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EP28 魔境大乱 ヨミガエリシ命②

申し訳ないです、予約投稿の登録を忘れてました。

※2019/1/14 誤字修正


「さて、会議を始めようか」


会議。

それは組織において、人と人との意思を伝達する手段である。

昨今では無駄の象徴として扱われる事も多いが、古来より続く情報の共有、意思決定方法であった。


そんな会議がダンジョン内のファミレスで開催されようとしていた。


「議題は事前に話していた通り、アサシンラビット村奪還について」

「紙の束を渡された時はどうしようかと思ったぞ」

「スイマセン、昔の癖で」


レグニルスは転生者で元会社員だ。

会社員時代の癖で会議資料を作成し、アサシンラビットの姫や爺にプリントアウトした資料を手渡していた。


「我等を馬鹿にしているのかと思ったぞ」

「全くじゃ、我等に人種の真似事をさせるとは」

「スイマセン。人種差別反対、ダイバーシティ大事」


そう、レグニルスが紙の資料を手渡した相手はウサギ。

色々な事を耳で器用に行うウサギ達だが、紙の資料を読む程の器用さは持ち合わせていなかった。


ちなみに、ダイバーシティとは某お台場にある商業施設では無い。

人種や性別、年齢、障害の有無、宗教、価値観、人は色々な違いがあるが、そういった多様性を尊重して各人の能力をフルに発揮出来る組織や社会を作ろうという考え方である。


マンガやラノベ風に言えば、いろんな個性を集めてチームの総合力で戦う、とうったところか。


「でも、人種の便利さが分かったんじゃないですか?」

「特に思っていないが?」

「・・・擬人化フラグはまだ立たないか」


アサシンラビットの姫が存在進化を目指していると耳にして以来、レグニルスは姫の擬人化を待ち望んでいた。

オタクの性である。


「ダンジョンマスター殿、話を進めてくれぬか?」

「そうですね、始めましょうか」


そう言ってレグニルスは出席者の面々を確認する。

真剣な顔をしているので肯定と受け取り、レグニルスは会議を開始する。

出席者はレグニルス以外全員ウサギなので、真剣な顔というのはあくまでレグニルスの主観である。


会議の出席者はレグニルス、アサシンラビットの姫と爺の他、戦士階級のアサシンラビットと非戦闘員を取り纏めている女性のアサシンラビットの計1人と4羽だ。


「まずは目的の確認だけど、これはアサシンラビット村の奪還。より正確に言えば、村を奪還して生活を再建する、で良いんですよね?」

「ああ、間違いない」


レグニルスの問いに答えるアサシンラビットの姫。

彼女が目指すのは、群れがこれまで通りの生活を取り戻す事。

その為、奪還したが村で生活出来ませんでした、では困るのだ。


「了解です。それじゃ目的も確認できたし、具体的な課題を確認していきましょうか」


目的は共有化出来たが、そこに至るには課題が山積みである。


まず、一番の問題はどんな課題があるのか誰も理解出来ていない事だろう。

末端の人員なら別だが、組織を束ねる者達が理解出来ていないのは問題であった。


「とりあえず、そもそも論なんだけどオークは制圧したウサギの村で生活出来るの? 色々とサイズが違うと思うんだけど」


課題の洗い出しの前に、レグニルスはそもそも疑問に思っていたことを解決する事にした。


オークは3メートル近い身長に、横にもデカい立派な体格を誇っている。

対してアサシンラビットは、地球で良く見るウサギと変わらない体格だ。

単純に考えれば、ウサギの村で力士やプロレスラーが生活するようなモノである。


「ああ、豚鬼共も我等の村で暮らしたかった訳では無く、我等の村がある土地が欲しかったのであろう」

「立地の問題ってこと?」

「ダンジョンマスター殿、我等の村は『魔力溜まり』の上にあるのです」


レグニルスもオークがウサギ小屋で生活しているとは思っていないが、流石にそれは本当に違うようだ。


「我等の食糧は物理的なモノもそうだが、魔力も必要な事は知っているか?」

「魔核に存在進化の為の魔力を貯めるというのは聞きました」


