第52章「その剣……俺の剣ではなかった」
アレスは青ざめた顔でハイヴェンのもとへ戻り、依然として意識を失っている彼を抱き上げた。
試験場を出ると、そのままメインアリーナへ向かった。
メインアリーナの入口にいた監督官の一人に、自分の剣とハイヴェンの剣を預ける。
それから、ハイヴェンを壁にもたれかからせ、その隣に腰を下ろした。
結果が発表され、自らの避けられない運命が確定する時を待ちながら……。
……
三時間後――
監督官たちが、生徒たちの剣を携えてやって来た。
生徒たちはそれぞれ、自分の剣を受け取る。
そして、監督官総長が合格者の名簿を読み上げ始めた。
「第一位、ユラシャン・アキタロウ!」
「彼は三体の人形を斬るという、極めて稀な偉業を成し遂げた。これにより、第三段階の結果にかかわらず、最終試験の合格条件を満たしたことになる。」
「さらに、本人の希望に基づき、第三段階の試験も特別に実施したが、その結果も極めて優秀なものだった。」
「以上により、彼は正当な実力と功績をもって、ラスト・トワイライト学院の最終試験を第一位で合格した……」
それを聞いた何人かの生徒が、感想を口にした。
一人が声を上げる。
「すごい! 三体の人形だぞ!」
「俺なんて、たった一体斬るのが精一杯だったのに!」
別の生徒が言った。
「ユラシャン・アキタロウ……」
「聞いたこともない名前だな。」
すると、別の者が答えた。
「きっと、合同訓練キャンプへの参加が少なかったからだろう……」
監督官総長は読み上げを続ける。
「第二位、リョウタ・ヒサシ。人形二体で合格。」
「第三位、ヒカリ・シンドウ。人形二体で合格。」
「ナオキ・ヒダ。人形一体で合格。」
「ダモン・マサト。人形一体で合格。」
「シュンヤ・ハイド。人形一体で合格。」
「ハイヴェン・アキタロウ……」
「人形一体で合格。」
「また、彼には私個人からも敬意を表したい。」
「彼は、八大人形の一体の首を斬り落としかけるという、最も稀な偉業の一つを成し遂げたのだからな。」
「ちなみに、その切断率は……92%に達していた!」
「アキタラオ氏族にとって、まさに誇りとすべき存在だ!」
それを聞いた一人が、驚きの声を上げた。
「92%だって!?」
「それって、王族の一族の子弟たちの功績さえ上回っているんじゃないか?!」
別の者も口を開く。
「アキタラオ氏族は一体どうなっているんだ?」
「ユラシャンは三体の人形を斬るという稀な偉業で第一位を獲得したと思ったら、今度はハイヴェンが八大人形の一体の首を斬り落としかけるという、さらに稀な偉業を成し遂げたぞ!」
アレスは、その一部始終を見守っていた。
彼の顔には困惑の色が浮かび、心の中で考える。
「まさか……結果の集計に何か手違いがあったのか?!」
「それとも、ハイヴェンは俺と出会う前に、本当に八大人形の一体を斬ろうとしていて……何らかの理由で、そのことを俺に話さなかったのか?」
「だが……なぜ、そんなことを隠す必要がある?」
「あるいは……」
その時、監督官総長の声が彼の思考を遮った。
「そして、最後の名前だ。」
「アレス・シュワン……」
「人形一体で合格。」
アレスの目が大きく見開かれた。
そして、心の中で考える。
「合格だと!?」
「だが……どうしてだ?!」
「俺は人形を一体も斬っていないぞ!」
「それに、なぜハイヴェンが八大人形を斬った功績を成し遂げたことになっているんだ?!」
「一体全体、何が起きているんだ!?」
「待て……!」
「少し考えてみれば、この試験のために想定される準備や、彼らが情報を収集する仕組み……そして、俺が覚えているアリーナの構造や、試験全体の設計から考えると……」
「おそらく、これらの人形は、極めて高度な封印技術によって作り出されたものだ。」
「そして、それを担当したのは、軍の中でも特定の部隊……アリアン血盟軍だ!!」
「王国で最も謎に包まれた軍団!」
「だが、彼らの人数が極めて少なく、抱えている任務があまりにも多いことを考えれば……王国内でのすべての責務を放り出して、学院の最終試験の監督にやって来るなど、道理に合わない。」
「おそらく、アソカ・テツヤ卿はアリアン血盟軍の一員なのだろう!」
「それなら、彼があれほど特殊な封印技術を扱い、これらの人形を作り出せた理由も説明がつく!」
「だが、一人だけでこれほど多くの人形を監視するのは不可能だ。」
「それに、索敵技法を使用すれば、アソカ卿が人形の位置を正確に感知する能力にも悪影響が出るはずだ。」
「だからこそ、戦闘を担当する二十人の監督官とは別に、ほかの監督官たちが常に監視役として配置されていたんだ!」
「これらの情報から、アソカ・テツヤ卿の能力を推測できる。」
「おそらく彼は、人形の位置とその周辺にあるものを正確に感知できる。」
「さらに、人形を斬るために消費されたアルケトラの量も感知できるのだろう。」
「そして、人形が斬られた瞬間、その近くにいる監視役の監督官たちと連絡を取り、合格した生徒の名前を記録させるか、あるいはアルケトラを使って規則違反者を捕らえさせる。」
「だが、それでも監督官たちが共謀する可能性は、たとえ低くとも存在する。」
「だからこそ、まず彼らは、監視役の監督官が存在すること自体を試験の規則に記載しなかったんだ。」
「そして、二人のヘクターのオーラの陰に隠して、その事実を覆い隠している。」
「もっとも、ヘクターといえども、その能力には限界がある。」
「だが、そもそも、どの生徒が疑うというんだ?」
「結果の集計が、二人のヘクターによる超常的な技法ではなく……こんな単純な戦略によって行われているなどと!」
「俺でさえ、シロが三体目の人形を斬った時に、見知らぬ監督官たちが介入してこなければ、おそらく気づかなかっただろう。」
「そして二つ目に……」
「アソカ・テツヤ卿自身が、斬られた人形に残されたアルケトラの本質の痕跡を確認し、生徒たちの剣に存在するアルケトラの本質と照合する。」
「それだけでなく、監視役の監督官たちが集めた結果、さらには戦闘を担当する監督官たち自身が記録した結果とも照合するんだ!」
「アリーナ全体を覆うことはほぼ不可能なのだから、戦闘を担当する監督官たちにも、結果を記録する権限が与えられている可能性が高い。」
「この推測なら、試験の前後に俺たちの剣を回収した理由も……結果の発表まで、丸々三時間も遅れた理由も説明できる!」
「だが……まだ疑問が残っている。」
「これが俺の合格と、一体何の関係があるんだ?!」
「待て……!」
突然、アレスは鞘から剣を抜き、ユルヴァナを注ぎ込んで強化しながら、心の中で呟いた。
「もし俺の推論が正しければ……この剣は……」
アレスは一瞬、驚いた。
だが、すぐに自信に満ちた笑みを浮かべて言った。
「これで……すべての辻褄が合った。」
そして――
アレスが手にしていたのは、ハイヴェンの剣だった!
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