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017 スラムの子たちと雑談

 さて、なにからお話しようかな...。

「こんにちは。あなた達、名前はなんていうの?」

 まずは名前、だよね?

「んー?俺はジア。んでこいつは、ツィーゼ。そんで、レーヤ。お姉さんは?」

 ここまで小さい子たちなら本名を名乗っても大丈夫かな。

「私は...。私は、ホノールだよ。」

 でも、流石にラストネームを名乗るのはやめておこう。別になにもない、貴族の出ってだけだけど、警戒されてしまいそう。

「じゃあホノールお姉ちゃんか!」

 ホノール、お姉ちゃん...いい響きだなあ。

「あ、怒った...?」

 レーヤと名乗った少年は心配そうに聞いてきた。

 あ、勘違いさせちゃったか。

「ううん、お姉ちゃんって初めて呼ばれたから嬉しくなっちゃって。うん、ホノールお姉ちゃんって呼んでくれると嬉しい!」

「わかった!ホノールお姉ちゃん!」

「ねえねえ!ホノールお姉ちゃんはどうして捨てられたの?」

 ジアと言ったよね?この子。意外とぶっこむこなんだ。

「...んー、魔法?」

「魔法?」

 ...この子たちなら、理由程度なら話しても大丈夫かな。まだ小さいし。

「うん、魔法。私は親のほしい魔法を使えなかったの。だから捨てられたんだ。」

「そっか、てことはホノールお姉ちゃんの年齢は10歳は超えているんだね!」

「うん、そういうことになるかな。今いくつかはわからないけれど。途中から日付を数えていないんだ。」

 家を出てたときは数えていたけれど、日が経つにつれ数えていると途方も無いように思えてしまったし、生きるために必死だったからこそ、日を数えることができなかった。

 年中雪が降るこの地域だからこそ、季節の感覚もなかったし。

「んー、何年生まれかは覚えてる?街のお店にカレンダーがあるところがあるから、それで今年は何年かわかるし、日はルカンお兄ちゃんが聞いてきてくれるよ!」

「それでわかるってことか...。でもごめんね。別に私の年齢に興味はないから、そこまでしてもらわなくてもいいかな。」

「そっか!ホノールお姉ちゃんについて離してもらったし...。んーじゃあ、僕達の過去でも話そっか!」

「...は、話してくれるの?会ってすぐなのに?」

 そんなに警戒なく話していいものなのかな...自分の過去なんて。...まあ嘘を吐かれる可能性もあるだろうけど。

「うん!ホノールお姉ちゃんが話してくれたから!話すよ!」

「そっか。」

 眩しい笑顔でレーヤは答えた。

 私は話したって言っても、貴族の家の出であるとかは話してないのに...優しい子だなあ。

「僕はね、口減らしのために捨てられたんだ。お兄ちゃんお姉ちゃん、弟妹がいてね、食料が足らなくなっちゃったんだ。だから、跡取りのお兄ちゃん、お金になるお姉ちゃんの次の、何にもならない僕が家から追い出されたんだ。」

 レーヤは笑顔でそう言った。...内容はそんなにも明るい笑顔には似合わない重い理由だったのに。もう、捨てられたのは乗り越えられているということだろうか。

「そうなんだ...。」

「でもね!今はルカンお兄ちゃんが本当の家族よりも優しいの!だから幸せなんだ。」

「そっか。今幸せならよかったよ。」

 そっか、幸せなんだ。乗り越えられているんだ。よかった。

「じゃあ次は私の番ね!私は逃げ出しただけで、捨てられたわけじゃないんだ。ルカンお兄ちゃんが助けてくれたの。」

「あのお兄さんが助けてくれた?」

「うん!私のお父さんがね、その、私のことを好きだったの。だから、要求されれば、ずっと、毎日......。でも、それを異常だって教えてくれたのがルカンお兄ちゃんなの!ルカンお兄ちゃんってね!すごく優しいんだよ!」

 話しだした当初は思い出してしまったのか暗い表情だったけれど、ルカンというお兄さんの話をすると笑顔になった。

 性的虐待...私には幸いなかったけれど、想像を絶する恐怖なのだろう。

 でも、ツィーゼというこの少女も乗り越えられているんだろうなあ。あのお兄さんのおかげ、なのかな。

「そうなんだ。」

「じゃあ最後は俺か。俺も逃げてきた。と言っても、俺の親はツィーゼの親とは違う。違う暴力が激しかった。それで辛くて辛くて、逃げてきた。今も、ほら。跡が残ってるんだよ、あのくそじじいのせいで。」

 そう言ってジアという少年は洋服をめくって、お腹を見せてきた。

 ...そこには、新しいものはないけれど、古く深い痣や傷の跡がたくさんあった。

 けど、ジアもレーヤとツィーゼと同じく、痛そうな顔をしつつも、乗り越えられたような顔をしている。


 それにしても、みんな、大変な過去を持っているんだ。身体的虐待、性的虐待、口減らし...。でも、今はこんなにも笑えている。あのお兄さんってすごいんだなあ...

「そう、なんだ。それで同じように家のない子供でスラムができているんだ。」

「ほかにも子供はいるよ。けど、ルカンお兄ちゃんのとこにはこの四人だけ。一番安全だけど、やっぱりみんなご飯とかみんなほしいみたいでさ。」

 ここには四人だけ、ほかにも子供がいる、ってことは、スラムは小さい集まりが複数個あるって感じなのかな。一番安全...。そんなところの一番上の人?、あのお兄さんが出てきてくれてよかったな。

 あ、そういえば...。

「みんなはどうやって食料調達をしているの?」

 なんの脈略がなにもないけれど、ふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。

 私は途中まではもらったパン、それがなくなったらもらったのと貯めたお金で買って、両方とも底をついたらゴミ箱から廃棄食品を食べていた。けど、スラムの子たちってどうやって生活しているんだろう...この家もそうだけど。

「俺らは街の人が落としたお金を拾って、集めて。それが貯まらなければ、ゴミ箱から漁ってるんだ。意外とゴミ箱に入っている、捨てるであろうご飯、美味しいんだよ。」

 少し似ているんだなあ、私の食料調達と。

 落としたお金を拾って貯めるってこともできるのか、そっか。でも、

「うん、それはわかるよ。前にいた町ではゴミ箱に入った、廃棄食品を食べていたからね。」

 この子たちに同意できることがあるとは思っていなかったけれど、これは本当に理解できる。意外と美味しいものもあるんだよね。なんで捨てるのか分からないほどに。

「廃棄食品、ってなあに?ジア、知ってる?」

「いや?」

「レーヤは?」

「私も知らない。なあに?それ。」

 廃棄食品って言葉を知らない...。幼い頃からここにいるのか、それとも庶民はそんな言葉が教えられないのかなあ。でも、知らないのであれば教えておいてもいいよね。

「あぁ、廃棄食品っていうのは、さっき言った、私たちが食べている、ゴミ箱に入ったご飯のことだよ。」

「そうなんだ!ホノールお姉ちゃんは物知りだね!」

 私の場合は家が貴族でそこの書庫にある本を読めたのが大きいと思うけれど...。

「そう、かな?でも、嬉しい。」

「もっと知っていることないの?教えて教えて!」

「...うん!」

 なんか、今までの私の行動が無駄ではなかったみたいで嬉しかった。もっと、話してみたい。たくさんのことを教えてあげたい。

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