009 食料調達
今日は、少しの有り金を使って食料を調達しつつ、消えた服の行方を探そう。
幸いにも選んだ土地が大きな商店の裏だから距離で困ることはないし。
「いらっしゃいま...おい、俺は見てるからな?くれぐれも盗むなよ?」
入店と同時に店員さんに声をかけられた。見られている?客で子供だからかな。とりあえず盗むつもりはないし、返事をしておこう。
「あ、はい。」
「...はあやだやだ、またスラムのガキかよ。前のガキは店のモン盗んで行きやがって、止められなかったし。ふざけんなよ、ほんと。」
返事をすると店員さんはそう毒を吐いた。
「まあまあ、今回のガキはマシかもよ?服装それなりだしさ。」
「だといいけどよ。」
もう一人の店員さんに宥められて、こちらを見ながら歩いていった。
なんか入店するだけですごく警戒されたけど...。前回そんなことが起こっていたなら仕方ないか。客だから、売っていただいている立場なんだし。
あ、これいいかも。意外と長持ちしそうな見た目しているし、ドライフルーツが入っていて、美味しそう。まあ今の食料と変わり映えしない見た目だけど、この予算だし、全部使い切るわけにはいかないし、これ一つでいいかな。
「すみません、これください。」
店員さんのいるレジに私はお金を握りしめて、歩いていった。
「...銅貨15枚。」
「え!?すみません、値札には12枚と書いてあったのですが、表記ミスですか?」
すると値札に書いてあった値段とは違う値段を言われてしまい、つい聞いてしまった。
「はあ?スラムのガキの癖して口答えするわけ?」
私が聞くと、店員さんは眉を潜めて、睨むように言ってきた。
...こわい。急いで答えないと。
「あ、えっと、そのようなことではなく、ただの疑問といいますか...。」
「それが口答えなの。ほら、早く、銅貨15枚。」
開いていた手を更に差し出して、手を上下に揺すっている。
...こわい、けど...。ここで引いちゃお金がなくなっちゃう。もう一回聞いてみよう...!
「あ、えっと私もお金が貴重なので...値札通りの値段で売っていただくことは可能でしょうか?」
「無理。早く、15枚。」
意を決して聞くも、無理と即答されてしまった。
こわい、し、一回だけなら...銀貨15枚でも...。なんとかなるかな...。
「わ、わかりました...。では、いち、にい、さん、よん、ごお、あとはこれで。」
震える手になんとか押さえ、銅貨15枚を差し出した。
「チッ、あるんだったらさっさと出せよ。」
そう言って差し出した銅貨15枚を、ものすごい勢いで奪い取っていった。
なんで値札の表記通りに売ってくれないんだろう...。なんで表記よりも銅貨3枚分も高いんだろう...。
「あ?おい、13枚しかねえぞ。泥棒する気か?」
そんなことを考えながら、お店から出ていこうとすると後ろから低い声をかけられた。
「え!?とんでもないです!きちんと数えて正しい数出しましたが...。」
さっき、きちんと手のひらで数えて銅貨15枚を出したからあっているはずなのに。
「おい?お前は数えるなんてできないだろう?じゃあいい、そのキラキラしてるやつ1枚で泥棒しようとしたことと、さっきの足りない分もチャラにしてやるよ。」
そう言ってニヤついた店員さんが指した先には手に握られている銀貨。
...銀貨?
「え!?流石に銅貨12枚、又は15枚と、銀貨1枚では流石に釣り合わないかと思いますが?」
流石におかしいと考え、怯まずに答えた。
銅貨12枚が銅貨15枚になるのもおかしいけれど、銅貨12枚または15枚が銀貨一枚になるのはいささか算数がおかしすぎる。だって銅貨30枚で銀貨1枚なんだもん。
「は?あーわかったわかった。じゃあ盗もうとした、って店長に引き渡すからな。」
そう言って嫌な笑みを浮かべた。でも、
「流石に銅貨12枚と銀貨1枚ではおかしいですから、どうぞ。そちらが不利だと思いますが。」
私がそう言うと店員さんは、ニヤリと笑った。
なんでこの状況で笑うことができるんだ?
