表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/38

EP30 魔境大乱 ヨミガエリシ命④

視点がころころ変わります。構成が下手で申し訳ないです。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



ああ、何故こんなに苦しい思いをするんだ。


その存在は常に苦しんでいた。

終わることのない苦痛、救われないことが確定している未来。

過去の栄光は消え去り、残るのは後悔と絶望のみ。


そして、絶望しても逃げることが出来ない現実。

その魂は終わることのない痛みに苦しんでいた。


正確には終わりがあるが、苦しんでいる魂にとっては永遠。


しかし、苦しむ魂にも救いはもたらされる。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



オークと対オーク同盟の闘いが、静かに始まろうとしていた。


両者はアサシンラビット村(現オーク村)の境で対峙している。

村に陣を構えたオークに対し、対オーク同盟は正面からオークと睨みあっていた。


オーク70匹に対し、対オーク同盟は総勢160。

数の上では対オーク同盟が有利だが、その内訳はコボルト50匹、ゴブリン50匹、フォレストウルフ30匹、アサシンラビット30羽となり、総合的な戦力はオークの方が勝っていた。


「なかなか壮観ですな」

「我等が種族の垣根を超えて集うのは、滅多にありませんからな」

「それこそ100年に一度あるかないかであろう」


対オーク同盟の最後尾、そこでフォレストウルフとアサシンラビットの王は全体を俯瞰していた。


本来であれば最前列に立ち、真っ先にオークの陣へと切り込みたい一匹と一羽。

しかし、コボルトとゴブリンの自分達の個体数を間引きたい事情や、オークの防備が想定よりも固い事が彼等を最後尾に配置させていた。


「本来であればオークの村に忍び込み、暗殺により奴等の頭数を減らしたかったのですが」

「ああも警戒されては、アサシンラビット殿も侵入は不可能ですか」

「暗殺程度では勝敗は覆らないと油断しておると思ったのですが」


王の目の前に広がるオークの陣は隙間なく木製の柵で囲まれ、その外側を空堀にて囲っていた。

柵の向こうでは完全武装のオークが待ち構えており、暗殺が得意なアサシンラビットでも侵入を躊躇する警戒レベルである。


オークがここまで防備を固めたのは、アサシンラビットによる暗殺を警戒しているからだ。


この戦いにおいて、暗殺では勝敗は覆らない。

オークも、そして対オーク同盟もそう認識している。


アサシンラビットの暗殺は強力ではあるが、暗殺出来る数に限りがある。

多くとも20匹、少なければ10匹程度の暗殺が関の山だろう。


そして、暗殺に参加したアサシンラビットも無事では済まない。

上手くいったとしても、オーク20匹とアサシンラビット30羽。

単純な引き算だが、残るのはオーク50匹とコボルト50匹、ゴブリン50匹、フォレストウルフ30匹。

種族格差を考慮すれば、オークの勝利は揺るがない。


そんな戦力差の闘いにおいて、オークが暗殺を警戒する理由。

それはオークの群れの構成にある。


オークは総数としては70匹だが、全員が戦闘要員では無い。

群れの中には次代を担う子供が15匹程含まれていた。


オークは他の種族ランクCの中では多産ではあるが、子供が全滅しては群れとしての世代交代が上手くいかなくなる。


彼等はある事情により、子供を多数失っていた。

だからこそ、オークは群れとしての未来を守る為、子供を暗殺されるのを恐れて防備を固めたのだった。


「それでは、このまま予定通りに?」

「うむ、計画通りに攻める」


フォレストウルフとアサシンラビットの王が計画した戦法。

それは、至極単純な方法だ。


コボルトとゴブリンがオークの陣を攻め、オークの注意を引く。

その隙をアサシンラビットが突き、生じた混乱をフォレストウルフが拡大させる。


愚策と言われる戦力の逐次投入だが、対オーク同盟の勝算は元々低い。

少しでもオークに出血を強いる為、この作戦は決行されようとしていた。


「しかし、敵の防備が思ったより固いな。予想以上に敵は陣内に集中しておる」

「敵を釣り出し、そこで仕留めたいですな」


戦場に集う数多の種族。

しかし、それぞれの種族には違った思惑があった。


多産であり成長が早いコボルトとゴブリンは個体数の間引き。


奇跡が起こってオークが全滅したとしても、植物や植物を食べている昆虫が主食の彼等の食糧事情は厳しいままだ。

そのどちらもオークが既に荒らしており、回復までには時間がかかる。


