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EP11 ダンジョンマスター、エタる

※作者はまだエタって無いです

9/18のPVが444。メイド強いと思いつつ、不吉な数字にちょっとビビってます。


読んでくださってありがとうございます!



「テリヤキバーガーのセットですね。お飲み物は何になさいますか?」

「ホットコーヒーで、ミルクと砂糖は一つずつで」

「他にご注文ありますでしょうか?」

「大丈夫です」


女子高生型ホムンクルスの笑顔に癒されるレグニルス。


ハンバーガー店の店員さんを女子高生に設定して本当に良かった。

昨日のメイドカフェとは違った良さがそこにはあった。


レグニルスは自分にはロリコン趣味は無いと思ってはいたが、アイドルグループに所属していそうな可愛い系女子高生型ホムンクルスの笑顔を見ているとついつい自身の性癖を疑ってしまう。


レジに並んでいるのは当然レグニルス一人なのだが、元の世界の習慣から左に一歩ずれて商品を待つ。

ここはマンション11階にあるフードコートの一角、ハンバーガーチェーン店だ。

フードコートにはハンバーガー、牛丼、うどん、蕎麦、クレープ、ラーメンに中華とオーソドックスなチェーン店を網羅している。


専門的でお洒落な雰囲気の飲食店は、マンション12階のレストラン街に設置されていた。


「お待たせしました~」

「ありがとうございます」


女子高生型ホムンクルスから紙袋を受け取り、自室に戻るレグニルス。

フードコート内で食べても良かったのだが、彼には自宅のリビングでアニメを見るという使命があった。


動画配信サービスを利用しての、アニメ一気見の最中に不覚にも空腹に襲われたレグニルスはEDになった所で動画を一時停止、その足で12階にあるフードコートまで食料調達にやって来たのだった。


「……何やってんだろ、俺」


エレベーターに乗り込み、一人になると空虚感に襲われる。

自身の事だ、レグニルスは直ぐに原因を理解出来た。


一念発起して働き始めたのが昨日。

その翌日の2日目にして、コーチとの訓練をサボってしまったからだ。


エレベーターという狭い空間にいるせいか、紙袋から漂ってくるコーヒーの香りがレグニルスを包み込む。

レグニルスはコーヒー好きという訳では無いが、始業前にコーヒーショップからコーヒーをテイクアウトしてくる同僚が多かった為、コーヒーの香りを嗅いでいると自然と心が落ち着いていく。


