。

「いや、従ってもらうよ?お前らに拒否権はないの。」

「じゃあ力ずくで帰す。」

 壁越しにいる私でも感じるほど、空気が変わった。

「ははっ、いいよ、来いよ。たかがガキ一人にこの俺が負けるわけないだろ?」

「ふん、ほざいてろ。」


「...ふっ!」

 ルカンが拳を思い切り突き出すも、青年にはふわりと避けられてしまった。

「ははっ、それが本気?おっそ。」

「ふっ!やあ!...っがあ!うっ!」

 避けられたことに怯まず、殴ろうとするも相手の拳をモロに食らってしまった。

「はははっ強いのは口だけかよ。じゃあ、邪魔者はいなくなったとしてありがたく漁るとするかね。」

 そう言って青年はルカンを追い越そうとした。だが...

「っぐふっ、おい、待てよ。俺はまだ倒れていない。...っが!うっ...」

 ルカンは立ち上がるも、立ち上がっている最中に蹴りを入れられた。

「えー?これでまだ倒れてないっていうわけ?ははっ、ほらもっと鳴いとけば?」

 ルカンは青年の攻撃を受けても怯まず立とうとするも、立とうと足に力を入れている間に新たに攻撃を受けてしまい立つことができない。

 ルカンが一方的に青年の攻撃を受けてる状況だった。

 ...それは状況を見ずに音だけ聞いているホノールにも聞こえていたようで。


 ルカンお兄ちゃんが、押されている...?え、嘘だ...でも、ルカンお兄ちゃんの苦しそうな声ばかり聞こえる...もう、もう、

「止めてっ!!」

 私はルカンお兄ちゃんの約束を破って、つい飛び出してしまった。

「えー?誰お前?あー、お前らの新しい仲間?」

 青年の嫌な笑みが私に向けられた。

 聞こえた声から想像するよりも青年は若そうな見た目をしていた。

「ホノール、隠れて、出てくる、なって、おれ、言った、よな。なんで、約束、を、破った。」

 やっぱりルカンお兄ちゃんには止められるし、怒られる。でも、

「ごめん!ルカンお兄ちゃん!でも、一方的にやられてるところを自分だけ影の安全なところで聞いてるなんて...できない!」

 私はそう言い切った。

「ホノール!一回みんなを連れて外に出ろ!外なら少ないが人がいっっがっ!」

 私にそう言おうとしたところで蹴られてしまった。

「お前うるせえなあ。敗北者は黙ってろよ。さて、お前は何してくれるわけ?」

 ルカンお兄ちゃんを蹴ったあと、青年は嫌な目を向けて言ってきた。

「なに...?」

 何ってなに...?

「ああ、なにもない?...じゃあ、勝ったら身体をもらうか。楽しんだ後に奴隷商に引き渡せばいいよな。」

「お前っ!ホノールに、みんなに、指一本でも触れてみろ!ぶっ殺すぞ!」

 いつの間にか起き上がっていたルカンお兄ちゃんがこっちに来ようと足を引きずりながら、声を張った。

「お前うぜえな、まだ喋れんのかよ。っおらあ!一回向こうで黙ってろよ。」

 そんなルカンお兄ちゃんに青年は飛び蹴りを食らわして、ルカンお兄ちゃんは向かいの家の壁まで吹き飛んだ。

「っルカンお兄ちゃん!」

 ルカンお兄ちゃんが、飛ばされてしまった...!

「じゃあ、気絶だけさせて中に行くか。...あ?なにお前、戦う気?戦ったことなさそうなその構えで?」

 拳を構えた私を上から見下ろして言ってきた。

「...。」

 ルカンお兄ちゃんが、やられてしまったのなら私がみんなを守らないと...!

「ははっ、じゃあお望み通りあいつの隣に並べていってやるか。おらとりあえず、俺に一発入れてみろよ。」

 青年は挑発するようにそう言ってきた。

 じゃあ、お言葉に甘えて、

「えいっ!」

 私のすべての力を込めて、青年に拳を出した。

「...え?それで俺と戦おうとしたの?はははははっ!くっそ馬鹿じゃん。んーっと、ほれっ!」

「うっ!」

 そう言って青年は拳を私のお腹にを入れた。

 痛い!青年の拳が綺麗にお腹に入ってしまった...!

「ほらほらほら、ただ殴られるだけでいいの?」

「うっ!っがは!うっ...」

 青年に一方的に殴られている。...レクロ家で御母様やお姉様がやってきた鞭打ちよりも痛い。女と男の差か、家族だから容赦してくれていたのか、鞭と拳だからか、わからないけれど。

 ...感じたことのない痛みに意識が遠のいていく。


「はは、綺麗に飛んでったねぇ。さて、...ん?お前まだ動けたの?」

 その声に青年の見ている方向を見るとルカンはふらふらと立ち上がっていた。

「ホノールに手ぇ出しやがって...お前はもう絶対に許さなっが!」

 言葉を言い切る前に青年の蹴りでルカンの身体は勢いよく上に上がった。

「お前そろそろ本当にうるさい。俺に敵わないんだからさ、黙って寝てろよ。...それともお前、殺されてえのか?」

「......。」

 ルカンからの返事はない。

「ははっだんまりかよ。でも流石に商品を殺すのは勿体ないし、すり傷だけで済ませてやるか。優しい俺に感謝しろよ?」

「...何、言ってるんだ。もう、すり傷どころじゃ、ないだろ。」

 絞り出すように小さな声でにルカンは反論した。

「ははっそれもそうか!じゃあ、かすり傷?まあいい、高そうな商品であるお前は殺さねえよ。中にいるガキはしらんが、お前はなぶり倒してやるよ。」

 そう言って更に口角を上げて、青年はルカンやホノールに背を向けようとした。

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