食糧危機が始まる前に個体数を減らし、食糧危機を乗り切る。

やがて食糧事情が改善すれば、多産である彼等の種族は瞬く間に個体数を回復させ、依然と同様の生活に戻れるのだ。


フォレストウルフも食糧事情は厳しいが、競合種族であったアサシンラビットの個体数が減っているので、現時点では致命的な危機は発生していない。

そして持ち前の機動力があれば、オークが食い荒らしていない地に移動する事も可能だった。


対オーク同盟に参戦した理由も恩を返す他に、オークとアサシンラビットの個体数を少しでも減らしたい思惑もあった。

この両者の個体数が少しでも減れば、競合相手の弱体化に繋がるからだ。


勿論、同盟相手であるアサシンラビットに対して不義理を働く気は無いが。


アサシンラビットの望みは村の奪還だが、対オーク同盟に参戦している個体だけで達成するべき目標では無い。


既に王の娘が村に残っていた非戦闘員を率い、村を脱出している事を彼等は把握している。

そして姫が何者かと共闘し、オークの間引きしている事も把握していた。


その間引きもオークが村に籠った事で、最近は上手くいっていない。


だからこそ彼等はオークの村に強引に攻め入り、オークの個体数を減らしたかった。

個体数を減らせれば、後は姫が何とかしてくれる。

そんな思惑が対オーク同盟に参戦したアサシンラビットにはあったのだ。


そして、対オーク同盟と向かい合うオークの思惑。


こちらは単純に、この地で再び繁栄するという物。

だからこそ、次代の為にも子供を守る必要があった。

対オーク同盟の進軍を事前に察知していたので、迎撃の軍を出す事は可能だった。


しかし、軍を出したことで手薄になった村で、子供を暗殺でもされれば彼等の未来は閉ざされてしまう。

子供はこれからも生まれてくるが、世代の断絶は避けたかった。

子供の暗殺というリスクを考慮し、オークは村での籠城を選択したのだ。


各種族の思惑が混じり合った決戦は、こうして始まったのだ。


「かかれぃ!」


フォレストウルフの王の号令により、前線のコボルトとゴブリンがオークの陣に向けて突撃を開始する。


「ぶもぉぉ!」


それに対応するように、オークの陣からも叫び声が響く。

その叫び声が合図となり、オークの陣から投石が始まった。


オークの怪力で投げられる石の射程は長く、走るコボルトとゴブリンの上に降り注ぐ。


石を投げる。

その単純な動作故に、非戦闘員も参加しての投石は激しく、次々とコボルトとゴブリンは倒れていく。


しかし、仲間が倒れてもコボルトとゴブリンの足は止まらない。

やがて彼等は投石の雨を通り過ぎ、オークの陣の傍まで後一歩という所まで迫った。


「ぶもぉぉ!」


そして、再びオークの陣から叫び声が響く。

すると雨の様に続いた投石は止み、代わりに一部の柵が開きオークの戦士が現れる。

オーク戦士団が出陣して来たのだ。


オークの戦士達を前にしても、コボルトとゴブリンの足は止まらない。

目の前のオークを打倒せんと突撃するが、格上のオークには通用しない。


コボルトとゴブリンは種族ランクEであり、種族ランクCのオークとは天と地ほどの差があるのだ。

それを証明するように、オークが棍棒を振れば複数のコボルトとゴブリンがミンチとなった。


しかし、仲間の死を前にしても、彼等の歩みは止まらない。


群がるコボルトとゴブリンを吹き飛ばそうとオークが棍棒を振り上げた時、一つの石がオークの顔にあたった。


それはコボルトの投石だった。

投げた石が小さい事、投げたコボルトが非力だった事、それらの理由によりオークにダメージは無いに等しい。

しかし、当たった場所が顔だった為にオークは本能的に目を閉じてしまった。


それはこの戦場では致命的な隙となる。


「よくやった!」


オークの隙を生まれながらの暗殺者は見逃さない。

コボルトが投げた石から眼球を保護する為に閉じられた瞼は、閉じられたまま二度と開かれる事は無かった。


瞼が閉じられた一瞬の間に、アサシンラビットがその首を落としたからだ。


「このままオークの気を引け!」


オークの首を落としたアサシンラビットは、命を賭してオークの気を引くコボルトとゴブリンを激励する。

本来であれば安全にオークの気を引いて欲しかったが、間引きを目的としたコボルトとゴブリンは危険を顧みずオークに突撃していく。


「・・・命知らず共が」


そんなコボルトとゴブリンの奮戦を背後から見守るアサシンラビットだったが、すぐさま隙を見せたオークの首を落とすべく自慢の耳を振るうのだった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