レグニルスは、かつて素振りをしながらコーチから教えてもらったことを思い出す。


モンスターは魔核を持ち、そこに魔力を貯める。

貯まった魔力を元にモンスターは存在進化を行い、より上位の種族へと進化していくのだ。


「うむ、魔力は存在進化の為に貯めるというのもあるが、日々の生活の為にも使用される」

「儂等の耳が名刀並みの鋭さを持つのも、木々を自在に駆けるのも魔力により肉体を強化しておるからじゃ」

「魔力が無い我等は普通のウサギと変わらんのだ」


まるでジ〇リに出てくる豚だな、とレグニルスは思った。

そして、オークが『魔力溜まり』という立地に拘った理由も同時に理解出来た。


「つまり、魔力が切れたオークはタダの豚ってこと?」

「その通りだ。そして奴らは種族ランクC、日々の生活に使用する魔力量は我等よりも多い」

「だからこそ、魔力が豊富なアサシンラビットの村が欲しかったのか」


納得である。

わざわざ家が小さいウサギの村を制圧したと聞いた時、レグニルスには理由が納得出来なかった。


しかし、姫と爺の説明を聞けば納得出来る。

オークは自分達の生活を送るのに必要な、戦略物資の生産地を奪取したかったのだ。


「もっとも、上位種族は自前で大量の魔力を精製出来るから魔力溜まりは不要だろうが」

「アサシンラビットやオークは精製出来ないの?」

「精製出来るが、戦闘を行えばマイナスだ」


魔核は魔力を貯蔵する他、魔力を生み出す能力もある。

しかし、生み出す魔力は極僅か。

戦闘などで魔力を使用すれば、生み出した魔力量以上に魔力を使用してしまう。


その為、モンスターは必要な魔力を効率的に収集する為、魔力が濃い地に生息している事が多い。


「そういえば、魔核の魔力が尽きるとどうなるんだ?」

「感覚的には、腹が空いた感じに近い。それと魔力が無いのだから、当然力も出ない」

「種族によっては極端に魔力が欠乏すれば命を落とすこともあるのじゃが、普通は魔力精製量と生命活動に必要な分は吊り合っているので滅多にないケースじゃな」


通常、魔核が1日に生み出す魔力を10とすれば、モンスターとして1日に最低限必要な魔力は5か4程度だ。

そして残りの魔力は戦闘などで使用した魔力の補填、存在進化の為に貯蓄される事になる。


「もっとも、モンスターも人種と同じように周りの魔力を取り込めるから、滅多に魔力欠乏に陥ることは無い」

「それじゃ、なんでオークは魔力溜まりを制圧したんだ? そこまでしなくても良いような気がするけど」


生きるのに必要な魔力を精製出来、自然からも吸収出来るのであれば、わざわざ魔力溜まりを制圧する必要性は無いであろう。


これが現代日本の原油などの資源であれば、生命活動以外の経済活動に必要なので制圧したと考える事が出来る。

しかし、レグニルスには経済活動するオークなど考えられない。


「それこそが、豚鬼が豚鬼である由縁よ」

「オークは身体能力、戦闘能力などは十分に種族ランクCですが、魔力精製能力は種族ランクDの我等と変わらんのじゃ」

「つまり、自前で用意出来る分じゃ足りないから、外部から魔力を手に入れる必要がある?」

「ああ、奴等は足りぬ魔力、そして脂肪の鎧を維持する為に喰い続ける悪食なのだ」


それは単純な理屈だった。

足りないなら他所から持ってくる。

生物であれば誰もが自然と行っている行為である。


「そうだ。そして、この辺りは豚鬼が元々住んでいた中心部よりも、魔力濃度が低いからな。魔力溜まりの確保は必須だろう」

「そうなると、奪還戦は厳しい戦いになりそうだな」


オークにとって、アサシンラビットの村は生きていく為に必要な『魔力』を生み出す、生きる為に必要な土地。

返してください、と言われてもオーク達は納得しないであろう。


「中東問題並に面倒な事になりそうだな」

「中東問題?」

「いや、こっちの話。それじゃ、具体的な話を進めようか」


話しを元に戻し、レグニルスは本来の趣旨を話し始めた。

真面目な空気が流れるが、絵面としては人間1人にウサギが4羽なのでとても真面目な会議には見えないが。


「それで、敵の状況と味方の状況は?」

「それは私から報告します」


と、これまでは姫と爺の陰に隠れていた戦士階級のアサシンラビットが前に出る。

