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EP17 ダンジョン防衛戦 Side I

遅くなって申し訳ないです。

今回は主人公以外の視点ということでinvader(侵略者)、冒険者視点になっています。


俺の名はハンス。しがない冒険者だ。


農家の三男に生まれはしたが、三男故に親から継げる畑など無く農家以外の道で生きていく必要があった。

普通なら商人や職人を目指すんだろうが、平均より二回り程大きい体格を生かすべく俺は冒険者となった。


獲物は大剣。人より体がデカく、冒険者としてそれなりに経験を積んだ今では棒切れのように触れる。


いや、棒切れは言い過ぎか。

良くて片手剣といったところだ。

平均的な冒険者が振るう片手剣並みには、大剣を自在に操れていると自負している。

冒険者としてはベテランの部類なのでソレくらいは当然なのだが、何故か周りからは脳筋あつかいされているが。


そんな俺は今、とあるダンジョンで吸血鬼と対峙していた。


もちろん、出会いたくて出会った訳では無い。

モンスター狩りをしていたら、向こうからこっちにやってきたのだ。


「前に出る」


パーティーの前衛として、俺は真っ先に吸血鬼と対峙する。

正直勝てるとは思えない。

しかし、全滅するよりは良い。


随分と軽く感じる相棒を操作し、俺はすぐさま吸血鬼の行く手を遮るように前に出た。

俺の剣に切れないヤツはいないはずだ。


「ハンスさん!」

「逃げましょう!」


横から仲間の声が聞こえる。


しかし、聞いている場合ではない。

吸血鬼は直ぐそこまで来ているのだ。


「いくぜ!」

「無謀ですって!」


仲間の引き留める声を無視し、俺は吸血鬼に向けて技を繰り出す。


しかし、戦線を維持出来たのは一瞬。

吸血鬼本人と、その配下モンスターの物量の前に俺達は全滅した。


「だから言ったじゃないですか、無謀だって」

「あーあ、死に戻りか」

「脳筋」

「考え無し」


光って絵を映す板には、倒れ伏した俺の分身が映し出されていた。

隣の板に目をやれば、そこには仲間達の分身が倒れ伏している。


「いいじゃねえか、実際に死んだ訳じゃないんだし」

「ですが、時間の無駄です」

「食糧も残り少ないですしね」


特別任務についてから約二ヶ月。

なんとか目的地であるダンジョンにたどり着いた俺達が、ダンジョン攻略を開始してから一ヶ月が過ぎた。


攻略を開始してから一ヶ月だが、実際に戦闘したのは一度だけ。

命の危機も、怪我をする気配すら無い。


しかし、ダンジョン攻略は全く進んでいない。


「あの吸血鬼、例のボスモンスターって奴なんだろ? だったら、戦力を確認した方が良いだろ」

「まさに圧倒的でしたね」

「他のボスモンスターも同じ戦力なら、一時撤退した方が良いかもしれません」


この部屋を突破する方法はシンプル。他のダンジョンでもよくある、指定モンスターを撃退する事だった。

問題なのは指定モンスターの数が多い事と、指定モンスターが光って絵を映す板の中にいる点だ。


「最初は楽勝だと思ったんだけどな」


命の危険が無い事から、当初は生まれたてのダンジョンだと判断していた。

しかし、このダンジョンは何かが違う。


その違和感は、ここに来た時からあった。



▼△▼△▼△▼△


一ヶ月前


「ようやく着いたね」

「塔型のダンジョンみないだけど、見た事のない形だね」


魔法使いのアレフと神官のガルフが言うように、目の前のダンジョンは今までに無い形をしていた。

