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EP32 魔境大乱 ウケツガレル命②表

誤字報告ありがとうございます。


対オーク同盟が撤退を開始してから10分。

戦場はアサシンラビットとオークの両者が主役となり、リッチが舞台に死という花を添える展開となっていた。


「何でオークはこっちを攻撃してくるんだ!」


振り下ろされる棍棒を避け、剣で一撃。

レグニルス一人の攻撃では格上のオークは倒せないが、隣には頼もしい相棒となった爺がいる。

爺はレグニルスが作り出した隙を見逃さず、的確にオークを倒していく。


戦場は混沌としている。

オークはアサシンラビットを攻撃するが、乱入者であるリッチには決して攻撃しない。

むしろリッチから距離を取るように行動していた。


「リッチから逃げようとしているのでは?」

「確かに。リッチとは逆方向にいる俺達に襲い掛かってるような?」


元々オークと対オーク同盟は、正面から向かい合うように対陣していた。

そこに対オーク同盟側にレグニルスが到着、オークを土壁にて分断し各個撃破を開始。

そして、オークの背後よりリッチが現れ、対オーク同盟が撤退したのが現在の現状だ。


つまり、オークは土壁に分断された一部がアサシンラビットに包囲されているが、当初の形であるオークと対オーク同盟が正面から向かい合う形は大きく変わっていない。


その為背後から襲って来るリッチからオークが逃げようとすれば、どうしても正面のアサシンラビットを抜く必要があった。


「ま、それはこっちも同じなんだけど」


レグニルスが連れていこうとしている者は、オークの集団を抜けた先にいる。

そこまでオークに気づかれないよう進むことは、隠密系スキルを持たないレグニルスには不可能だった。


「さて、準備は大丈夫ですか?」

「うむ。それでは、参ろうかの」

「行きましょうか」


祖父と孫のような気軽な会話で、爺とレグニルスは一歩前に出た。

続けて二歩目も踏み出すが、土壁の上なのでそこから先の地面は存在しない。

自然とレグニルスと爺は土壁を踏み切り、大空に羽ばたくことになる。


もっとも、翼を持たない1人と1羽なので、直ぐに地面に着地する事になるのだが。


「…なんでウサギは1羽、2羽って数えるのに、空を飛ばないんですかね?」

「…それをウサギの儂に聞かれても分らんよ」

「まあ、人間の都合ですからね」


正確に言えば、宗教上の都合である。(諸説あり)

仏教の教えにより獣は食べられないが、鳥や魚は食べられたのでウサギを鳥として扱ったという説が有力だ。(諸説あり)


