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第26話 止まらない




 質問の答えに満足したのならそれで良かった。好きな食べ物を聞かれて正解なんてないことはないが、もし作って仲良くなろう作戦とか伊桜が考えてたなら、無理難題を押し付けることになりかねない。作る気もなくてよかったものだ。


 作業は俺がすべてを担うが、伊桜は会話の部分を担ってくれるようで、仲を深めたい意味を込めて質問は飛んでくる。


 「どんどん聞くよ。趣味は?」


 どこまで行こうと小学生の仲良くなり方だ。


 「伊桜をイジること」


 「それはダメ。他にちゃんとした趣味は無いの?」


 「厳しいな。ちゃんとした趣味って言われると無いかもしれないが、家に帰るとアニメとか漫画、その他動画を見たりするな」


 「普通だね。私と大差ないほど暇人じゃん」


 「部活に所属しない高校生なんてそういうものだろ」


 良さげな火加減に調整出来ると、コンロの上に鉄板を置く。ここからは俺のシングルタスク能力と伊桜の問いかけるタイミングが勝負になる。絶対に俺負けるけど。


 焼きそばを作るが、用意するものはそこまで多くない。そもそも焼きそば自体材料が少なく、それでも美味しく作れる魔法の品なのでコスパ面では最強の麺料理である。


 「そうだ。なんで運動なら学年1なのにどの部活にも所属してないの?」


 「……ごめん、それは聞かれたくないことなんだ」


 なんて、重い雰囲気を出して伊桜をイジり倒すことしか考えてない俺は、鉄板に集中してても頭は回るらしい。本当に悪さをするときだけよく回る。


 「えっ……あー、ごめん……」


 やっちゃったかな、という気まずい雰囲気を醸し出す。めちゃくちゃ申し訳無さそうだが、これが可愛い。それに満足すると何もなかったかのように続けて理由を教える。


 「部活に所属してないのは注目されるのが苦手だからだな。伊桜が自分の容姿の良さを知るように、俺も自分で運動能力は高いって自負してるんだけど、高い範囲が球技なら全般なんだよ。そうなればどこの部活に所属しても注目されるから避けてる」


 「……何も信じないから。デリカシー無いとか、天方くんが傷ついても知らないからね?」


 「俺にNGは無いから何でも聞いてくれていいぞ」


 「はぁぁ」


 何度目のため息か、忘れるほどにはついている。俺もここまでして飽きないのも変人の域を優に超えていると理解している。問題児レベルだな。


 そして本題である鉄板に火が通ると、予め水洗いしていた麺をジューッといい音を立てて焼き始める。時間にして1分半から2分前後で焼き色がつくまで焼く。その間はもちろん暇となる。


 「なんで注目されるのが嫌なの?」


 どうでもいいことを聞くように、はじめから呆れた雰囲気をだしてグダーっとだらけた姿勢で聞いてくる。これもまた伊桜怜としての一面なのでしっかりと目の中に刻み込む。


 「伊桜には意外かもしれないけど、俺って引っ込み思案で他人と関わるのは得意ではないんだよ。いつメンを除けば、話しかけられたら返事に長考するし、面倒なことを押し付けられることもあるから、話しかけられると困ることがあってな。嫌になったんだ」


 「意外も意外だよ。そんなふうには見えないけどね。私には気持ち悪いほど寄ってくるのに」


 「辛辣すぎるともっと気持ち悪くなってやるぞ?」


 「うわー、無理無理。受け付けない」


 「尖ってるなー」


 本気の嫌がりは傷つくことが多いが、今回はそんなこともない。自分から言われに行っているようなものであり、ドMではないが悪い気はしない。良好な関係にはそういうのはつきものだと思うし。


 タイミング良く焼きそばに焼き色がついたので1度邪魔にならず、火もほとんど届かない端に寄せる。油を適量注ぎ、その上に食べやすいよう切っておいたキャベツともやしを投入。これもまた火の通い具合を見ながら混ぜる。


 楽しいかと聞かれれば楽しい。これがただ混ぜるだけなら楽しいとは思わないが、伊桜が話を振ってくれることで俺のこの気持ちは成り立つ。全く止む気配のない質問の投げかけは、俺の手を止めることもなく簡単なものばかりだ。


 「ねぇ、一人暮らししてて寂しくないの?」


 「思ってたよりは寂しくないな。掃除が大変なだけで、それ以外は何もかも親がいた時と変わらないし。何かの心配してるのか?俺が1人で泣いてないかとか」


 「そんなわけないじゃん。ただ充実してるのか気になっただけ」


 「充実か……伊桜と出会う前は少しつまらないこともあったのは確かだな。でもそれ以上に出会ってからは充実してる気がする。夏休み入ったからって理由もあるが、第1はこの時間を気を使わないでいい相手と共有出来てることだ」


 野菜も少し焦げる程度に焼けると、端に寄せた麺を加えて、ウスターソースも加える。俺の適当量で入れているが、多分不味くなることはない。ウスターソースの水分が消えるまで焼けばこの調理は終了だ。ラストスパートってやつ。


 「天方くんにとってもいい関係を結べてるってことか」


 「『も』ってことは伊桜も思ってるってことか?」


 「まぁね。ウザくてめんどくさくて殴りたいほど屁理屈言う天方くんだけど、こうして思い出を作るって約束を実行するとか、気を使わないでいいってことは、友達として必要なことだと思ってたから、それを難なく紡げる関係になれたのはいい点だと思ってるよ」


 「なるほどなー。ホント、今日は正直で可愛いとこ見せるな」


 「容姿だけね」

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