分類上は塔型なのだが、普通の塔型では無い。

目の前のダンジョンの高さは、王都にある鐘楼や王城よりも高いだろう。

これだけであれば発生から10年程度の塔型ダンジョンなら普通なのだが、このダンジョンは横幅もある。


「箱型ダンジョン、と言った方がしっくりくるな」

「ハンスさんにしては良い事言うね」

「確かに、箱型ですね。初めての形だし、やはり普通のダンジョンでは無いのかもしれません」


何処となく俺を馬鹿にしてくるアレフとガルフ。

こいつらは【魔法使い】と【神官】と言う、他の職業より知力が高い職業に就いている。

だから大剣使いの俺を事ある毎に脳筋扱いするのだ。


しかし、アレフとガルフは冒険者になって三年の、ようやく卵の殻が取れた半人前だ。

【魔法使い】と【神官】といっても所詮は下級職。


【剣士】の上位職である【剣豪】であり、特別職【戦闘指揮官】も持っている俺を脳筋呼ばわりする理由は無いのだ。

大剣使いの嗜みで筋肉鍛えているし、実戦から離れたく無いので貴族からの士官の誘いを断りまくっているが、俺は脳筋では無いのだ。


ついでに、このパーティーのリーダーは俺で、運営責任者でもあるのだ。


「しかし、綺麗な庭園です」

「飲み水には困らなそうだな」


塔型ダンジョンの周りは貴族の館を彷彿とさせる庭園となっていた。

中央には噴水があり、綺麗な水なので煮沸すれば十分飲料水になるだろう。


「それでどうします脳筋さん」

「ダンジョンに入らなきゃダメですかね、脳筋さん」


残りのメンバーである、クルトとエトヴィンも俺を脳筋と呼ぶ。

二人はアレフとガルフがパーティーに入る前からの付き合いで、その頃は俺を脳筋とは呼ばなかった。

が、今ではアレフとガルフに触発されたのか、二人は俺を脳筋と呼ぶように。


まあ、こいつらはニックネーム的な扱いなのでそこまで腹は立たないが。


ちなみにクルトがパーティーの斥候役で下級職【盗賊】を取得している。

エトヴィンは珍しい下級職【魔物使い】を習得していて、このパーティーでは何でも屋として前衛から後衛、斥候から物資輸送までこなす優秀な裏方だ。

俺達が王都を出発してから20日でここまでこられたのも、エトヴィンがいたからだ。


「受けた依頼はダンジョンの調査。当然、ダンジョン内の調査も含まれる」

「可能だったら攻略しても良いんだよね? 調査だけで帰るのは勿体ないよ」

「情報を持ち帰るのが優先されるが、アレフの言うように可能なら攻略も視野に入れる」


ダンジョンは時が経てば成長し、ますます攻略が難しくなる。

それだけなら良いが、時にダンジョンは内に貯めたモンスターを解き放つ事で人に危機を齎す事もある。

歴史を紐解けば、ダンジョンが原因で滅んだ国の数は両手の指では足りないだろう。


「こんな場所にあるダンジョン、調査依頼でも受けなきゃ冒険者は来ないだろ」

「全く、厄介な場所に発生したものです」


クルトとエトヴィンが言うように、このダンジョンは最悪な場所に発生している。

何しろ、辺境の島と言われるデモグレイス島、その中でもさらに辺境である島の西側に発生しているのだ。


ダンジョン災害から民を守る為、人種は知恵を絞っている。

知恵を絞った中には魔法に秀でたエルフも含まれているので、今では世界の魔力濃度を観測する事でダンジョン発生を正確に知る事が出来る。


そして人種国家に跨って活動する冒険者ギルドが速やかに冒険者を派遣する事で、ダンジョンの早期発見と早期攻略が可能になっている。

最も、ダンジョンは良い魔核の供給元にもなるので、場合によっては国と冒険者ギルドの管理下におかれて攻略されない場合もあるが。


