↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/122

第28話 大食い早食い




 これは絶対間違いないことなのだが、俺がお茶を取りに行って帰ってくるまでおよそ1分。そして俺がお茶を取りに行った時、まだ伊桜の紙皿の上には大盛りの半分は焼きそばが残っていた。


 ここまで言えば何が言いたいか分かるだろう。そう、この女たったの1分でそれを全て食べてしまったのだ。もしくは捨てたかのどちらかだが、動いた気配はないし、ゴミ箱にも捨てられてない。なら確定だろう。


 「食べるの……速くね?」


 お茶の入ったボトルを手に、立ち尽くした俺は直立不動で聞く。


 「大食いは食べるのも速いんだよ。私の場合は魔法だけどね」


 「んなわけあるか」


 しっかり取ったはずのソースは再び伊桜の口周りを侵食し始めており、相当な速さで口の名へ書き込んだことが余裕で分かる。


 「……とりあえずお茶でも飲んでくれ」


 「はーい」


 別に恥じらう様子もない。これはバレたりイジられたりしても問題ないことなのか?それか早食いしたのはバレてないと思っているか。それならただ可愛いだけの天然ちゃんだが、そんなことはないだろう。


 まぁ、それを変だとは思わない。むしろすごいと尊敬するには特技なんだとは思ってる。いっぱい食べる君が好きってやつだな。


 魔法のお腹を持ってるとは……。


 注がれたお茶を一息に飲み干す。ここまで豪快だと食に対する向き合い方が人並み以上なのだと解釈するしかない。大食いの人あるあるだが、何故こんなにもお腹が出ないのか、なんなら伊桜なんて腹筋割れてそうなほどスタイルがいい。


 学校ではスカートは折らず、腰のラインを下げたりして足の長さを隠しているらしいので、クラスメートの誰1人としてスタイルがいいと知ることはない。


 「それにしても、速いな」


 「空腹なら余裕です」


 「もう隠そうともしないのかよ」


 「隠せないなら吹っ切れろ精神だからね」


 口周りを拭きながらも一言一句はっきりと伝える。


 「もうお腹いっぱいか?」


 まだ半分、伊桜と比べれば3分の2は残る焼きそばを崩さずマイペースに食べ進めながら、暇になるだろう伊桜と会話を続ける。


 「ううん。そんなにかな」


 大食いということをカミングアウトしてからだが、可愛こぶる気の一切ない伊桜は、普通女子なら抵抗あるだろう大食いというのを包み隠さず顕にする。やはり自己分析は完璧のようで、可愛いよりクールを武器にするからこそ抵抗はないらしい。


 「なら時間は?何時に帰らないとって決めてるか?」


 「それもないよ。うちの親はノホホンとした性格だし、姉さんも陽気な人だから基本私の好きなようにしていいって感じだし」


 「そうか。なら少し遅くまで一緒に居られるな」


 「下心丸見えのいやーな言い方」


 「これが平常運転だろ」


 「それもそうかも。慣れてきたよ」


 いつだって伊桜にはそう接してきた。付き合ってもない男女でこんなやり取りをすれば、ほとんどが気持ち悪がり、それ以降俺を避けるだろう。気持ち悪いやつ、変人、ストーカーなんてレッテルを貼られてしまうことだってある。


 でもそんなことをしないのが伊桜怜という女子だ。俺に好感を持っているといった日から、俺は変わらず関わってきた。グイグイ突っ込むように接したこともあるし、基本がそれだ。


 それを嫌と思わず、距離を近づけるためにありだと思って受け入れてくれてる。きっと俺でなければ伊桜だってキモいというレッテルを貼ることだって考えられるしな。そうであってほしいのが、願いでもある。


 「慣れてきたなら、次に移るか」


 「その前にまず食べきってね?」


 「残したら食べてくれるか?」


 「天方くんの食べかけならギリギリセーフかな」


 ニヤッとして何かを企んでいるような顔だ。これが何を意味してるかなんて俺には分からないが、意図的なものとも思えないので、これは完全にカウンターだ。


 「マジかよ。そこは否定すると思ってたんだが」


 「勿体ないじゃん。友達なら普通じゃないの?」


 「レベルアップしすぎだろ。これは俺が全部食べるので残されませーん」


 まだ食べれるだけ胃の中に空きはある。少食でも、空腹と混ざれば手を止めさえしなければどんどんと食べることが可能だ。今日が空腹を感じる日で良かった。


 それから2分半ほどで全てを残さず食べ終える。紙皿はソースで黒く塗られ、張り付いた青のりたちが勿体ないと訴えかけてきているように見える。それほどお腹は膨れる。


 「「ごちそうさまでした」」


 15分もかからず3人前の焼きそばを食べ終えた俺たちは丁寧に合掌する。これでやりたいことの第1が終了だ。


 「次の予定って決まってるの?」


 「ああ。そのためには室内に戻らないとだから、まずはこんなジメッとした空間から逃げるぞ」


 気温は下がれど夏の暑さとジメッとした空気感は耐え難い。先程から室内から逃げる冷気に背中を当てて涼んていたが、それでも足りないほどだった。


 「いいけど、片付けとかはいいの?」


 「伊桜は夏祭りに行ったとき屋台の片付けをするのか?」


 「いやしないけど……」


 「だろ?なら気にしなくていい。それに気を使ったらダメって約束だったしな」


 片付けなんて明日でも出来る。明日の天気は晴れでそれをしっかり確認済みのため、今日としてセッティングをしたまである。


 「なんか悪いけど、そう思う方が悪いよね。ここは甘えようかな」


 「ああ。それが正解だからな」


 そして椅子やコンロはそのままに、炭の火も忘れず消してから冷気に浸りにすぐさま室内へ入った。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。