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026 ルカンお兄ちゃんからの説教

「お待たせ、ホノール。」

 血を流してきたのか、少し水に濡れたルカンお兄ちゃんが帰ってきた。

「おかえりなさい、ルカンお兄ちゃん。」

「ああ、ただいま。...じゃあ、話してくれるか?あの剣やナイフ、針を降らせたのはなんだったんだ?」

「私もよく分かってなくて、多分、っていう仮説になっちゃうんだけど...」

 前置きをして、私は話しだした。

「多分、降雪魔法、だと思う。雪や雨なんかじゃなくて、剣とかナイフとか、針とか降ってきてほしいって祈ったら降ってきたの。」

 そう言う私に不思議そうにルカンお兄ちゃんが聞いてきた。

「また魔法が進化したってことか?」

「うん、多分。前に試したときはいくら祈っても雨や雪しか降ってこなかったから、進化したって考えるとこが妥当かなって思ってる。」

「そうか。ほかに気づいたことはあったか?」

「内容だけじゃなくて、その速さとかも願いにできた、ってことぐらいかな。」

 早く、たくさん、って注文をつけたらその通りに降ってきたもんね。

「ふむ...わかった。じゃあ明日の朝、その魔法がどんな内容に進化したか確かめようか。」

「わかった、じゃあもう寝る?」

「いや。」

 ルカンお兄ちゃんは否定した。...なにかあるっけ?

「まだなにかある?」

「ああ、説教だ。」

「え!?」

 説教!?追い出されないことにホッとしてたのに説教!?

「流石に明日、朝から説教されるのは嫌だろう?俺も寝起きから説教するのは嫌だし。だから今からだ。」

 ジアに怒ってるの見たことあるけど、ルカンお兄ちゃんの説教は長いんだよなあ...どちらにしろ嫌だなあ...

「まず、」

「ま、待って!ルカンお兄ちゃん!」

「なんだ?なにかあったか?」

「その前に手当てしない?ルカンお兄ちゃん、すごく怪我したでしょ?」

「...それもそうだな。先にホノールの手当てするか。家に少し包帯があったはずだ、救急箱を持ってくるからここで待ってろ。」

「いやいや、私が取ってくるよ!ルカンお兄ちゃんの方がたくさん殴られてたし、動くの辛いでしょ?だから、私が持ってくるよ。」

「...わかった。じゃあ頼もうかな。」

「うん!すぐ戻ってくるね!」

「急がなくていい!ゆっくりでいいからな。」

「はーい。」

 ルカンお兄ちゃん、とどめを刺したあとから普通に動いていたから気にならなかったけど、あんなに気絶するぐらい殴られて、飛ばされたんだもん。涼しい顔して座っているけど、辛いはずだよね。早く戻ってあげないと。


「おまたせ!」

「別に走らなくていいって言ったのに...まあ、ありがとな。」

 そう微笑んで私たちはお互いに手当てを始めた。



「さて、とりあえず二人とも手当し終わったんだし、説教に戻るか。」

「ルカンお兄ちゃん!まだ身体辛いでしょ?今日はもう寝ない?」

 説教は嫌だし、どうせなら忘れるぐらいまで先延ばしにすれば...!

「寝てもいいが、説教はなくならないぞ?」

「...。」

 まるで私の考えを見透かしているかのようにそう言ってきた。...ぐぅ。

「じゃあ、いいな。まず、なんで俺がいいって言うまで出てくるなっていう約束を破った?」

 空気が変わった...冷たい。

「だ、だって、ルカンお兄ちゃん、押されていたっぽかったから...」

「俺が負けて殺されたって、俺は置いてみんなで逃げるべきだろ。一人の被害と、全員の被害ではどっちのほうが少ないか言うまでもないよな?」

「で、でも、ルカンお兄ちゃんは大切な仲間で家族だし...」

「仲間だと思ってくれているのは嬉しいが、俺を置いてホノールは逃げたほうが被害が少なかったはずだ。」

 被害が少ないはずだ〜とかそういうのは理解はできても納得なんてできない!全員大事な家族だもん!

「一人怪我すれば、それは全員にとっての損失だよ。被害の大きさは関係ないよ。それに、今大丈夫なんだから、」

「今大丈夫なのは結果論でしかない!ホノールの魔法が進化してくれていたから今俺等が一緒にいられるんだ。もし、そのままホノールが、みんなが奴隷商に売られていたら...なんて想像もしたくない...」

 私の言葉を遮って声を張って反論して、その後は声がどんどん小さくなってしまった。

「ルカンお兄ちゃん...」

 いつも大人びているから忘れていたけど、ルカンお兄ちゃんは私より一年長く生きているだけで実は私やジアと同じ子供なんだ。

 家族を失うのは私と同じで怖いよね...

「ごめんね、ルカンおに...ルカン。でも、私は今後似たような状況になっても、同じように誰も見捨てない行動をすると思う、言い切ることができるよ。...けど、ルカンは怖かったんだね。ごめんね、いつもたくさん背負わせて。」

 今、ルカンお兄ちゃんって呼ぶのはなにか違う気がした。兄であるのは慕われる結果だけど、それと同時に弟や妹のことを背負わなければいけないはずだ。...生憎本当のお姉様やお兄様はそんな人じゃなかったから、想像に過ぎないわけだけど。

 背負う重みは少ししかわからないかもしれないけれど、家族を失う恐怖は分かる。私もここでルカンお兄ちゃんやジア、ツィーゼ、レーヤという家族ができて、みんなを失う恐怖は身を持って実感した。

「...別に背負うのはいいんだ、みんなを拾った俺の責任だ。」

「そんなことないよ。一人に重荷を背負わすのは違うんだ。ルカン、いつも大変だなとは思っていたのに...仲間なのに、一緒に背負ってあげられなくてごめんね。」

「ホノール......ぐす」

 ルカンお兄ちゃ...ルカンは、泣き出してしまった。...こういうのって顔を見ないで欲しかったりするのかな?一応背を向けておこう。

「大丈夫だよ。誰も見ていないから。」

「うっ、うわああぁぁぁん。」

 声を上げて泣くルカンは初めて見た。

 せめて、一人で背負わなくていいんだよって気持ちを伝えたくて、背中を合わせて、手を重ねていたら、私も涙が出てきた。

 涙が出てくるなんて、いつぶりだろう...

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