「そういえば他の連中はまだみたいだね」

「エトヴィンさんのおかげで、僕達が一番乗りです」


俺達がここに来たのも、冒険者ギルドが新たなダンジョンの発生を確認したからだ。


通常なら一組か二組の冒険者に調査依頼を出すのだが、今回は島の西側にダンジョンが発生している。

辺境の名は伊達では無く、島の西側に行くには島中央にそびえるデモグレイス山脈を越える必要がある。

まず、この山脈越えが最初の関門で、人種が栄える大陸を入れても五指に入る高さを誇る山脈であり、同時にワイバーンの縄張りでもある。


ワイバーンは種族ランクBのモンスターで、一流の冒険者パーティーがようやく一体のワイバーンと戦えるレベルだ。

種族ランクBといえば、同レベルの人種の10倍強いとさえる生物だ。とてもじゃないが俺達が戦える相手では無い。


そんなワイバーンが多数生息しているのがデモグレイス山脈なのだ。


そんな事情から冒険者ギルドは確実に情報を掴むために、調査依頼を複数の冒険者パーティーに依頼している。

しかし、デモグレイス山脈を超えられる実力を持った冒険者パーティーは集まらなかった。


理由は二つあった。

一つはこの島が辺境ということ。

山脈を超えられるような一流達は大陸の大国を活動拠点としていた。


二つ目の理由は、この島は戦乱の時代を迎えているということ。


この島は近年、南方大陸との海上貿易の中継地として大国の注目を集めている。

今までは辺境と呼ばれる島だったが、航海技術と南方大陸の発見がこの島を辺境から田舎へとランクアップさせた。


ちなみに南方大陸の発見と人間は呼称しているが、南方大陸自体は500年前から知られているのは公然の秘密だ。

今までは飛竜や鳥の獣人など、限られた存在しか行き来出来ない関係だったのだ。


それが航海技術の発展により人間も行き出来るようになった為、人間は南方大陸の発見と呼んでいるのだ。


呼び方は兎も角、航海技術発展により海上貿易が盛んになったが、無補給で南方大陸まで航海する事はまだ出来ない。

そこで大陸から船で5日と比較的近いこの島が中継地として注目されているのだ。


その為、大国の意を受けた小国が乱立。島の覇権を賭けて争っている最中なのだ。


もっとも覇権を求めているのはこの島の実力者のみで、大陸側は分割統治が望ましという結論を出しているので終わらない戦乱が続いている。

冒険者達はこの終わらない戦乱に立身出世の夢を見ており、有能な奴から士官していった。


だからこそ、冒険者ギルドは質に目をつむって量でダンジョン調査を行うことにした。

通常なら二組の調査隊を、今回は計十組の調査隊を送り込んでいる。

俺達もその中の一組で、山越え組の一組だ。


「エトヴィンがグランフェルロをテイムしてくれたから、山越え後は早かったしな」


長距離を素早く移動するには馬が必須だが、馬でデモグレイス山脈越えは難しかった。

山のふもとまでは馬で行けるが、そこから先は山登りと言うよりも崖上りだからだ。


馬でも登れる場所もあるのだが、そういう場所はワイバーンの狩場に近いため俺達は野生動物もモンスターも近寄らない崖上りをして山脈を超えた。


山越えの後に待つのは死の森だ。

小国よりも広いと言われる森で、島の西側の大半は死の森だと言われている。


この森の外延部は種族ランクEのモンスターの住処で冒険者にとっては良い狩場だが、中心部に進むにつれて種族ランクDや種族ランクCのモンスターが生息している危険域となり、中心部には種族ランクAの【森の主】が住むと言われる魔境だ。


