EP18 とあるメイドカフェの一日 あるいは ダンジョン防衛戦 Side M
週1更新なのに短めです。
今日もご主人様が来ないテーブルを磨くはれ。
彼女はとあるダンジョン内にあるメイドカフェに勤務するウサ耳メイドさんだ。
ちなみに彼女はハレでは無い、はれである。大事な事なので間違えてはいけない。
「今日もお客さん来ませんねー」
「住民が1人しかいないから」
カウンターで頬をつけてリラックスしている犬耳メイドさんのちょこと、キツネ耳メイドさんのあんず。
ちょこはカワイイ系、あんずはクール系を売りにしている、この店の主力メイドさんだ。
はれはまだまだ半人前なので、二人ともはれの頼れる同僚で先輩だ。
「お二人とも働いてください」
はれはそんな頼れる先輩がダレているのは好きではない。
二人のテキパキと働いている姿がはれは好きなのだ。
「働くと言っても掃除しかやることないよ」
「開店から既に3回は掃除している」
メイドカフェがオープンしてから既に4時間。
やって来たお客さんはゼロ。接客が主な業務のはれ達の仕事は無く、仕方なく床掃除やテーブル拭きなどを繰り返していた。
「暇~」
「暇」
せっせと働くはれを横目に、先輩メイドさんである二人はダラケきっていた。
獣耳と尻尾には力が無くしおれており、今にも干からびてしまいそうだ。
「働いてくださいとは言いません、しゃんとしてください!」
「はれは真面目~」
「誰も見ていない、問題ない」
今でこそだらけている二人だか、ちょことあんずは有能なメイドさんなのだ。
来店したご主人様、お嬢様に笑顔と癒しを提供する二人は後輩メイドさんであるはれの憧れだ。
「でも何時お客様が来るか分かりませんよ」
「住人いないんだから来ないって」
「そのたった一人の住人も貧乏性」
メイドカフェはテーブルチャージ料がかかる店が多い。
それは普通のカフェと比べて店員が多く、必然的に高くなる人件費をカバーする為の店側の知恵だ。料金や呼び方などのシステムは店によって違うが、マンション型ダンジョンにあるメイドカフェは1時間700円である。
1時間700円なので、2時間滞在するとテーブルチャージ料だけで1400円になる。
ちなみにお店によっては1ドリンクオーダー制だったり、テーブルチャージ+1ドリンクオーダーだったりとお店によって料金システムが違うので注意が必要だ。
そんな普通のカフェより高い料金がかかる店の為、レグニルスは週に一度しか訪れ無い。
それも1時間のみの滞在で、延長した事は数回しか無かった。
「まあ、うちの店はぼったくりだからね」
「実質的に運営費はタダ」
「タダじゃ無かったらお客さん誰も来ないのに、3人もお店に待機してないよね」
「あの、ココさんもいるので4人ですよ~」
だらけている二人、いや、友情を深めるメイドさん2人に真面目に掃除を続けるメイドさんが1人。
店内を見渡しても、メイドさんは3人しかいない。
「あれ、そういえばココちゃんは?」
「そういえば見かけない」
「ココさんはご主人様をお迎えにお散歩に行きました!」
ここで言うご主人様をお迎えにお散歩とは、店内にお客が少ないので店外に出て通行人などにチラシを配る営業活動の事を言う。
「・・・住人1人しかいない件について」
「普通の散歩」
「そんな事無いと思いますよ?」
猫耳メイドさんのココが営業活動に出かけたのか、それとも普通に散歩に出かけたのか。
それは誰にも分からない。分からないのだ。
「そもそも無理に営業なんてしなくても良いのに」
客が一週間に一度、一時間しか訪れ無いということは、逆に考えると週の内6日は完全に開店休業状態という事だ。
そんな店が週に数千円の売上で営業出来る訳が無い。
ではどうやって営業しているのか?