苦痛に苦しんだ魂にとって、救いとは一時的なモノだった。

救われはしたが、それは苦痛から『逃げた』だけだからだ。


再誕という救いは得た。

しかし、生という一時的な逃走が終われば、再び死という苦痛が待っている。

そう、その魂にとって死とは安らぎでは無く苦痛となっていた。


死が苦痛となった原因。

その理由は前世にあった。


何故そうなったのか、既にその魂は覚えていない。

覚えているのは、神から与えられた『力』により輝かしい人生を送っていたこと。


しかし、永遠に輝けるモノなど存在しない。

与えられ力により輝いていた魂は、その輝きを失い闇へと落ちたのだ。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


一羽のアサシンラビットが森を駆ける。

その可愛らしい見た目とは相反し、禍々しく光るペンダントを首に下げていた。

禍々しい光を無視し、アサシンラビットが森を駆けるのには理由がある。


それは、禍々しく光るペンダントこそが彼等の一族を救うアイテムであるからだ。


アサシンラビットがペンダントを受け取ってから2時間。

彼はオークと対オーク同盟の決戦の地を目指し、ひたすら森を駆け続ける。


既に決戦は始まっている。

故に彼の足は止まることなく動き続け、呼吸が苦しくなっても止まることは無い。


全ては、一族の勝利の為に。


アサシンラビットに禍々しく光るペンダントを授けたのは、ダンジョンマスターであるレグニルスだ。


レグニルスとアサシンラビットの姫は、魔境の異変からオークとの決戦が近いと判断した。

特に行方不明だった父の行方が判明した姫としては、すぐさま戦場へと赴きたかった。


しかし、ダンジョンと決戦の地であるアサシンラビット村の間にはそれなりの距離がある。

アサシンラビットの足であれば、直ぐにダンジョンを発てば決戦には間に合うかもしれない。


だが、戦場への移動で多くの体力を使い、戦力にならない可能性が高い。


この為、アサシンラビット達は援軍に出る事を躊躇した。

そんなアサシンラビットに手を差し伸べたのがレグニルスだ。


レグニルスはダンジョンマスターである。

そして、ダンジョンマスターには、ダンジョン内であれば自由に転移により移動出来る権能があった。


「つまり、我等の村をお前のダンジョンにすると言うのか?」

「その通り。そうすれば、ここから転移でタイムラグなく戦場に移動出来る」


村をダンジョンにするというレグニルスの提案を、姫は直ぐに受け入れる事は出来なかった。


提案を受け入れれば、恐らくは援軍としてオークとの決戦に力を振るえるだろう。

勝敗までは予測出来ないが、仮にオークに勝利したとしてもダンジョンとなった村はレグニルスの支配下に置かれてしまう。


「村がダンジョンのエリア内になるのが気になるなら、取り戻した後に俺から買い戻せば良い」


躊躇するアサシンラビットに、レグニルスはそう追加提案した。

アサシンラビット達の目的は、村を奪還して生活を再建すること。

その目的から考えれば、村がダンジョンエリアのままというのは受け入れ難いことだろう。


「…かかった経費の三割増しで買い取ってやる」

「商談成立」


持ち前のプライドの高さから、アサシンラビットの姫は三割増しで村を買い取ることを約束した。


「それで、ダンジョン化は直ぐに出来るのか?」

「流石に直ぐには無理、遠隔地だからね」