「異世界だし、空くらい飛ぶかと思ったんだけど」

「飛ぶウサギもいるとは耳にするが、我等は森を住処としておるでな」


1人と1羽は会話をしながら、それこそ散歩のような気軽さで走る。

しかし、ここは戦場。

当然、レグニルスと爺はオークに襲われるが、彼等の歩みは止まらない。


右から襲い掛かるオークの斧を避け前へ、左からオークが襲い掛かれば前に出る事で攻撃を避けてさらに前に。


反撃はしない。

反撃すれば到着が遅くなり、オークに自分達を包囲する時間的余裕を与えてしまう。


それに、レグニルスと爺にはオークを一撃で倒せるような攻撃力は無い。

無駄に反撃するよりも、少しでも速く前に。

それがレグニルスと爺の出した結論だった。


「森は駆けるけど、空は駆けられないと」

「ダンジョンマスター殿が何を期待しているか分からんが、普通のウサギは空を飛ばんぞ」

「でも、飛ぶウサギもいるんですよね?」

「いや、飛ぶと言っても」


1人と1羽の歩みは止まらない。

軽口を言い合いながら、彼等は一歩一歩確実に前に進んでいった。


「やっぱり、最後はコイツだよな」


目的地まで後一歩という所で、最後に立ち塞がる者がいる。


リッチ。

オークと対オーク同盟との決戦に、文字通り割って入った異物。

この場の絶対的強者は、間違いなくレグニルスの目の前にいるリッチだ。


「目の前にすると、凄い威圧感」

「それなりに長く生きとるが、ここまでの強者に出会った経験は数えるほどですな」

「…時間対策と即死対策してないけど大丈夫かな?」


前世で有名だった某アンデットモンスターを思い出し、レグニルスは対策が不十分なのではと不安に襲われてしまう。

オタク界隈で有名だったそのアンデットは、散歩するだけで都市が壊滅すると言われるレベルの即死攻撃の使い手だった。


「…オマエハ」

「喋った!」


突然言葉を発したリッチ。

骸骨が発声するというファンタジー現象を前に、レグニルスは無意識の内に腰が引けてしまう。

レグニルスはあまりホラー系が得意では無いのだ。


「リッチじゃから喋るじゃろう」


ファンタジー的な常識が無いレグニルスに対し、現地ウサギの爺は落ち着いた。

ファンタジー的常識では、知恵あるモンスターが話すのは当然なのだ。


「しかし、使用する言語が違うので意思疎通は難しいのじゃが」

「そう言えば、配下モンスター以外の種族とは話せないんですよね」


レグニルスと爺は、人とウサギなので使用している言語が違う。

しかし、そこはダンジョンマスターのご都合主義的な権能で会話が可能となっている。


レグニルスが現在配下としているのは、アサシンラビットとフォレストウルフの2種類のみ。

つまり、それ以外のモンスターの言語はレグニルスには理解出来ない。


「でも、今の言葉理解出来たような?」

「…」


咄嗟の出来事だったので、リッチがレグニルスの理解出来る言葉を発したのか、レグニルスには確信が持てなかった。

リッチが発した音を、自身が知っている似た音の言葉に変換した可能性もあった。


「空耳だったのかな?」


レグニルスは怪訝な顔でリッチを見つめるが、リッチが口を開くことは無かった。


「油断めされるな」


無防備にリッチを見ているレグニルスに対し、爺は注意を促す。

なにしろ相手は、相手に触れるだけで命を奪って来た恐るべき相手なのだ。


「ごめん、余計なこと考えてた」


今は余計な事を考えず、目の前の相手に集中する。

それがレグニルスの出した結論だった。


レグニルスの目の前には強大な敵が立ち塞がっているが、ゴールは目前なのだ。

リッチの背後に倒れている、アサシンラビットの王。

僅かに胸が上下に動いているので、まだ生存していることは分かるが、致命傷を受けた王が何時まで生きていられるかは分からない。


しかし、仮に王が次の瞬間息絶えたとしても、レグニルスは自身の行動を止めたりしないだろう。

アサシンラビットの王はレグニルスの配下である、アサシンラビット全体の精神的な支えなのだ。

ましてやレグニルスと因縁浅からぬ姫の実の親でもあるのだ、レグニルスに見捨てる選択肢は存在しない。


「お願いしたら通してくれないかな」


リッチの正面に立ち、油断なく観察を続けるレグニルス。

背後の王を助けたいが、それには正面のリッチが最後の壁として立ちはだかる。


レグニルスが現在把握しているリッチの攻撃方法は2パターン。

一つ目は触れる事で相手を即死させる攻撃と、地面より影の槍を出現させて相手を貫く2つ目の攻撃パターン。

とは言え、殆どの敵を即死攻撃で倒しており、他の攻撃方法を隠している可能性が高い。


「強キャラとは闘いたく無いんだけど」


相手が骸骨だからか、リッチが何処を見ているのか、何を考えているのかレグニルスには全く分からない。

隙があるように見えて、油断なく構えているようにも見える。


まさに蛇に睨まれた蛙状態。

特に触れられたら即死という攻撃が危険すぎる為、レグニルスは中々前に出る事が出来ないでいる。