それは神様チートでは無く、神様の悪魔的錬金術の結果だ。
一般的に飲食店を出す場合、店の家賃、飲食物の原材料費、人件費がかかる。
このメイドカフェの場合、ダンジョンマスターであるレグニルスが設置した形なので家賃はタダだ。
次に原材料費だが、基本的に魔力を食材に加工しているので実質タダみたいな物だ。
最後に人件費だが、店員が神製ホムンクルスとは言え実は天界に居を構える天界の住民なので、ある程度の賃金が必要になる。
だが、彼女等の賃金はダンジョン運営費から出ている。
このダンジョン運営費はダンジョンが集めた魔力の売却益の半分が自動的にダンジョン運営費として徴収され、売却益の残りがレグニルスの収入となっている。
つまり、メイドカフェの運営にかかる費用は全てレグニルスが支払っているようなモノで、その上でテーブルチャージを支払っている彼はある意味ぼったくりに合っているのだった。
「でも、やっぱりお仕事した方が良いと思います」
はれもお客さんが来ない理由は承知している。
しかし、真面目なはれは店内にご主人様、お嬢様がいない光景を見ると悲しくなってしまうのだった。
「外部からお客様が来てくれているみたいですし、もしかしたらご帰宅頂けるかも」
「いやいや、冒険者のご主人様達は一階で苦戦中らしいから無理だって」
「今頃はパソコンと格闘中」
ダンジョン始まって以来の、外部からのご主人様が来ているのをはれは知っていた。
もしかしたらご帰宅頂けるかもと夢見ているが、それが叶わない事もはれは知っていた。
「なんだか悲しいです」
寂しい。
いつご主人様が帰宅しても気持ち良く寛げるよう、はれは店内の掃除に余念が無い。
週の大半は無為に過ごすことになるが、それでもご主人様の楽しそうな顔を、キラキラ輝く先輩達を見られれば彼女は苦労だとは思わなかった。
そんな悲しむ後輩メイドさんに、だらける先輩達はだらけ過ぎたかと反省するのだった。
そんな時、滅多にしない音が店内に響いた。
カランコロン
ドアに取り付けられたベルがなる。
そして、ベルの音が鳴り止まないうちに、はれのもう1人の先輩の声が。
「お嬢様お帰りです」
「お帰りなさいませ~」
「お帰りなさい」
「お、お帰りなさいませ!」
お散歩に出ていた猫耳メイドさんのココの声に連動するように、先程までだらけていた2人のメイドさんは瞬時に気持ちを切り替え接客を開始する。
まだまだ未熟なはれは気持ちの切り替えに失敗したが、それもまた彼女の魅力なので問題無いのだ。
「遊びに来ちゃいました」
猫耳メイドさんと帰宅したのは、はれの顔馴染みだった。
しかし、彼女がここに帰宅するのは初めてだ。
「バイト終わって帰ろうと思ったら、ちょうどココさんに会って」
ココが連れてきたのは、はれと同じくマンション型ダンジョンにある某ハンバーガー系ファストフード店で働く女子高生風の神製ホムンクルスだった。
「カレンちゃん!」
「やっほー、遊びに来たよ」
ダンジョン内では職場が違うので、殆ど顔を合わせないがカレンとはれは仲良しだ。
どれくらい仲良しかと言うと、天界では始終いちゃいちゃしてるくらいには仲良しだ。
「え? なんで? どうして?」
「はれが寂しがってるって聞いてね。神様とオーナーに聞いたら別に利用しても良いって」
友人が訪れるとは想定していなかったはれは、あたふたと混乱する。
そんな様子を見て癒される先輩3人と友人1人。
はれが何故こんなに驚くのかと言えば、現在ダンジョン内の店舗利用はダンジョンマスターであるレグニルスのみを対象としているからだ。
そこに特別な意味はなく、単純に今はたった1人の住民だからというのが理由だった。
しかし、ダンジョン内の店舗を運営するホムンクルス達は特別な理由、ダンジョンマスターだから特別だと思い込んでいた。
だからこそ彼女達はダンジョン創設以来、店舗運営に専念し店舗を利用しようとは考えもしなかった。
「なんか普通に利用しても良いみたい」
寂しがっている親友に会うため、カレンはダメ元で客として店舗を利用して良いか問い合わせた。
結果、あっさりと利用許可がおりたのだった。
「そういう訳だから、宜しくね」
「はい! こちらのお席にどうぞ、お嬢様!」
寂しさを忘れ、輝くはれの笑顔。
はれはメイドさんとして、親友を歓迎するのだった。
今回もストーリーは進まず。
なんで書いたかって?
メイドさんが書きたかったから!
以上!




