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020 二人話

「じゃあ、おやすみな。ゆっくり寝ろよ。」

「うん、ルカンお兄ちゃん...おやす...み...」

 語尾に消えそうな言葉を吐いて、最後にジアが寝た。レーヤとツィーゼはもう寝たあとだ。

「ああ。...さて、ホノール。話しておきたいことってなんだ?」

 聞こえていないだろうジアに言葉を返してルカンお兄ちゃんは私に身体を向けた。

 でも、ここだともし三人が起きたときに聞こえちゃうよね...。

「あ、えっと...下で話してもいい?」

 家は二階建てで二階でみんな寝ている。食事をする一階で話したほうがいいよね。

「ああ、わかった。降りるか。」

 一階で話したいという私の提案にルカンお兄ちゃんが頷いてくれたので一緒に一階に降りることになった。



 向かいの椅子に座ってルカンお兄ちゃんは聞き始めた。

「それで、話したいことってどうした?」

「ルカンお兄ちゃんが、最近私のことを信用してくれているように感じて...だから、私もルカンお兄ちゃんのことを信じようって思って、過去を話そうと思ったんだ。」

 ...最近やっと優しい目を向けてくれるようになったのに、話したことでまた笑顔が消えてしまうかもしれない。なんだったらそれよりも恐ろしく冷たい目を向けられるかもしれないと思うと...目を見ることができない。

 でも、信用には信用で返したい。たとえ自己満足でしかなくても。

「そうか...まあ、あれがすべてなわけないよな。」

「それで、ね。私の過去を聞いて、捨てたくなったら、追い出したくなったら、追い出してくれてもいい。けど、追い出さないなら、態度は変えないでほしい。要望が多くてごめんね。」

 追い出されるのは辛いけれど、貴族を好ましく思う人は少ない。ましてやスラムの子供たちを支援しないような家の子供なんて...追い出されることも覚悟しないとだよね。

 それに貴族の出だけど、もう貴族ではないし、あの頃から受けた対応も貴族じゃない。でも一番は、やっとみんなと仲良くなれたんだ。令嬢用に態度を変えないでほしい。...なんてただの願望で要望だけど。

「いや、俺はホノールを追い出さないし、態度も変えない。もう家族だからな。でも、そこまで言いにくいなら、無理に話す必要はないぞ?」

 ルカンお兄ちゃんは優しい。でも、それに甘えるのは駄目だ。信用には信用で返したい。

 ...ルカンお兄ちゃんの考えは変わってしまうかもしれないけど、今はそう言ってくれたんだ。...目を見て話そう。

 そう思って私は顔を上げて話しだした。

「ううん、大丈夫......。私はね、貴族の出なんだ。ここの領地の、ヌリズ辺境伯家の三女なんだ。でも、お兄様やお姉様と違って、私には優れた魔力も希少で使える魔法を持っていなくて、家から追い出された。元々は、いい暮らしをしていたんだ。けど、魔力が低いことがわかって、使用人と同じようなことをやりつつ、鞭打ちなどにあってた。けど、魔法が一つで......降雪魔法なことが分かって、捨てられた。その後は、助けてくれるって言った使用人の優しい言葉を拒否して、ここから一日ぐらい離れた町で過ごしていた。はじめは、有り金や使用人のみんながくれたご飯で比較的いい暮らしができていたんだけど、途中からそうもいかなくなって、ゴミ箱を漁って、ご飯を探してた。けど、ある日、ゴミ箱を漁っているのがバレて追いかけられて、逃げてきた。ってここは話した通りか。それで、暮らす場所がないから、スラムに入れてもらえないかっていう甘い考えを持って、ここにきた、んだ。」

「...。」

 話を聞いたルカンお兄ちゃんは言葉を発さなかった。...やっぱり....。

「あ!もちろん!気が変わったから、出てけって言うならすぐに従うよ!少しであれば服を置いていけるし!」

 やっぱり追い出されちゃうのか...って悲しい、泣いてしまいそうな感情を隠して、できるだけ声を上げて、言葉を放った。

 女の子のものしかないけれど、どっちでも着れそうな服はあるし、恩があるからなにもなしに去るのは申し訳ない。けど、服なら自分の分があればいいから、少しぐらいであれば置いていける。

