010 異変
まともな対策ができぬまま時間だけは過ぎたけれど、相変わらずご飯は高く売られ、洗濯をすると服が消える。そして消えた服の行方は未だわからない...。
食料はスラムの子供だと思われているから、かなあ...。
実家に、ヌリズ辺境伯家に頼ることはできないから、正直これはそのままにするしかない。私が現状、身寄りのない子供であることは事実だし。
けど、服はなあ...。
今は少し余裕がある。...少し整理しよう。
このまま服が消えていくといつか今着ているものだけになってしまいかねない。
服が消えるのに気づくのは毎回に巾着に入れているタイミング、消えるのはそのとき洗っていた服の一着のみ。
洗っているとき時点ではあったものとないものがある。手伝っていただいているので、そっちに入っていればわからない。
一度干させていただいて以降、ずっと甘えて干させていただいているからそこから家に持ってきているときに落ちている可能性はあるけど...。毎回、それを思いついてきちんと注意して運んでいるし、あとで手ぶらの状態で見ている、けれどない。
なんでなんだろう...。
大人と関わるのはいいけど、子供には近づかないように、のような言葉をもらったし、少し気は進まないけど、大人の方に服の行方を知らないか聞いてみよう。
あ、あそこに人が集まって談笑している。ちょうどいい聞いてみよう。
「あの、突然すみません。」
「...だれ?」
会話を途切れさせてしまったんだから当たり前だけど、睨まれた。...でも、聞いてみたら分かるかもしれない...!
「あ、少し前からこちらの町に住まわせていただいている者なのですが、」
「お金ならやらないよ!」
「そうよ。今はどこの家も余裕はないのよ。」
「家に入れてくれも無理よ。」
聞こうと思っていたところで、怒鳴られてしまった。な、なにか琴線に触れてしまったのかな。...ふー、大丈夫、冷静に。
「あぁ、もちろんそのようなことを申し上げるつもりはございません。ただ一つお聞きしたく...」
「聞きたいこと?...なに?」
敵意がないことを分かってくれたのか、少し警戒を緩めてくれた気がする。
「ご質問の許可をありがとうございます。私の服が洗濯する度に消えておりまして、行方をご存じないでしょうか?」
「はあ?私たちを疑っているわけ!?」
あ、やばい。また怒らせてしまった。
「あ!いえいえ、とんでもございません!ただ目撃情報などをいただけないかと...私の服は有限ですし、どれもいただいた大切なものなのです。」
怒らせるつもりも、敵意もないんだと伝わるようにできる限り、声や動きにも注意して聞いた。
「...あなた知ってる?」
「いいえ。」
「あなたは?」
「私も知らないわね。」
「じゃあ私たちは知らないわ。けど、どうせあの女じゃない?いつも一緒にいるし。」
そっか...。全員知らないんだ...。てゆーか、あの女?誰のことだろう?
「あの女、と申しますと...?」
「一緒にいるじゃない、あのよくわからない女よ。一回私たちもまともに話したら、金をすられてはぐらかされたのよ!」
まさか、おばさま?でも、おばさまは村の人と仲が良くて...。
「...あの方はそのような方だったのですか...?」
到底信じられない...。あの寒空の下で川での洗濯を手伝ってくれたおばさまが?
「あなた、よく知りもしないで関わっていたの?そうよ。私たちからすっていって!金を返さないのよ!」
「あの方はずっとこちらに住んでいらして、旦那様を亡くされたのでは..?」
「はあ?あの女はあんたの来る少し前にこの町に来たわよ。あの女の過去は知らないけど。」
「え...嘘だと?」
...え?嘘を、吐かれたの?
「ははっ、あなたも騙されたの?よそ者同士仲が良いなとは思って関わってなかったけど、そんなに面白いことになってたのね。」
そう言って話してくれるおばさんは笑った。
まさかあの人の話が違っていたなんて...。たしかになんであの人の話を疑えなかったんだろう...。
今となっては疑問が多い。
「じゃあ、これでいい?聞きたいことは一つって言ったのにたくさん答えてあげたんだもの、感謝してここから去ってくれない?」
「え、っと...」
「まあまあいいじゃない、こいつは今のところなにもしてないし。」
宥めるようにもう一人のおばさんが言っているけれど、全然頭に入ってこない。
「...まあ、それもそうね。じゃあ目障りだから早く目の前から去ってくれる?」
「あ、はい...ありがとうございました。」
全然良くわからないし、飲み込めない。
けど、とりあえず確認するためにも、あの人に話を聞きに行こう。
そしたら...なにかは分かる、よね...?