そんな魔境で俺達がライバルを出し抜けたのも、エトヴィンがグランフェルロをテイムしたからだ。

グランフェルロは種族ランクDの走力に特化した鳥形モンスターで、大きさも馬と同程度ある。

性格も大人しい草食モンスターなので、馬の代用として飼育している地域もある。


「安全な外延部を回ってきましたが、やはり徒歩で森を一直線に抜けるよりも速かったですね」

「流石に死の森を横断する馬鹿はいないだろ。他の連中も徒歩で外延部ルートのはずだ」

「死の森の反対側って、本当に面倒な場所にあるダンジョンですよ」

「むしろ海から回った方が距離的には近いですから」


そう、このダンジョンは島の西側の端にあるので、山脈や死の森を超えるよりも船で西海岸に回って上陸する方が距離的には一番楽なのだ。


今回の調査でも、一応は海側ルートを使用しているパーティーも一組だけいる。

一組だけなのは、失敗すると船ごと沈んでしまうからだ。


「デモグレイス島の北にドラゴンが縄張りにする島あって、島の南から西の海域がデビルフィッシュの生息地じゃ無ければ一番安全で楽なルートなんだが」


最強生物の呼び声高いドラゴンは縄張りへの侵入者を決して許さず、南から西側は【船殺し】の異名を持つデビルフィッシュが大量に生息している。


デビルフィッシュは種族ランクCなので倒せない事は無いが、海中で活動する魚類側モンスターなので船から発見する事も攻撃する事も出来ない。

そしてデビルフィッシュは海に浮かぶ船をエサと勘違いし、その鋭い槍のような角で船底に穴を空ける船の天敵だ。


「島を北から回り込めばドラゴンに襲われ、南から回り込めばシーサーペントとデビルフィッシュに襲われる」

「ホント、辺境の島の辺境は流石です」

「東側に良港があって、海上貿易の中継地になっているのが信じられませんよ」


前人未踏と言う訳では無いが、人が滅多に踏み入れない秘境がデモグレイス島西部。

つまり、この目の前のダンジョンはたどり着くだけで至難の業という事だ。

俺も二度とこんな場所には来たくない。


「さっさとダンジョンに入るぞ」

「ここは脳筋のハンスさんからどうぞ」


防御力だけなら俺と匹敵するだろう【神官】のガルフに言われると釈然としないが、先陣を半人前に任せるのも気が引ける。


「仕方ない、先頭は俺、次にクルト、アレフ、エトヴィン、ガルフの順だ」

「了解」

「クルト、周囲の警戒は任せた」


警戒を緩めず正面の入り口からダンジョンに侵入する。

入り口の先には敵影無し、目に見える罠も無い部屋だった

いや、罠は無いがタイル張りでダンジョンにしては妙に綺麗な部屋だ。

しかも、正面の壁の大部分はガラスで出来ていた。


「クルト、罠の類は?」

「どうやら無いみたいだが、変わったダンジョンだな」

「あれ、ガラスの壁ですよね」

「貴族の屋敷でしか見た事ないですよ」

「持って帰ったら結構な儲けですよ」


ガラスの壁はソレなりの大きさなので、ガルフの言うように持って帰れたら一財産築けるだろう。

割れやすいガラスを持って、帰り道の山脈を超える事が出来たらだが。


「しかし、ガラスで侵入者を防げるのか?」

「罠も無いみたいだし、割れば進めるようだが」

「魔力を感じるから、ダンジョンに保護されていて壊せないと思う」


魔力の扱いに長けたアレフが言うのだ、恐らく本当なのだろう。

それにダンジョンの入り口なのだ、これくらいは当たり前の備えだ。


「魔力で保護されているなら、何処かに開ける為の仕掛けがあるはずだ」


ダンジョンは何故か侵入者を完全には防がない。

目の前のガラスの壁の様に、入り口を破壊不能な壁で覆えばダンジョン攻略は不可能なはず。

しかし、今までの事例では必ず突破口が容易されていた。


偉い学者が言うには、ダンジョンは周囲から魔力を吸収して成長する他、攻略者からも魔力や魂を吸収して成長するらしい。

特に魂は成長効率が良いので自身の成長の為に攻略の糸口を残している、完全にダンジョンを閉ざしてしまうと周囲の魔力が吸収出来ない、という二つが必ずダンジョンに突破口が用意されている事に対する有力な仮説だ。