 私は自分の言いたいことを言えたから、いつまでに出ていけって言われるかルカンお兄ちゃんの言葉を待った。

「ん?いや、そんなことはしなくていいし、話聞く前にも言った通り、追い出さないよ。」

 当たり前のようにルカンお兄ちゃんはそう言った。

「え?でも、黙って怒りを堪えてたりしてたんじゃ...?」

「ああ、ごめん、納得してた。知識があるのも、言葉遣いが丁寧なのも、それが故なのかと。自警団から逃げていたのも、見つからないため?」

「うん。私が生きていても、構うとは思えないけれど、万が一にも目をつけられたら、ルカンお兄ちゃんたちに危険が及んじゃうかもしれないから。」

「そうか...それは気を使わせたな。でも、俺らは大丈夫だ。別にここにこだわっているわけではないしな。ホノール、今までよく頑張ったな。」

 そう言ってルカンお兄ちゃんは私の頭を撫でて微笑んだ。

 私はそのルカンお兄ちゃんの言葉に視界がぼやけてしまった。

「いやあ、意外と重い話だったな。...じゃあ、俺も過去を話そうか。せっかく勇気を出して話してくれたんだし、勇気には勇気を返すか。」

「え?いいの?」

 ルカンお兄ちゃんの過去はジアたちも知らないような口ぶりだったのに、私になんて話していいのかな。

「ああ、いいぞ、と言っても、別に特別なことはない。俺は商人の家計に生まれてな、商売が上手じゃなかったんだ。そこからはレーヤと似ていてな。役に立たないガキは、ただ家計を圧迫する使えないお荷物なんだ。それでお荷物は捨てられた。俺の出身は隣の隣の領でな、どこに行こうかって歩いていたらツィーゼを隣の領で見つけて、流石にやばい、可愛像だって思って、拾って、ここに行き着いた。ここでツィーゼと暮らしていたら、ジアとレーヤが仲間に入れてくれ!って、来てな。別に拒む理由もないし、ツィーゼが一人寂しそうにしていたからもあって、二人を仲間に受け入れた。ちなみに、この家は今は誰も持ち主がいないから、勝手に住まわせてもらっている。多分昔は人が住んでいたんだけど、騒音トラブルやら物流の問題で去って行ったりしたんだろう。」

 ルカンお兄ちゃんはなんてことないように、過去を話してくれた。全然軽い内容ではなかったのに。

 それに、この家はどうしたのかまで教えてくれるとは思わなかった。それだけ信用してくれているってことなのかな。

「そうなんだ...それできちんとしていたんだ。」

「きちんとしていた?」

「うん。一般庶民の子供よりも、大人の対応も頭も良い。商人の家に生まれたからだったんだ、って。」

 警戒とかもきちんとしていたし、自分の中ですごく合点がいった。

「まあ、商家の出ってことがでかいだろうな。うまくいけば家に入る金が増えるからっていう魂胆だろうけど、幼い頃にそれ相応の知識はつけさせられた。そこで多くの大人と関わったから、今も大人と話すのも怖くはないし。」

「そっか。すごいね、ルカンお兄ちゃんは。」

 ...貴族の出なくせに急に言葉を聞かれると言い淀んでしまう自分とは大間違いだ。

「いや、ホノールもすごいぞ。貴族がゴミ箱を漁るなんて、簡単にはできない。普通の人でも難しいんだからな。」

「えぇ?それ、褒められてる?」

 私のは生きるのに仕方ないし、元々貴族みたいな暮らしをしていなかったからそういう抵抗感がなかったってだけだしなあ。

「褒めてる褒めてる。...じゃあ話したいことはそれだけか?」

「うん。それだけ。」

「じゃあ、寝るか。」

 ルカンお兄ちゃんはそう言って立ち上がった。私も倣うように立って椅子をしまう。

「うん。ルカンお兄ちゃんも寝る?」

「...んー...わかったわかった、寝る寝る。」

 まさか寝ない気か..._?ってルカンお兄ちゃんのことをガン見していたら、頷いてくれた。よかった。

「あ、くれぐれも今日話したことはあいつらには内緒な。ホノールの話も、俺の話も。」

 ルカンお兄ちゃんは人差し指を立てて口元に当てた。

「うん、もちろん!...二人だけの秘密だねえ...家族っぽい。」

「まあ家族だからな。」

 ルカンお兄ちゃんはそう言って笑って先に立ち去った。その一言も、すごく嬉しいんだって気付いてないみたい。

 ルカンお兄ちゃんの家族だからなって言葉、ルカンお兄ちゃんはなんてことないように話すけど、私はそれに救われているんだよ。


 ...ルカンお兄ちゃん、家のことを知っても追い出さないでくれてありがとう。

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