ダンジョンエリア拡張は行ったことのあるレグニルスだが、遠隔地のダンジョンエリア化は未経験。

しかし、ダンジョンコアのヘルプ機能を使えば方法など直ぐに分かる。


「ええと、ダンジョンエリア拡張 /? と」


早速リモート操作によりダンジョンコアにアクセスし、エリア拡張のヘルプを呼び出す。

すると遠隔地のエリア拡張方法がレグニルスの脳内にインプットされた。


「なるほど、ダンジョンコアの欠片をエリア化する場所に設置する必要があるみたい」

「…時間が無いというのに、時間がかかる方法なのだな」

「いや、一羽が先行すれば後は体力使わずに戦場に移動出来るから」


こうしてレグニルスはダンジョンコアの欠片を用意し、一羽のアサシンラビットに託した。

託されたアサシンラビットはすぐさまダンジョンを出発、戦場へと駆けたのだった。


ちなみに、出発前にこんな会話があった。


「…別に村をダンジョン化しなくとも、村の近くをダンジョン化すれば良かろう」

「いや、そうだけど…」

「心配せずとも、かかった経費の三割増しの金は支払ってやる」


将来の支払いを心配するレグニルスと、村がダンジョンの支配下に入らない方法を思いついた姫。

決戦前なのだが、両者にはどこかリラックスした空気が流れていた。


「見えた!」


そして遂に、ダンジョンコアの欠片を託されたアサシンラビットが戦場に到着する。


彼の目に映るのは、ほんの少し前まで自分達が暮らしていた村に陣を構えるオーク達だった。

そして、そんなオーク達に正面から闘いを挑んでいる対オーク同盟と、同盟の一翼を担う同胞が目に入る。


生きていてくれた。

そんな思いがこみ上げるが、彼は己の感情を殺し任務を優先する。


戦場近くの地に降り立つと、ペンダントとして首から下げていたダンジョンコアの欠片を地面に突き刺す。

地面に突き刺さったダンジョンコアの欠片は、より禍々しさを増して光った。


その光は戦場に立つ全ての者の注目を集め、一時的にだが闘いを止める程である。


しかし、注目を集める程の光を放ったのは数分であった。

光は徐々に薄れていき、やがてダンジョンコアの欠片は光を失う。


力を失った訳では無い。

宿した力を、大地に移し終わったのだ。


「よくやった」

「…ありがたき幸せ」


命を削りながら森を駆け、一族の命運を繋げた一羽のアサシンラビット。

力尽き地面に倒れ込む彼に、一族の姫はたった一言の労いの言葉を送るのだった。


「…ここからは、こっちの仕事だな」


力尽きたウサギの姿に、何か感じるモノがあったレグニルス。

当初はアサシンラビットを転移させるだけのつもりだったが、こみ上げる感情がソレを許さなかった。


「なるべく広範囲を」


レグニルスは手持ちの資金が許す限り、広大な範囲を己の支配下におく。

一文無しになってしまうだろが明日は給料日だ。

気にする必要は無い。


「何かカッコいいこと言えれば良いんだけど。何処かの赤い弓兵の固〇結界みたいに」


某赤い弓兵を思い浮かべながら、レグニルスは戦場の景色を一変させた。

オークの陣を中心に土壁がせり上がり、オーク集団は小さい集団に分断されてしまう。


「さて、ここからはいつも通りだ」

「無理をしおって」

「そこのウサギ程じゃ無いさ」


こうして、オークと対オーク同盟の闘いは第二幕へと移った。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