「…しかも、ずっとこっち見てくるし」


蛇に睨まれた蛙状態になっているのは、レグニルスが動けない事もあるが、リッチがじっとレグニルスを見つめているからでもあった。


「ま、囮にはなっているから良いんだけど」


レグニルスがリッチの背後、倒れている王に視線を向けると、そこには先程までレグニルスと共にいた爺の姿が。

爺はリッチがレグニルスに注目している事を察し、彼を囮にリッチの背後に回り込んだのだ。


「ご無事ですか!」

「…爺か」


リッチがレグニスルのみに集中している事、オークがリッチから逃げている事、それらの要因により爺は容易に王の元へ辿り着く事が出来た。


しかし、王はまさに今際の際だった。

呼吸は浅く、白い毛で覆われているはずの体が血により赤く染まっていた。


「…良く来た。儂としたことが、娘に渡す物がある事を忘れておってな」

「…王」

「体も動かぬし、どうしたものかと迷っておったところよ」


既に見えていないのだろう、王の目は爺では無く虚空を彷徨っていた。


しかし、爺はソレを指摘することは無い。

忠臣は黙って主の意向を汲み取り、主の望むままに行動するのみ。


「某がお連れ致します。今しばらくお待ちください」

「…頼む」


爺は倒れている王の体を、耳を使って器用に背負う。

このように王を背負うのは、まだ王が王子だった頃以来だろうか。


王を背負った爺は、急いで元来た道を引き返す。

囮になったレグニルスを置いて来てしまうが、緊急事態なので仕方ない。


「って、爺さん! せめて一言声かけてけよ」


が、置いていかれるレグニルスとしては大問題だ。

リッチとの蛇に睨まれた蛙状態が継続中なのに、置いて行かれては一大事。

レグニルスとしては直ぐにでも逃げたいが、蛇に睨まれた蛙状態から抜け出す勇気が無い。


「あのさ、今日は引き分けにしない?」

「…」

「人間の俺より、あっちのオークの方が美味しいと思うよ」

「…」


レグニルスは必死に話しかけるが、リッチは変わらず無反応。

あまりに無反応なので、レグニルスは視線をリッチに固定したまま一歩後ろに下がってみる。


すると、やはりリッチは変わらず無反応。


「あれ、これは見逃してくれるのかな」


もう一歩、今度は先程よりも大きく後ろに下がってみる。

これでリッチが無反応であれば、レグニルスは反転して土壁エリアに逃走する計画を立てていた。


しかし、レグニルスの逃走計画は計画で終わってしまう。

今まで無反応だったリッチの眼が急に赤く光ったのだ。


「え、攻撃色?」


突然の変化に最初こそ冗談を口に出来たレグニルスだが、そのような余裕は直ぐに無くなってしまう。

今まで数多のオークの命を奪って来たリッチの腕が、レグニルスに向かって伸びて来たのだ。


「あぶな!」


触れれば即死。

どの様な理屈か不明だが、その攻撃の結果は明白だった。

だからこそ、レグニルスは少し大げさにバックステップでリッチの手から逃れる。


「悪いけど、今日は逃げさせてもらうよ!」


バックステップの勢いのまま体を反転させ、レグニルスはそのまま土壁エリアを目指して走る。

土壁エリアはレグニルスが新たにダンジョンエリアとした領域なので、そこまで逃げれば転移により安全なダンジョンに逃げる事が出来るのだ。


「…ニガサナイ」


逃げるレグニルスを追うように、リッチも移動を開始する。

今までは特定の個人には興味を示さず、無差別にオークの命を奪っていたリッチ。


そんなリッチが、明らかにレグニルスを狙って行動していた。

足を動かさず、地を滑る様に移動しながらレグニルスを追うリッチ。


「って、何処のホラー映画だよ!」


ローブを来た骸骨に追われるレグニルス。

しかも相手は足を動かさず、地を滑る様に進んでくる骸骨だ。

ホラーが苦手なレグニルスは一目散に逃げた。


「しかも、何かやっぱり話してるよね?」


土壁エリアに走りながら、レグニルスはリッチの様子を思い出していた。

リッチは確かにレグニルスに理解出来る言語で喋っていた。


しかし、そんな事はありえない。

何故ならレグニルスはアンデットモンスターを配下にしていない為、アンデットの言葉は分からないはずなのだ。


例外があるとすれば、リッチがレグニルスでも理解出来る言語で話していたケース。

リッチも元は人間なので、人間の言語を話している可能性はある。

そしてレグニルスはこの世界に転生した際のチートで、人間の言葉が分かる様に転生特典を購入している。

リッチが人間の言葉を話すなら、転生チートによりレグニルスも理解出来ても不思議ではない。


「って、余計な事を考えてる場合じゃない!」


土壁エリアに近付くにつれ、オークの数が増えていく。

彼等もリッチから逃げているので、リッチから離れればオークの数が増えるのは道理だった。


「行きはよいよい帰りは怖い」


立ちはだかるオークの攻撃を避け、その巨体を潜り抜けてレグニルスは土壁エリアを目指す。