所謂、仕事モードというやつだ。


「明日から頑張るか」


レグニルスには空虚感の原因は分かっていた。

訓練をサボっている事の罪悪感と、将来への備えもせずに遊んでいる事の不安感。

前に進みたいと思っているのに、一歩も前に進んでいない現状。


「キリギリスがアリになる為にはどうすれば良いんだ」


『アリとキリギリス』

夏の間に働いていて食糧を貯めていたアリと、夏の間は遊んでいた為に冬に食べ物に困るキリギリスの童話。

童話の結末は、現代では優しいアリがキリギリスを助けるが、元々の結末ではキリギリスは死亡している。


ダンジョンマスターとしの冬、ダンジョン攻略者が来ない保障は無い。

ダンジョン防衛には自信を持っているが、完璧という事は無いだろう。

それにダンジョン外で襲われる可能性も否定出来ない。


この不安を解消する方法として、さらなるダンジョン強化、自身のレベルアップによる強化。

ダンジョンマスターとしてモンスターを召喚、配下とする事で勢力を強化する方法もあるだろう。


「コツコツ努力するにしても、一体何をすればいいんだ」


言葉では迷っている自分を演出しているが、レグニルスには何をすれば良いのかは分かっていた。


レグニルスはチート転生者だ。

そして、レグニルスのチートのリソースは、ダンジョンに偏っている。

レグニルス本人の潜在能力(チート)は、この世界では高めに見積もっても中の上が精一杯。

戦闘経験が無く、レベルが低い現状では下の下だろう。


もちろん、レグニルス本人を強化するチートを獲得する事も出来た。

しかし、特典は有料。それもローンでの購入だ。


社会人として働き、住宅ローンと奨学金返済に悪戦苦闘していたレグニルス。

そんな彼としては、どうしても必要以上の買い物は出来なかった。


そんな彼の力を手っ取り早く強くするには、ダンジョン強化が一番だ。

ダンジョンが健在なら定期的な収入もあり、追加でチートも購入出来る。


そしてダンジョンを強化するには、日々の収入を貯蓄するか、モンスターを討伐して魔核から臨時収入を得れば良い。

特にモンスター討伐はレベルアップも出来るので、まさに一石二鳥の方法だろう。


「結局は楽をしたい、って事なんだよな」


何をすれば良いのかは頭では分かっている。

しかし、その為の行動を拒否する自分がいる事もレグニルスの真実だった。


「働きたくないでござる」


就活中に良く口にしていたセリフを呟くレグニルス。

就職してからも、残業時間がブラックな感じになった際にも良く口にしていたセリフだった。


「そもそも、なんで【聖騎士】目指そうと思ったんだろ」


レグニルスがto be(あるべき姿)とas is(現状)を考えた際、当然ながら自身の育成計画も考えている。

こちらは転生時にある程度のキャリアプランを考えていたので、今更将来について悩む必要が無かった。


「最強職というか、大器晩成の職業が思ったよりめんどくさい件について」


【聖騎士】は特殊上級職と呼ばれている特殊職業だ。

通常の職業は下級職のレベルを一定以上にすれば、上級職に転職する事が出来る。


「転職すると、前提となる下級職のボーナスがそのまま残るから、レベル上限がある以上は前提となる下級職の数が多い方が有利と思ったんだけどな」


例えば【剣士】レベル50から上級職の【剣豪】に転職した場合、種族レベルX+剣士レベル50+剣豪レベル1なので合計レベルは種族レベルX+職業レベル51の計算になる。

【聖騎士】の場合は、近接戦闘系下級職二つと神職系下級職一つをそれぞれレベル50以上にする事で転職可能となるので、合計レベルは最低でも種族レベルX+職業レベル150となる。


「職業補正値も他の上級職より多いから、【聖騎士】は最強系だと思ったんだ」


最強という言葉の魔力に負けた形だが、最強系という言葉に嘘は無い。

【聖騎士】単体でも十二分に強い上級職なのだが、それに加えて【聖騎士】が使用する聖属性スキルを強化する特別職【聖人】、騎士系職の能力を底上げする特別職【貴族(男爵)】も保有している。


さらに特別職【聖人】の効果により、【聖騎士】の他に神職系職を装備出来るので、上級職の高位司祭などを追加で装備する予定もある。


ビルドとしてはタンクだが、ヒーラーとしても活躍できる能力を秘めていた。

火力は上級職としては中の上といった所だが闇属性、特にアンデットが相手であればトップクラスの火力を誇る。


「そこまで成長出来れば最強系主人公なんだけど」


特殊上級職は通常の上級職よりも強いのは事実なのだが、この世界では一部の限られた人間しか転職しない。

それは上級職自体が狭き門であり、下積み時代である下級職でいる期間が長すぎるのだ。


現代世界で言えば、4年大学に通った後に就職せずに違う学部に入学、新しい大学を卒業してから就職するようなモノだ。

【聖騎士】の場合は三つの大学を卒業してから就職するので、30になってから新卒として働き始める計算になる。


「【聖人】のおかげで神職系だけは並行して育てられるけど、それでも面倒くさい事に変わらない」


レグニルスの計画では【聖騎士】になる事は決定済なのではあるが、実際に【聖騎士】に転職する道を歩いてみると遠すぎる道のりが実感出来てしまい、もっと簡単な妥協案を考えてしまう。


