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021 再び魔法の練習

 いつもの食後の雑談のとき、ルカンお兄ちゃんはふと思い出したように言った。

「そういえばホノール、自分の使える魔法はわかっているんだよな?練習したりはしていないのか?」

「うん。一回どんなものか気になって使ってみたことはあるんだけど、消費する魔力が多すぎるのかすごくお腹が空いちゃって...そのときも食料は貴重だったのに、たくさん食べちゃって寝ちゃって。それからはやってないかな。」

「俺らの魔法は普段遣いできるものじゃないけど、練習してどのくらいの魔力が必要なのか把握している。ホノールも最近は食料が潤沢だし、やってみたらどうだ?」

 そう言って聞いてきてくれた。でも...

「でも、本当にたくさん食べて、寝落ちしちゃうと思うよ?」

「大丈夫だよ!ホノールお姉ちゃん!僕らも初めはそうだったからさ!その度にルカンお兄ちゃんがたくさんご飯持ってきてくれてたんだ!」

 レーヤが隣から明るい声でそう言う。けど、多分レーヤのときよりも身体が大きい分、本当にたくさん時間も食料も必要になると思うけど...

「...んー、でも...」

「大丈夫だ、ホノール。俺を信じろ。」

 ルカンお兄ちゃんが目を真っ直ぐ向けてそう言ってきた。一番負担が大きくなっちゃうルカンお兄ちゃんが、信じろって言ってくれるなら...

「...わかった、じゃあ明日の夜ご飯の後にやってみる。」

 私はみんなの言葉に頷いた。迷惑をかけても、家族だから...いいん、だよね...?

「別に今でも大丈夫じゃないか?降雪魔法、なんだろ?食料の予備はあるし、今は雪が降っていないし、状況は最高じゃないか?どうだ?急かすようで悪いが、使えるようになるんだったら早い方がいいだろう?」

「そうだよ、ホノールお姉ちゃん!私もホノールお姉ちゃんの魔法見てみたいし、今やってみたら?」

 ツィーゼまでそう言ってくれるなら...

「...わかった...じゃあ、お言葉に甘えよう、かな。」

「ああ。じゃあみんなはすぐに外に出る準備しようか。」

「「「うん!」」」

 そう言ってみんなで二階に上がって行った。

 ...みんなに迷惑をかけるのが怖いけど...ここまで言ってくれているんだ、頑張ろう!そう思って私は自分の頬を叩いて、みんなに少し遅れて階段を上った。



「雪様、降ってください、お願いします。」

 あれ?

「わー!ホノールお姉ちゃんの言ったあとすぐに降ってきた!すげー!」

「すごく静かに綺麗に降ってるね!ホノールお姉ちゃんの魔法!」

「あれ?」

 本当に一回の祈りで静かに綺麗に雪が降ってきた。横になびいてもいない、真っ白い雪だ。

 前回も白い雪が静かに降ってきたけど、一回の祈りじゃあ無理だった。...なんで?

「お腹の空きはどうだ?これぐらいでいいか?」

「えっと、いや、お腹が空いてなくて...なんで、だろう。もしかして自然に降ってきた?」

 それなら一回の祈りで降ってきたことに合点がいくよね。

「いや、やる前に空を見たが、降ってくる気配はなかっただろ。まあ天気は急変するものではあるが、流石に急がすぎる、だから、ホノールの魔法だろうな。」

「え、でも、前回やったときはたくさんたくさん祈って、やっと強く降ったんだよ?」

「じゃあ、ホノールの魔力が増えたんじゃないか?祈りはわからないけど、交換に出される魔力が多いから、それに応えたみないな。」

「どうなんだろう...」

 たしかに...それならなくはない、のかな?でも一回魔法を使っただけで変わるものなのかな、魔法って。魔法自体身近だけど未知なものだし...

「そういえば内容は不変なのか?変わる魔法もある、みたいに聞いたことあるけど...」

 んー、雪魔法がそれになるのかはわからない...でも、やってみる価値はある、よね。多分。

「祈ってみる?」

「ああ、ありじゃないか。んー、例えば雪に似ているものでいうなら...」

「雨、とか?...雪様は一度止んでください、雨様よ、降ってください。」

 雪が止んで、しんしんと静かに少しの雨が降ってきた。

「おっ!雨も降ってくるのか。ホノールの魔法は希少性の高い、変わる魔法なんだな。」

「なんだね...すごくびっくりだよ...」

 まさか、降雪魔法なのに雨まで降ってくるなんて...内容が変わったから、ってことなのかな。

「あ、お腹はどうだ?二回も使っちゃったけど。」

「全然空いてない...まだ夜ご飯食べ終わったばかり、っていうお腹。」

 本当になんでだろう...お腹が空いてこなくて、雪以外に雨も降らすことができる、なんて。

「ホノールお姉ちゃーん!この雨もホノールお姉ちゃんの魔法?」

 少し離れたところからレーヤが声をかけてきた。

「うん、多分。」

「すごいね!ホノールお姉ちゃん!雨も降らせることができるんだ!」

「うん、みたいだね...」

 自分に実感がなさすぎて、すごいって言われてもよくわからない...

「あ!ホノールお姉ちゃん、お腹空いた?ルカンお兄ちゃん持ってるの食べる?」

「ううん、それが空いてないの。」

「そうなんだ!それはよかったね!空腹って辛いもんね。」

 少し薄い笑みを浮かべて、レーヤがそう言った。

 口減らしのために捨てられて、スラムの子どもとして苦労した人生をしてきたからこそ、分かるんだろうなあ。空腹の辛みを。

「あ、止ませることはできるのか?できれば止んでから寝たいよな...」

「あ、そうだよね。うん、やってみる...雨よ、止んでください。」

 そう祈ると静かに降っていた雨は静かに止んだ。

「...すごいな...止ませることもできるのか...意外とできることは多そうだな。まあだが、もういい時間だし魔法を試すのはこの辺にして、寝るか。ほかのことは明日やってみよう。」

「「「うん!ルカンお兄ちゃん!」」」

「おやすみ、ジア、ツィーゼ、レーヤ。」

「「「おやすみなさーい!」」」

 そう言って三人は家の中に駆けていった。

「大丈夫か?ホノールは。」

 ふとこちらに向いて、ルカンお兄ちゃんは聞いてきた。

「うん、前と変わっててびっくりしただけ...」

「まあ一年も経っているんだし、変化はしたんだろうな。もう寝られそうか?」

 魔法を使って、緊張からドキドキしていたのを見抜いていたのかな。上手に隠せていたと思ったのに。

「うん、大丈夫。ルカンお兄ちゃんは?」

「俺はもう少し起きてるけど、気にせず寝てくれていいぞ。」

 前は寝てくれたのに、今日は寝てくれないのか...でも、ルカンお兄ちゃんもなにかやることがあるのかもしれないもんね。

「...わかった、じゃあルカンお兄ちゃんも早く寝てね。」

「ああ、じゃあおやすみ、ホノール。」

「おやすみなさい、ルカンお兄ちゃん。」

 ルカンお兄ちゃんに私も挨拶をして分かれた。


 なんで魔法を簡単に使えたのか、なんでお腹が全然空かないのか、さっぱりわからない、けど...ほかにもなにかできるといいな...

 そうしたら、私もルカンお兄ちゃんやジアたちの役に立てるから。

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