022 初仕事
あれから、少し試して分かったことは雨と雪を降らせることはできるということ、のみ。
私の願いは単なる願いのままで、ほかのものを降らせることはできなかった。しかも、自然に降ってきた雪や雨は、魔法で止めることもできない、本当になんの役にも立たない魔法だった。
せっかく役に立てるかもって期待したのに...
「...ル!ホノール!大丈夫か?突然ぼうっとして。」
そうだ、みんなで歩いているところだった。危ない危ない。
「あ!ううん!大丈夫!なんでもないよ!」
「そうか?やっぱり急に魔法を使いすぎたのか...?少し戻って休んでもいいんだぞ?」
「ううん!大丈夫!行こう!」
「本当か?それならいいんだが...じゃあ行くか。」
「うん!」
ルカンお兄ちゃんがいつの間にか農村の人に頼み込んでいてくれてて、私たちはそのルカンお兄ちゃんが「今から働くぞ!ついてこい!」っていう声に従って、今はその農家のところに向かっているところ。
こういう行動でも、本当にルカンお兄ちゃんの負担が大きいよなあって改めて思った。
みんなで分担して作業をしているときに、ふとジアが言い出した。
「なーなールカンお兄ちゃん、なんで俺ら今働いてんの?急に働くぞって連れてこられたけどさ。」
「あぁ、話していなかったか?」
「うん、聞いてない。」
たしかに、聞いてない。なんでだろう。頼み込んだってことは聞いたけど。
「今は手を動かしているだけだし、少しぐらいなら話してもいいか。...みんなはそのうち大きくなるだろう?そうすると、大きくなった分たくさんのご飯が必要になるんだ。それに俺等はずっとスラムのガキでいるつもりはない。だからこそ、大きくなったときの仕事先とかは早くに見つけておいて損はないだろう?将来的に考えてってやつだ。みんなのいい経験にもなるしな。」
なるほど、将来のため...本当にたくさん考えているなあ、ルカンお兄ちゃん。...本当にそれだけ負担が多そうだけど。
「んーよくわからないけど、俺らの未来を考えてくれたんだ!ありがとうな、ルカンお兄ちゃん!」
「ルカンお兄ちゃん!こっちは袋に入れ終わったよ!そっち手伝おうか?」
袋詰めをしているツィーゼの方から声がかかった。ちなみに、袋詰めはレーヤとツィーゼがやっている。
「いや、大丈夫だ。俺等もすぐに終わる。ツィーゼとレーヤで先に休んでいてくれ。」
「わかった!じゃあ先に休んでよっ!レーヤ。」
「うん!じゃあお先にね!ルカンお兄ちゃんたち!」
「ああ。ジアはつまらなくないか?俺に任せて、ジアも先に休んでいてくれてもいいぞ?」
「ううん!俺の分はきちんとやってから休む!これの代わりにお金を受け取るんだもん、きちんと働かないと。」
普通ジアぐらいの子ってわがまま言いたい年頃だよね。そう考えると、本当にジアはいい子だ。責任感もあるし。
「そうか、本当にいい子だなジアは。ホノールは...って、ホノールももう終わりなのか。」
ルカンお兄ちゃんも同じことを思っていたみたい。でも、本当にいい子なんだよなあ...
「うん。...これで終わり!ルカンお兄ちゃん一人でたくさんやってくれてるんだし、少しもらおうか?」
「いや大丈夫だ。できれば外で休んでいるツィーゼとレーヤを見ていてくれないか?比較的安全な農村とはいえ、少し心配だし。」
「わかった!じゃあ、先に休憩に入って、待ってるね。ジア、ルカンお兄ちゃん、頑張ってね!」
「ああ。」
「うん!すぐに行くから待ってろよー!」
「あはは、うん。」
よし、ツィーゼたちに合流しよう。
「ツィーゼ、レーヤ。」
二人の休んでいる後ろ姿に声をかけた。
「あ!ホノールお姉ちゃん!ホノールお姉ちゃんも終わったの?」
満面の笑みのレーヤが振り向いた。
「うん、だから一足先に休憩に合流。」
そう言って私も椅子代わりに使っていいって教えてもらった干し草に腰掛けた。
「そっか!お疲れ様。」
「二人も、お疲れ様。」
「お疲れ様、ホノールお姉ちゃん。」
「うん。二人は何話してたの?」
「普通にさっきの作業の話。意外と楽しかったね!って。」
「そっか、楽しかったならよかった。二人はルヴェーを袋に入れてくれていたんだっけ?」
「うん!そう!その後袋を縛っていたのは、ルカンお兄ちゃんたちでしょ?だから、難しい作業と違って計って入れるだけだからさ、すごく楽だし、楽しかったんだ!」
「そっか。でも、私も楽しかったな。がっちゃんがっちゃんやるの、音も良くて、やったっていう快感もあって。」
「ルカンお兄ちゃん本当によく見ているよね、なんだっけ...適材適所?だっけ?」
「うん、そう。適材適所、その人に適した役割を授けること、みたいなのだから合ってるよ。流石だね、ツィーゼ。」
はじめのときに教えただけなのに、まだ覚えているなんて。すごいなあ、ツィーゼ...
「でも本当にすごいよねえ...僕達のことをよく見てくれてて、さっき話してたこれを初めた理由も僕達の未来のためだし。」
「いい人だよね、ルカンお兄ちゃん。」
でも本当にすごいよなあ、ルカンお兄ちゃん。なんで商家が捨てたのかわからない程に、何でもできる。適材適所に人員を割くこともできて、頭もいい。
「お前ら...その会話やめろよ...」
ルカンお兄ちゃんの褒め話をしていたら、後ろから声がした。
「あ!おかえり!ルカンお兄ちゃん!お疲れ様!」
「ああ、みんなもお疲れ様。でも、その会話はやめようか。」
ルカンお兄ちゃんの顔がまだ少し赤い。...照れているのかな。
「え?なんで?事実だよ?」
そうそう!事実事実!事実だもん。
「ルカンお兄ちゃん、やめろって言ってるけど聞いてるときすごく顔にやけてたんだぞ?」
「え!?そうなの!?ジア!」
「うん、すんごいにやにやしてた。けど、途中から真っ赤になって止めたんだよ。」
「ルカンお兄ちゃんかっこいいよ!」
「ルカンお兄ちゃんありがとう!」
「ルカンお兄ちゃんさすがあ!」
悪ノリみたいにみんなでルカンお兄ちゃんを褒めていくと、どんどんルカンお兄ちゃんの顔が赤くなっていく。
「...っ、お前らもうやめ!ゔゔんっ、どうだった?初の仕事は楽しかったか?」
「あー話逸らしたぁ!でも楽しかったよ!みんなでそう話してたの。」
「そうか、楽しかったならよかった。」
ルカンお兄ちゃんは本当に私たちみんなを見てくれている。私たちが飽きないように、場所ややり方を提案してくれたり、やることが多くて時間がないはずなのに、少しの時間も私たちのために動いてくれてて。
なんで一個差の私はなにもできないんだろう...なんでこんなに足手まといなんだろう...