「てんちょー!スラムのガキ、今回は盗み逃げられる前に止められました!」
「おっよくやった!...お前、裏に来いよ。」
店員さんの大きい声に反応して身体の大きい、店長さんが出てきた。
「はい。」
店員さんと店長さんについていき、私は品物の置いてあるバックヤードに向かった。
どかっと椅子に座り、こちらを軽く睨んだあと店員さんに視線を向けた。
「んで?何盗もうとした?」
「このパンです。店長。」
そう言って店員さんが差し出した手のひらには先程買えたはず、本来であれば私のものになっているはずのパンが。
「ああ、今回のガキは銅貨12枚もなかったのか。」
先ほど3枚も多く支払ったのにお金がないと言われ、つい口を挟んだ。
「いえ、あります。先程銅貨12枚で購入しようとしました。会計のところで、値段は銅貨15枚だと告げられ、銅貨15枚を渡したところ、足りないと言われ、銀貨1枚差し出せと言われました。」
「はあ?お前なにしてるんだよ。」
さっきあったことをそのまま話すと店長さんは店員さんを睨んだ。
「いや、こいつが嘘ついているんですよ!銅貨12枚だって言ったのに、10枚しか出さないんですよ!挙げ句足りないって言ったら逃げようとしやがったんですよ!」
「なるほどな。お前、金持ってないのか?」
そう聞いて店長さんは店員さんを睨んでいた目を私に向け直した。
「いえ、あります。ご覧の通りです。」
手を広げてずっと握っていたお金を見せた。
「は!?おいっ!それをレジで出せよ!あるんじゃねえか!」
横から店員さんが怒鳴ってくる。
「まあまあ落ち着け。じゃあ、はい。その銅貨12枚と、このパンの交換ね。どうぞ。」
手のひらから銅貨12枚を取り、パンを差し出してくれた。その受け取ったパンを受け取り巾着の中にいれる。
よかった、これで食料を買うことができた。
「ありがとうございます。」
「店長!いいんですか!?盗もうとしたこいつを野放しにして!」
横から再び店員が吠えるも、店長さんは相手にしない。
「まあ、きちんと代金をくれたから、いいだろ。もう盗もうとするなよ。」
そう言って頭を撫でてくれた。
店長さんは優しい人なのかな。
「もともと盗んではおりませんし、代金はしはら...あの、先ほど出しました銅貨15枚、返してください。」
思い出した。お金はもう店員さんに渡してあるんだ。
「はあ?何言ってんの?お前、金渡してねえだろ!俺に!」
「いえ、渡しました。あなたの言う通りに15枚。しっかり手渡しいたしました。」
店員さんの目を見て答える。
ここで怯んじゃ駄目だ。大事なお金なんだもん。返してもらいたい。
「はあ、盗みが無理だと思ったら、違う手法か...。店長、本当にこいつ野放しにするんですか?」
「お前は銅貨15枚受け取ったわけじゃないよな?」
「当たり前じゃないですか!店長は俺を疑ってスラムのガキを信じるんですか?」
「いやただの疑問だよ。受け取ってないなら...。お前が嘘つきってことになるな。」
店員さんを訝しんだ目で見たと思ったら、店員さんの言い分をすぐに信用してしまった。
...私が子どもだからか、客だからか信じてくれない。
「誤解です!私はきちんと渡しました!」
必死に声を上げて反論するも冷たい目を向けられてしまった。
「はあ...これ以上嘘を吐くなら、自警団に引き渡すからな。」
...自警団は困る。どんどん登らせるとヌリズ家にたどり着いてしまう。だったらもう銅貨15枚は諦めて引き下がるしかない...。
「...わかりました。では、このパンを買えたので構いません。失礼いたします。」
「じゃあ、今度はきちんと金を必要な量、持ってきて、初めから出せよ。」
「...。」
きちんと払ったのに、なんだったら多く払ったのにそう言われてカチンときてしまい、返事をできずにお店をあとにした。
買うことはできたけれど、これでは支出が多すぎる。パン一つに合計銅貨28枚も払ってしまった...
今後は対策できればいいんだけど、なにかあるかな。