彼(彼女?) は群れに残っている貴重な戦士階級を取り纏めている実力者であり、今回の会議には戦士階級の代表として参加している。


「オーク共は我等の村を完全に制圧、現在木々を伐採して村を開拓中です。また、戦士階級を複数グループに分け、それぞれ食糧確保の為に村の外で狩りを実施しています」

「そのグループの内の一つが、家のダンジョンで屯しているオーク達か」


現在、マンション型ダンジョンの前庭はオークに占拠されていた。

占拠されているとは言っても、24時間占拠している訳では無い。

彼等は前庭に設置されている噴水を水飲み場として利用し、一時的な休憩所として前庭を占拠していた。


「危なくて外に出れない以外の実害が無いから、完全に放置してるけど」


24時間占拠されている訳では無いが、下手に外に出て格上のモンスターとエンカウントするリスクを冒す程、レグニルスは蛮勇ではない。


「ダンジョンマスター殿のおっしゃる通り、オーク共はここを水場とし、遠征の為の補給地としています」

「それで、敵の数は?」


姫が戦士階級代表のアサシンラビットに詰め寄る。

武闘派の彼女にとって、ダンジョンが占拠されているか、いないかなど興味が無い。

興味があるのは、彼女が屠るべき敵の数だけなのだ。


「村に約40、残りのオークは狩りに出ているので正確には把握出来ていませんが、50程度はいるようです」

「合計90から100か。格上なのに相手の方が多いとか罰ゲームだ」


戦士階級代表の報告に真っ先に反応するのはレグニルス。

彼は会議参加者ではあるが、直接の当事者では無いので軽く考えられるのだ。


しかし、当事者であるアサシンラビットは違った。

彼等は50羽ほどの数がいるが、大半は非戦闘員。

そんな彼等を戦力化したとしても、彼等はオークの半分にも満たない。


「・・・父上達の消息は?」

「不明です。目下捜索中ですが、手掛かりも見つかっていない状態です」

「・・・そうか」


しょんぼりとする姫に、やはり親が心配なんだな、とほっこりするレグニルス。


だが、姫はしょんぼりしているが、別に親の心配はしていない。

彼女は単純に、対オーク戦の手駒が増えない事に対してしょんぼりしているのだ。


なにしろ、彼女の父親は村の戦士階級の大半を率い、オークの別動隊(陽動部隊)の迎撃に出ている。

父親が率いている部隊と合流出来れば、オークとの闘いが少しはマシになる可能性だってあるのだ。


「そうなれば、オークとの戦は我等だけで行うしかありませんな」

「爺、流石にソレは無謀というモノだぞ」

「姫様から無謀という言葉が聞けるとは、長生きはするものですな」


珍しくネガティブな言葉を発した姫に対し、爺はカラカラと笑うのだった。


爺は姫を馬鹿にしたつもりは無く、単純に嬉しかったのだ。

彼女は武人として個の強さを追求するが、その反面群れの事には無頓着だった。


そして、今までの彼女であれば敗北を承知でオークと戦っていただろう。

彼女が今、無謀、と発言したのは群れの安全を考慮しての言葉なのだ。


「でも、爺さんの言うように何かしらの行動は必要だろう。このまま、ここで生活していくと言うなら歓迎するけど」

「・・・お前の世話にはならん」


仏頂面でレグニルスの提案を却下する姫。

一族の姫として、彼女は他種族に貸しを作る訳にはいかなかった。


ましてや相手はダンジョンマスター。下手に貸しを作って、ダンジョン防衛の為の捨て駒にされてしまう可能性もあるのだから。


「でも、食糧とか大丈夫なの? 必要なら追加で援助するけど?」

「・・・どうなのだ?」


鍛錬に励む姫は群れの状況を正確に把握出来ていない。

だからレグニルスからの確認に答える事が出来ず、そのまま非戦闘員を束ねるアサシンラビットに回答を丸投げするのだった。


「農地をお借りして栽培を進めていますが、やはり絶対量が足りません」

「・・・こいつからの援助は必須ということか」

「こいつ呼ばわりは酷いよ」


現在、アサシンラビットはレグニルスから援助してもらった食糧で生活している。

しかし、援助を良しとしない姫の意向もあり、彼等はルーフバルコニーの一角を借り受け、自給自足を目指して農作業を実施していた。