幸いリッチの移動速度は速くないので、この時点でリッチとの距離を数メートルは離していた。


しかし、リッチはレグニルスの逃亡を許していない。

追い付けない事を察したリッチは魔力を杖に集め、魔法によりレグニルスを攻撃しようとする。


「悪いけど、それはさっき見た!」


逃げるレグニルスは、リッチの魔力が地面を伝って襲って来る事を察知していた。

レグニルスも魔力操作スキルを所持しているので、ある程度は魔力を察知する事が出来るのだ。


地面を伝播する魔力を踏まないよう、ジグザグに走るレグニルス。

しかし、リッチの影の槍はレグニルスを狙った物では無かった。


「え、マジ?」


リッチの影の槍はレグニルスの周りにいた数十匹のオークに対し、槍というよりは針の一刺しといった傷を与えた。

攻撃としては明らかに意味の無い攻撃だが、注目を集めるという意味では効果的な一撃であった。


「ぐるる」

「ぶもおお」

「…なんという頭脳プレー」


針の一刺しにより、目の前の土壁から意識を強制的に移されたオーク。

その敵意の対象は近くにいる敵、レグニルスに集まっていた。


「これは不味い」


レグニルスはオークの間引きにより、格上種族であるオークと互角に戦えるまでにレベルアップしている。


しかし、それはあくまでも一対一での話だ。

数十匹のオークに囲まれた状態から生還出来る程の力は持っていなかった。


前方には棍棒を装備したオークが3匹に斧を装備したオークが一匹。

右にも棍棒装備のオークが4匹、左には棍棒装備が3匹に槍装備が2匹。

それらを前衛に、後方には弓を装備しているオークが控えていた。


背後は空いているが、そちらにはリッチがいる。

完全に包囲された形のレグニルス。


死。

その絶望感がレグニルスの心を支配していた。


しかし、勝利の女神は彼を見捨てない。


「…これで貸し借り無しだぞ」


何時もの凛とした声では無く、何処か可愛らしい雰囲気の声が聞こえた。

そして、その声と共に数匹のオークの首が落ちる。


「遂にデレた?」

「その言葉の意味は、首を落として欲しいということか?」

「いえ、何でも無いです」


可愛らしい声から一転、何時もの凛とした声に戻ってしまう姫。

しかし、その声に安心してしまうレグニルス。


「でも、大丈夫なんですか?」

「何がだ?」


何時の間にか足元に来ていた姫に話しかけるレグニルス。

先程までの絶望感は既に無く、何処までも行けると確信出来る希望がその胸にあった。


「いや、集団戦は苦手でしょ」

「ふん。確かに先程までの私は集団戦が苦手だった。どうしても耳の切れ味が鈍ってしまうからな」


アサシンラビットは一対一の暗殺に特化した種族だ。

素早く動く機動力と、名刀以上の鋭さを誇る耳。


その一撃は格上の敵でも斬り裂くが、欠点もある。

彼等の耳は繊細な鋭さの上に成り立っている為、次の敵を斬り裂く事が出来ない種族でもあるのだ。


「先程まで?」

「ステータスとやらを確認して見ろ」


何処か自慢気な姫を訝し気に見つめながら、レグニルスは姫のステータスを確認してみる。


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基本情報

名前:(未設定)

種族:ジェノサイドラビット (種族ランクC アサシンラビットより進化)

性別:女

年齢:16

階級:女王

合計レベル:49

種族レベル:1 (種族係数5)

職業:なし

特別職:【女王】レベル11、【姫騎士】レベル10、【ダンジョンモンスター】レベル2、【暗殺兎】レベル21


保有スキル

基本スキル:なし


固有スキル:

【高速機動】レベル5

【身体能力強化】レベル3

【斬撃強化】レベル4

【迷宮加護】レベル1

【生活魔法】レベル1 (New)

【魔力回復力向上】レベル1 (New)

【再生】レベル1 (New)

【カリスマ(クラスB)】レベル1 (New)

【魂の系譜】(New)


種族特性:

一対一に特化したアサシンラビットから進化し、継戦能力が向上した種族。

【生活魔法】により脂で鈍った切れ味を回復(洗浄)し、敵を斬り続ける事が出来る。

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「あれ、進化してる?」

「ふふふ」


色々と進化していた。

レグニルスが以前確認した時は、姫はジェノサイドラビットなどと言う凶悪な種族では無かった。

また、階級や特別職【姫】が【女王】に変化していた。


「進化した我が力、刮目して見るが良い」

真面目な話(?)が続いてる影響か、無性にメイドネタを挟みたい今日この頃。

あと2~3話で今の話が終わるので、その後はメイドネタ!


その前にいい加減、姫様の名前を考えなければ。

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