「お、あそこに鍵穴みたいなのがある」


クルトが指さす方に目をやる。

ガラスの壁近く、右側の石壁に変な個所があった。

そこにクルトが慎重に近づいていく。


「うぉ!」


クルトが石壁の変な個所に目と鼻の先まで近づいたとき、変な個所が急に光りやがった。

罠は無いと無意識に油断していたのかもしれない。

前に出ているクルトを守る術は無いが、後ろの連中は俺が守らなくてはならない。

全方位に意識を集中しつつ、油断なく剣を構える。


「って、これ俺か?」


致死性の罠では無かったのか、クルトの普段と変わらない気の抜けた声が聞こえた。

ここからではクルトの体が邪魔でよく見えないが、急に光った変な個所には人影が見える。


「無事なのか?」

「大丈夫だ。特に被害は無い」


しばらく様子を見ても何も起こらないので、全員で変な個所に近づいてみる。

近くで見ると、クルトの言うように変な個所には俺達の姿が映っていた。

鏡のようだが、このように光る鏡は聞いたことが無い。


その下には数字が書かれた出っ張りと、鍵穴がある。

どうやら、この鍵を解除すればガラス壁が開く仕掛けなのだろう。


「大陸の冒険者ギルド本部で最近開発された魔道具に似てる」

「本当かアレフ? だとすると、このダンジョンは大陸の最新技術が導入されているってことか?」


辺境のダンジョンなのに、導入されている技術は最新。

ここまで綺麗な部屋といい、何か不気味な気配を感じる。

俺が知っているダンジョンとは全くの別物。

普通のダンジョンは攻略者を殺そうとする意図が見えるが、このダンジョンはそうした攻略者を殺そうとする意図が見えない。


「あ~、この鍵は無理。正規の鍵が無いと開かない」

「まずは鍵探しか」


ダンジョンは攻略者を完全に拒絶する事は無い。

壁があったとしても、突破する何かしらの方法が用意されている。

だからこそ、ガラス壁を開ける鍵は必ず手に入る様になっているはずだ。


「でも、この部屋にはそれらしい物は無いな」

「もしかすると外の庭園に隠してあるんじゃない? 結構広いし、もしかすると庭園もダンジョンなのかも?」

「あり得ますね。モンスターも罠も無かったのでダンジョン外と判断しましたが、実はダンジョン内の可能性もあります」


部屋を見渡していたクルトが言うように、ここには鍵は無さそうだ。

ここに無いならば、可能性が高いのはガルフとエトヴィンが言うように外の庭園だろう。

これが魔法馬鹿アレフの意見だったら採用しないのだが、このパーティーの知恵袋二人の言葉だ、恐らく間違いは無い。


「それなりに広い庭園だったからな、何かを隠すには十分だろう」


判断は素早く正確に。

それが俺のリーダーとしてのポリシーだ。


アレフには難しい事を長時間考えるのが嫌いなだけど馬鹿にされるが、俺としては難しい事を考えずに高火力魔法で全てを吹き飛ばす事を好むアレフにだけは言われたくない。


「よし、それじゃ俺がざっと探索してくる」


いったん塔型ダンジョンから出ると、斥候役のクルトが周囲の探索に出た。

クルトは下位職である【盗賊】ではあるが、十分に経験を積んだベテランだ。

特に【潜伏】スキルと【隠密】スキルの熟練度は上位職【暗殺者】にも匹敵する。

つまり野外での偵察であればクルト単独の方が安全なのだ。


「一応野営の準備をしますか」


クルトが周囲の探索に出ると、グランフェルロに噴水の水を飲ませていたエドヴィンが提案してきた。


正午はとうに過ぎている。

まだまだ日が暮れるような時刻では無いが、すんなり鍵が見つからない可能性もある。


この周辺は弱いモンスターしか生息していなかったので、体力温存しながらの行軍だったので疲労はそこまで蓄積していないが、疲労がまったく無い訳ではない。

塔型ダンジョン内で夜を過ごすリスクを考えれば、この庭園で野営して明日の朝から攻略した方が安全だろう。