チート効果により農作物の育成は順調だが、群れ全体の胃袋を満たせるほどの量は収穫出来ていないのが現状だった。


「まあ、それについてはこっちから提案がある」

「提案だと?」

「こっちも嬉しい、アサシンラビットも嬉しい。Win-Winの提案さ」

「その、うぃんうぃんという言葉は分からんが、提案は聞いてやろう」


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


その日もオーク達は普段通り、ダンジョンの前庭に来ていた。

彼等はここを安全な水場と認識しており、2~3日程村から離れての狩りの際は必ず水の補給に来ている。


水の補給に来るのは彼等だけで無く、他のオーク達の狩りグループも利用していた。

ダンジョンはオーク達の巡回ルートに組み込まれているのだった。


しかし、安全な水場も今日で終わる。

突然地面が隆起し、オーク達を分断してしまったのだ。


「ぶも?」


何の前触れも無く、突然土の壁に囲まれたオーク達。

彼等が呆然としてしまうのも仕方ない。


しかし、それはオーク達にとって致命的な隙である。


土の壁に囲まれた、とあるオークは考えていた。

突然土の壁が出来た事に驚いたが、壁はせいぜい3メートル程。

頑張ればよじ登れる程度の高さだったので、これから仲間と合流するか、先に壁の外に出るか迷っていた。


そんなオークの背後に忍び寄る1羽のウサギ。

ウサギは間合いに入った瞬間、音も無く背後からオークに飛びかかった。


「ぐもぉ」


音も無く忍び寄り、相手に気が付かれる前に斬る。

まさに、アサシンラビットの名の通りの一撃。


しかし、相手は格上のオーク。

若い戦士の一撃では倒れ無い。


「隙あり!」


倒れるのを堪え、突如襲ってきたアサシンラビットに反撃しようとオークが振り返った瞬間。

オークの目の前に人が現れ、オークがそれを認識する前に手に持った剣を振りきった。


「やっと一体倒せた」


オークの目の前に瞬間移動したのはレグニルスである。

彼はダンジョンマスターの権能、ダンジョン内の転移移動を利用して、オークの目の前に突如瞬間移動したのだ。


「今までの二体は、止めは爺さんだったからな」


突然の奇襲に対応出来ず、オークは絶命していた。


「昔の偉い人は言った。1対100に勝てないなら、1対1を100回やれば言いじゃない、と」

「今の何処が1対1だったのだ?」


土壁の上から呆れた声が響く。

レグニルスが顔を向ければ、そこにはアサシンラビットの姫が呆れたようにレグニルスを見下ろしていた。


「……1対1で勝てないなら、2対1で勝てば良いじゃない?」

「そんなことより、約束を違えるなよ。魔核の売却益は折半だからな」

「大丈夫ですよ、家は信用第一ですから」


アサシンラビットとレグニルスが新たに結んだ契約。

それは、オークの間引きを共に行い、オークから得た魔核の売却益は折半するというもの。


レグニルスのメリットは、オーク戦をアサシンラビットと共闘出来ると言うこと。

まだ1対1でオークと戦える自信が無いレグニルスにとっては、このメリットは重要だ。

そして、オーク戦でレベルアップ出来るというメリットも見逃せ無い。


そしてアサシンラビットのメリットは、レグニルスのダンジョンマスターとしての権能により、オークと1対1の状況で戦えるということと、食糧購入の為の資金が手に入るという点だ。


もちろん、アサシンラビットもオーク戦によりレベルアップし、群れの戦力をアップしたい思惑もある。


両者の利害が一致した結果、レグニルスは前庭の地面を操作。

オークと1対1、いや、2対1で戦える状況を演出したのだった。


こうして、アサシンラビット村奪還の為の戦いは始まったのだった。



とりあえず村奪還編も本格稼働です。


そして、徐々にブクマが増えているのが嬉しいです。

エゴサーチしてたら、掲示板にちょっとだけ取り上げられてたし。

もっと頑張らなければ。


…予約投稿は忘れないようにしよう。

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