例えば【剣豪】で妥協するか、転職条件が【聖騎士】より容易な【騎士】などだ。


「【騎士】は近接戦闘系下級職を2つ育てないとダメだけど、【聖人】で同時に神職系育てるから手間は【聖騎士】と変わらないんだよな」


こうなると楽な道は【剣豪】のみとなる。

転職条件が容易な分、【聖騎士】並の職業補正は期待出来ない。

しかし、この世界全体で考えれば強者の部類には入る。


「同じ特殊上級職でも【近衛騎士】とか【魔法騎士】もあるしな」


【近衛騎士】は近接戦闘系下級職を3つ要求される特殊上級職だ。

物理防御力は【聖騎士】以上であり、その防御力は人種最硬と称えられる典型的なタンク職となる。


その防御力を数値化すれば以下のようになる。


【近衛騎士】

物理防御:5

魔法防御:3

火力:3


【聖騎士】

物理防御:4

魔法防御:4

火力:3


このように、物理防御だけなら【近衛騎士】だが、魔法防御では【聖騎士】に軍配があがる。

レグニルスは被魔法ダメージの可能性、回復魔法による生存率の向上を考慮して【聖騎士】を選択している。


もちろん、転職のしやすさも考慮点になっているが。


また、【魔法騎士】は近接戦闘系下級職2つと、魔法戦闘系下級職1つの計3つの下級職を要求される特殊上級職だ。

防御力は低いが、魔法を併用した火力では騎士系最強を誇る。


数値にすればこのような感じか。


【魔法騎士】

物理防御:3

魔法防御:3

火力:5


「ま、転職なんてまだ先だけど。ようやく歩き出した所だし」


異世界に来てから自室に籠っていたレグニルス。

ようやく転職への道を歩いたと言っても、まだ素振りを一日しただけなのだが。


「とりあえず飯食いながらアニメ見て、それから考えよ。まだ慌てるような時間じゃない」


自宅の玄関にたどり着いたので、悩み事は一時棚上げし玄関の鍵を開ける。

誰も住んでいないマンションなのだが、レグニルスは長年の習慣から毎回出かける際に玄関の鍵をかけていた。


自宅に足を踏み入れると習慣から靴を脱ぐ前に鍵をかける。

そのままリビングに移動し、TVの電源を入れてアニメを視聴する準備をする。


レグニルスは複数の動画配信サービスを契約しているが、最近のお気に入りは某携帯キャリアが提供するアニメ動画配信サービスだ。

元々はPCで視聴する事が多かったのだが、広い家に引っ越した事でTVを利用した視聴方法にシフトしていた。


「とりあえず飲み物を用意してと」


紙袋からコーヒーを取り出しフタを外す。

ミルクを入れ、砂糖を入れ、3回から4回ほどかき混ぜる。

ホットコーヒーの場合は砂糖を先に入れ、良く混ぜてからミルクを入れた方が良いのだが、コーヒーに拘りのないレグニルスは適当だった。


かき混ぜたコーヒーを放置し、アニメ鑑賞の準備を始める。

TVの電源を入れ、機器の用意をして動画配信サービスのサイトにアクセスする。

再生ボタンをクリックする前に、コーヒーのフタを元に戻す。


「それじゃ、続きを見るか」


紙袋からテリヤキバーガーを取り出し、空いた手で動画を再生させる。


『さあ、計画をはじめよう』


20代程に見える青年のアップが映り、青年の厳かな声がTVから流れた。

画面が青年の全身アップから青年の口元のみのアップにかわり、真一文字に閉じられたが狂喜を感じる笑みに変わる。


そして始まるオープニング。


「アバンタイトルは前回のラストか」


『転職先はダンジョンマスター』

それが、レグニルスが見ているアニメのタイトルだ。


半年前に放映されたアニメの為、動画配信サービスでの一気見をしている。

一気見の理由はタイトルから分かるように、現代日本のサラリーマンが中世ファンタジー世界でダンジョンマスターに転職するストーリーだ。


「主人公様はダンジョンマスターしていて良いな」


同じダンジョンマスターという身分でありながら、自分とは違う境遇のアニメ主人公。

ダンジョンマスターよりも自宅警備員に近い自身の生活が嫌になる。


オープニングが終わり、TV画面には平原が映る。

平原には緑が生い茂るが、樹木は数える程しか生えていない。


そんな平原の中で唯一草木が存在しない、一本の線がある。

線は蛇行してはいるが、画面の左から右へと続いていた。


『ゲルデン街道、王都ゲルンと貿易都市デンクロノアを結ぶ王国の大動脈。王国随一の港を持つ貿易都市デンクロノアに集まる物資を王都ゲルンへ運ぶ為の大動脈である』


ナレーションが終わると街道に異変が起こる。

地面が隆起し、高さ1メートル厚さ50センチ程の塀が現れたのだ。