「よし、クルトの偵察が終わるまで暇だしな。周囲の安全を確保しつつ野営の準備だ」

「それでは僕はアレフと一緒に周囲に結界を張ってきますね」

「頼む」


ここまで素早く来られたのはエドヴィンが騎獣をテイムしたからだが、安全な旅が出来たのはアレフとガルフがいたからだ。

もちろんクルトが斥候として安全な道を見つけたという事もあるが、二人が聖と魔、二重の結界で安全に野営出来た事は大きい。


「脳筋さんはぼさっと立って無いで、野営の準備忘れないでね」

「脳筋じゃねえ!」


結界を張りに行く時も俺を馬鹿にするアレフ。

本当に俺を馬鹿にする機会を見逃さないヤツだ。


「それじゃテント張るんで脳筋さんは手伝ってください」

「だから脳筋じゃねえ!」


俺は特別職【戦闘指揮官】を持っている知性派なんだよ。

見た目は大剣使いとして必要十分な筋肉があるから脳筋に見えるかもしれないが、俺は筋肉で戦うタイプじゃなくて頭で戦うタイプなんだ。


そんな風に数分程自問していると、


「遊んでないで早く手伝ってください」


【アイテムボックス】から野営に必要な物資を出し終えたエドヴィンから声がかかる。


エドヴィンとも長い付き合いだ。

本気で言っているか、ただ冗談として言っているかくらいは分かる。

そして今のは本気の声だった。手伝わなければ本気で怒られる。


「はいはい、手伝いますよ」


エドヴィンのレアスキル、【アイテムボックス】は収納出来るスペースが有限だ。


俺は持っていないので仕組みは詳しくないが、エドヴィン曰く見えない倉庫が常に傍にある感じらしい。

倉庫といってもそれ程広くは無く、ちょっとした小部屋程度の広さらしい。


そのため少しでも多い荷物を収納出来るよう、テントなど小さく畳める物は小さく畳んで収納されている。

俺としては張った状態でテントを収納して欲しいのだが、収納スペースが無駄になると毎回畳んだ状態で【アイテムボックス】に収納されるので毎回野営の度にテントを張る必要がある。


それでも【アイテムボックス】が有用である事に変わりはない。


特に今回のような辺境への長期間の探索などでは大変役に立つ。

俺達が一流の冒険者パーティーになれたのも、とある辺境にのみ生息する貴重な素材を【アイテムボックス】に収納する事で大量に持ちかえる事が出来たからだ。


このスキルを習得している者は千人に一人いるかいないか、いたとしても貴族や一部の大物商人などが囲っているか、独立商人になっているのが普通だ。


命の危険が多い冒険者で【アイテムボックス】持ちは本当に少ない。

いたとしても初心者の頃に奴隷落ちする事が多いので、中級者以上では数える程になっているのだ。


ちなみに【アイテムボックス】に収納した物は収納した【アイテムボックス】持ちしか取り出せなく、それ以外の方法は【アイテムボックス】持ちを殺すしか無い。


ついでに【アイテムボックス】に何が入っているかも他人には分からないので、盗賊に襲われた【アイテムボックス】持ちは大抵殺されるか、奴隷に落とされて自由意志を奪われる。


主人の財産を預かる者として厚遇されるか、奴隷として自由意志を奪われるか。

自分の大切な財産を他人に預けたくないのが人情なので、奴隷に落とされるのが一般的らしい。

レアスキルである【アイテムボックス】持ちだからと言って、楽な人生は保証されていないのだ。


「とりあえず夕飯の材料も一緒に出しておきますね」

「おう、テントの設営は俺がやるから飯の準備は任せた」

「脳筋さんは料理出来ませんからね」

「うるせえ、黙って働け」


こうして俺達のダンジョン攻略一日目が終わった。


なんだが続くような終わり方ですが、冒険者視点は終了です。


更新が滞っていますが、最低でも週一で更新したいと思います。

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