018 お兄ちゃんの帰宅
「え!?それでそれで!?」
「お前ら...話していろ、とは言ったが随分と仲が良くなったんだな。」
言葉を教えていたら頭上から声がかかった。あのとき出迎えてくれて、食料を取りに行くって言ったお兄さんだ。
「あ!ルカンお兄ちゃん!おかえりなさい!」
レーヤが眩しい笑顔をお兄さんに向けた。
「ああ、ただいま。いい子にしてたか?」
お兄さんは慣れた手つきでレーヤの頭を撫でた。
「うん!お兄ちゃんは大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だったぞ。ほら、今日の晩飯。」
「「「わあい!ありがとう!ルカンお兄ちゃん!!」」」
みんながお兄さんの元に駆け寄った。
「おう。それで、こいつはどうだ?」
笑顔を落として、私に鋭い視線を向けながらみんなに聞いた。
「物知りで優しいホノールお姉ちゃんだよ!」
「物知り?」
お兄さんは眉を下げて問いた。
でもたしかに、こいつは何だ、物知りだ、なんてわけがわからないよね。言葉を教えたことで物知り判定されたのかな。
「うん!たくさん私たちの知らないことを知っているの!」
「...例えば?」
「ゴミ箱に入っている捨てるご飯のことは廃棄食品って言うんだって!」
「...そうか。」
お兄さんはその言葉を聞いて、目を伏せてなにかを考え出した。...あ!挨拶してない!挨拶しないと!
「おかえりなさいませ。」
なんて呼ぼう...お兄さんだと兄ではないって言われたし...この子たちが呼んでいるのを聞いた限りルカン、って言うんだよね。じゃあ...
「...ルカン様?」
「ルカン様!?」
たくさん考えたうえでの呼び方だけど、呼んでみたら怪訝な顔をされてしまった...
「...お前年いくつ?」
「えっと...」
今何年かがわからないから、自分の歳がわからない...どうしよう。
「生まれた年聞いたら、ルカンお兄ちゃんよりも後だったよ。」
わからなくて困っていたらレーヤが答えてくれた。ありがたい...生まれた年で答えても良かったのかな。
「ああ、お前も今の歳わからなかったのか。じゃあ、ルカンお兄ちゃんでもルカンでもいいがどっちかで呼べ。」
流石に年上?ぽいお兄さんを呼び捨てにするのは忍びない。
「じゃあ、ルカンお兄ちゃん、でもいいですか?」
「ああ、それでいい。お前は今日は俺らと一緒のご飯を食べろ。」
「...わかりました。」
ご飯、食べさせてくれるんだ。なにもしてない、ただの怪しい奴なのに。
「あと、そのかしこまった言葉はいらない。こいつらと話してたような口調にしろ。」
え...?いいの、かな。でも、すごい目つきで言ってくるし、本人がそれでいいって言うんだからいいんだよね。じゃ、じゃあ...
「...わかった、ルカンお兄ちゃん。」
「ルカンお兄ちゃん、目ぇこわぁい。」
自分たちに向けられる目つきが違いすぎたのか、女の子、ツィーゼからそんな言葉がお兄さ、ルカンお兄ちゃんに投げられた。
「ああ、ごめんな。少し警戒してたかも。じゃあ、少し早いけどご飯にするか。」
「「「うん!」」」
みんなは慣れた手つきで役割分担してご飯の準備を始めた。
わ、私にもなにか手伝えることあるかな。
「スペースの都合でみんなで一緒に寝てるんだ。そして、お前の寝床はここだ。」
そう言って案内されたのは大きな布の上に布団が四つ置いてある大きな部屋だった。
「あ、わかりました...」
こんなにも大きい部屋の一部分で寝ていいなんて。随分と優しい...ルカンお兄ちゃんたちだ。
「なんだ?狭いか?そう言われても、部屋には限りがある。これ以上は...」
そう言ってルカンお兄ちゃんは唸ってしまった。
あ、勘違いされてる。きちんと思ったことを言わないと。
「いえ、こんなにも広い空間...いいんですか?」
そう言ったらまた少し怪訝な顔をされた。
でも、本当に大きな部屋だ。多分レクロ家で使っていた使用人室よりも大きい。
「...ああ、ここで寝てくれ。」
「わかりました!ありがとうございます!ルカンお兄ちゃん!」
「口調。」
あ、いつの間にか敬語に戻ってた!
「あ、わ、わかった!ありがとう!ルカンお兄ちゃん!ご飯もすごく美味しかった!今度は私も手伝うね。」
そう言ったらすごく微妙そうな顔をされた。
「...ああ。」
ここは随分と優しい子が多かった。境遇も同じ、ではなくても理解ができてしまう。みんな苦労していたんだ。
あと、私が家を出て一年と少し経っていることが分かった。
明日はルカンお兄ちゃんと話せるといいな。にしても...すごく久しぶりだなあ。コートを来ているとはいえ、こんなにも温かいところで寝られるのは。