闇に落ちてからは地獄だった。

借り受けた力の代価を求められ、その支払いが出来なかったのだ。


代価を求めた神々は、落ちた魂が支払い出来ないと判断すると、躊躇なくその魂を地獄へと落とした。


罰の為では無い、労働の為だ。

落ちた魂は地獄での労働を通し、神々から借り受けた力の対価を支払っていた。


しかし、地獄での労働には終わりが無かった。


安い賃金に、劣悪な労働環境。

地獄の管理者に罵倒され、地獄の亡者の悲鳴に心が削られる日々。


落ちた魂は願っていた。

負債の完済を、もっと楽な労働を。


そして、そんな落ちた魂に救いの手が差し伸べられた。

現世への転勤である。


新天地での生活は、それまでの生活とはまるで違った。


縛りがキツかった業務時間から解放され、何事にも縛られないコアタイム無しのフレックス制になり、達成しなければ激しく罵倒されたノルマは撤廃された。


しかし、だからと言って負債が無くなった訳では無い。

もしも現世で命を失うことになった場合、負債を抱えたままでは地獄に逆戻りだからだ。


その為、三度目の生を得た落ちた魂は業務に熱心だった。

自発的に激務をこなし、地道な営業活動にも精を出した。

そして一度計上した数字は逃さない。


そう、落ちた魂は獲物を逃さないのだ。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


闘いは一方的な展開となった。


「後ろだ!」


目の前のアサシンラビットに気を取られたオークに対し、背後から斬りかかるレグニルス。

卑怯な行為ではあるが、まだまだオークの方が格上。

強い相手に対しては当然の選択であった。


「ぶもぉ」


背中を斬り裂かれたオークは呻き声を上げるが、それ以上の行動は出来なかった。

無防備な喉をアサシンラビットに斬り裂かれ、命の炎を永遠に消したからだ。


「順調だな」


レグニルスが辺りを見渡せば、土壁に囲まれた小さな空間が目に入る。

そこに両足で立つオークは存在せず、全てのオークが地に倒れていた。


「姫さんも元気にやってるし」


別の戦場を求め土壁を登れば、アサシンラビットの姫がオークの首を落とす光景が目に入る。


対オーク同盟はオークを分断、各個撃破を続けていた。


辺りを見渡せば、3匹のフォレストウルフに囲まれたオークが目に入った。

レグニルスは土壁の上を縁石の上を歩く要領で移動し、囲まれたオークの背後に移動する。


「恨んでくれるなよ」


愛剣を構え、レグニルスはオークの後頭部や首の部分を狙い、土壁の上からオークに飛びかかった。

跳躍したレグニルスの愛剣は、無警戒だったオークの首を貫き通す。


そして倒れ込むオークから素早く剣を引き抜き、レグニルスは辺りを警戒した。


「無双出来てるけど、思い描いてた無双と違うんだよな」


辺りにオークがいないことを確認したレグニルスはそうぼやくが、背後からの不意打ちを今は止めるつもりは無い。


ゲームやアニメの主人公のように、大軍を相手に正面から無双したい欲望はあった。


しかし、今はアサシンラビットの命運がかかった決戦の最中だ。

レグニルスは個人的な望みを押し殺し、全体の勝利を求めたのだ。


「これは勝ったかな?」


レグニルスが生み出した土壁により、オークは分断され各個撃破されている。

全てのオークを土壁で囲ってはいないが、半数以上のオークが土壁に囚われていた。


徐々に数を減らしていくオークを前に、レグニルスが勝利を確信し始めた頃にソレは現れた。


劇的な登場などでは無く、気が付けばそこにソレはいたのだ。


最初にソレに気が付いたのは、オークの首を狙っていた1羽のアサシンラビットだった。

間合いを計り、オークの真横から飛びかかろうとした時には、ソレはオークの背後に立っていた。


ボロボロのローブと目深にかぶったフードにより、ソレの全容は分からない。

しかし、身の丈160センチと細い体である事はローブの上からでも見て取れる。


そして特質するべきは、その手に持つ杖だろう。

持ち主の身の丈と変わらない長さを持つ杖は、その上部に人の拳大程の宝玉が埋め込まれているだけのシンプルな作りだ。


しかし、埋め込まれている宝玉は怪しく光り、素人目にも危険物である事が分かる代物だった。


そんな杖を右手に持ち、空いている左手でオークの背中を触るソレ。

ただ触れるだけの、攻撃でも何でも無い行為。


しかし、触れられたオークは膝から崩れ落ちた。

命のやり取りを行うアサシンラビットには直ぐに理解出来た。

崩れ落ちたオークは、既に事切れているという事実を。


触れただけでオークの命を奪ったソレは、辺りを見渡し静かに笑う。

そして、静かに宣告した。


「さあ、収穫の続きだ。全てを私に差し出せ」


その宣告は物理的な声では無く、決戦の地にいる全ての生物の魂に語り変える宣告であった。


正面からの正攻法で始まった第一幕、レグニルスにより各個撃破となった第二幕に続き、ソレによる最終幕が始まる。


テンプレ的展開でボス登場回。

やはりモンスターの移動の影にはボスの姿あり。


さて、長かった魔境大乱もいよいよクライマックス。

不意打ちしかしてない主人公にも、主人公らしい活躍があるはず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓面白かったらクリックお願い致します。

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