塀は万里の長城のように続き、TV画面が上空からの絵に変わると貿易都市デンクロノアをぐるりと囲うように出現している事が分かる。


塀は当然のように海にも及び、今まさに入港しようとしていた船の行く手を妨げる。

船が入港出来ないという事は、それは同時に出港も出来ないという事。

王国随一の規模と貿易額を誇る港が死んだ瞬間だった。


『兵糧攻め、単純な策だが貿易都市には致命的だろう』


貿易都市デンクロノアは名前の通り、貿易により栄える街だった。

それゆえに人口は王国でも5本の指に入る規模を誇り、それと反比例するように食糧自給率は低い。


とは言え、塀は高さ1メートル厚さ50センチ程なので馬車は無理でも人手なら十分超えられる。

効率は格段に落ちるが街道を使った交易は可能なので、人々が直ぐに飢える事は無いだろう。


『…マスター』

『今は待機だ、セクトリア。その槍を振るう機会はいずれくる』

『っは』


主人公の傍にひれ伏す女騎士。

まだ少女と呼ばれる年齢であろう彼女の手には槍が握りしめられていた。

その顔に笑みは無く、ただ真っ直ぐに主人公を見つめている。


「クール系ヒロインも良いなぁ、女騎士ってのもポイント高い。たしか18歳だっけ」


スマホで公式サイトのキャラクター情報を見て、セクトリアのプロフィールを確認するレグニルス。

彼女はレグニルスの今期出来た嫁なので、まだ詳しくプロフィールを覚えきれていないのだ。


公式サイトでは6歳年下の妹がいる設定になっており、妹と合わせて所謂主人公のハーレム要員になっている。

セクトリアには34になる母親がおり、未亡人となっている事から母親もハーレム要員と考える派閥と、母親はハーレム要員には含めない派閥がネット上で対立していたりする。


ちなみにレグニルスは後者の派閥に所属しており、母親にはヒロイン姉妹を見守る立場を希望していた。


『一週間後、予定通り第二防壁を隆起させる』

『第一防壁の複数個所に隆起のスケジュールを記載、シスターに依頼して都市内にも噂が流れるように手配しています』

『結構。無辜の民を虐げるのは趣味じゃないからね』


主人公が塀の高さを1メートルに設定したのは、陸上輸送の要である馬車の運行を止めつつも徒歩での移動を妨げない為だ。

最低限の食糧輸送する手段を残した他、都市内の住民が逃げ出す事を期待した措置だった。


『人の力では破壊出来ないダンジョンによる都市封鎖。封鎖を解除するにはダンジョンを攻略するしか無い』

『封鎖領域内外に、ダミーのダンジョン入り口を17個所設置済みです』

『灯台下暗し。我等はココで彼等の力が弱まるのをゆるりと待とうではないか』


都市封鎖というダンジョンマスターとしては積極的過ぎる攻勢に出たのは、この地の領主である侯爵家打倒の為だった。

侯爵家打倒の原因は、メインヒロインであるセクトリアの為。実に主人公らしい理由だった。


この積極性も、怠惰な日々を過ごすレグニルスを苛立たせる一因となる。


「これがアニメと現実の差か」


アニメ主人公と同様に異世界でダンジョンマスターをしているのに、この差は何なのだろうか?

アニメ主人公も原作小説では初期は苦労していたようだが、異世界生活一週間目にはヒロインと出会っていたはずだ。


レグニルスの脳裏にアニメ主人公と自身の違いが次々と浮かび、それがしこりとして心にたまっていく。


「行動したヤツと行動しないヤツの差か」


アニメ主人公と自身の違いは簡単に分かる。

自身は転生してから何もしていないが、アニメ主人公は主人公らしく行動していた。

少なくとも、訓練から逃げ出してアニメを見てはいなかった筈だ。


「つまらないな」


大好きなアニメがつまらない。


理由は分かる。

アニメに登場するキャラクター達が行動すればする程、TVの前で行動していない自身があらわになる。

行動しない罪悪感がアニメをつまらなくしていた。


「・・・明日は頑張るか」


アニメ主人公なら直ぐに行動を開始するのだろうが、これが一般人で凡人のレグニルスの限界なのだった。


「動くのが遅くても、動きさえすれば敗者では無いはず」


マンガで知ったダレルロイヤルの手紙を思い出しながら、明日から頑張ればまだ敗者では無いと言い聞かせながらアニメに意識を戻すのだった。



異世界に召喚された主人公と言えばテリヤキバーガー

と思っている私は歳を取ったのだろうか。

釘宮病、懐かしい。


次回更新は9/21 15時予定。

まだまだ自転車操業状態なので頑張ります!PVC

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