第五章「自信か、それとも傲慢か?」
試験が始まった。
大多数の生徒たちが、罠を慎重に見極めるために、速度を抑えて走り始める中――
ハイヴェンは、その流れに真っ向から逆らうように、開始直後から狂ったような速度で駆け出し、瞬く間に全員を大きく引き離していく!
タイガは、頭上へ落下しかけた金属製の網を間一髪でかわす。
そして、はるか前方へと遠ざかっていくハイヴェンへ視線を向けた。
目を見開き、近くを走っている友人へ叫ぶ。
「いったい何をやってるんだ、あいつは?! 最初から速度を上げることがどれだけ危険なのか、あいつには分からないのか?!」
レンタは、目の前に現れた穴を飛び越えながら答える。
「いや……むしろ、あいつはその危険性を十分に理解しているんだろう。それでも、自分の実力に賭けて、最初から速度を上げることを選んでいるんだ」
タイガは一瞬黙り込み、わずかに眉をひそめる。
「なんて傲慢なんだ……」
その瞬間――
レンタの叫び声が、耳を貫いた。
「タイガ! 気をつけろ!!」
タイガはようやく、自分が暗い色をした草の生えている場所を踏んでいることに気づいた!
直後――
かすかなバネの音が聞こえた。
そして次の瞬間、地面から一本の槍が斜めに突き出してくる!
その距離は、一メートルにも満たない!
タイガの瞳孔が限界まで縮む。
必死に身体を傾け、どうにか槍をかわす。
しかし、息を整える暇すらない。
再び、先ほどと同じかすかなバネの音が耳を打った。
直後、別の槍が斜めに突き出してくる!
その距離も、一メートルにも満たない!
タイガは即座に右足を踏み込み、横へ身を投げ出す。
そして、またもや間一髪で槍をかわした!
だが、その勢いでバランスを崩し、倒れかける。
そこへレンタが素早く右側から身体を支えた。
「大丈夫か?!」
心配そうに尋ねるレンタ。
しかし、タイガは答えなかった。
ただ、遠ざかっていくハイヴェンを見つめながら、心の中で呟く。
「俺は、たった一つの罠を、レンタに助けてもらいながら、しかもこの控えめな速度で……どうにか切り抜けた」
「それなのに、あいつは少なくとも三つ……いや、四つは通り抜けている。それも俺より遥かに速い速度で……そのうえ、難易度は何倍も高い!」
「それなのに……」
「あいつは、まだあれほど冷静なのか……」
「これが……才能……」
「俺は、あいつを傲慢だなんて言った自分こそが馬鹿だった……」
................................................
その頃――
ハイヴェンは走りながら、冷静に思考を巡らせていた。
「道の全長も、罠の数も、その難易度も分からない以上……最も合理的な選択は、最初は速度を抑えて体力を温存しながら、罠を避けることに集中することだ」
「そして、罠の難易度に慣れてきたところで、徐々に速度を上げていく」
「この選択が理性的で、最も合理的なものだとしても――」
「こういう悪辣な試験では話が違う」
「合理的な判断こそが、最も早く失格へ辿り着く道になることがある!」
「それは最初から明らかだった」
「四つの道を用意し、第一の道と第四の道の差を、見た瞬間に衝撃を受けるほど極端にしたことも……その一つだ」
「それでも、俺の選択が誰にとっても最善とは限らない」
「だが、俺は自分の身体が疲労にも、不意の事態にも耐えられると確信している」
時間が経つにつれ、ハイヴェンは数多くの罠に遭遇していった。
中には一目で分かるものもあれば、巧妙に隠され、かろうじて気づけるものもある。
そのため、彼は何度も速度を落とさざるを得なかった。
ある時、ハイヴェンは地面に仕掛けられた、ありふれた罠を飛び越えた。
――だが、その直後。
地面から鉄の鎖が飛び出し、彼の足を捕らえかける!
ハイヴェンの目が、一瞬だけ大きく見開かれた。
空中で身体をひねり、鎖のすぐ横へ両手をついて着地する。
そして、両手で地面を力強く押し、その反動を利用して身体を跳ね上げる。
次の瞬間には、再び足から着地していた。
しかし、バランスを取り戻す間もほとんどない。
――かすかなバネの音。
ハイヴェンは目を細める。
「くそっ……!」
「一つを越えたと思ったら、もう一つか!」
三本の槍が、凄まじい速度でハイヴェンへ迫る!
身体を傾け、一つ目をかわす――
右へ跳び、二つ目をかわす――
「三本目は真正面!」
ハイヴェンは剣を抜く。
正確な角度で三本目の槍を受け止め、その軌道を逸らした!
そして地面へ着地し、息を整えながら思考する。
「危なかった……」
ハイヴェンは後ろを振り返る。
最も近い競争相手でさえ、まだかなり遠くにいる。
「この戦略は功を奏している」
「最後の罠ではかなり速度を落としたが、それでもまだ先頭を維持している……」
その時、ハイヴェンは巨大な看板を目にした。
そこには――
『第三区』
そう書かれている。
「つまり、道の半分以上を終えたということか」
「どうりで罠の難易度が上がっているわけだ」
「この状況なら……戦略の第二段階へ移る」
「速度を中程度まで落とし、ギリギリで先頭を維持する」
「これ以上、差を広げる必要はない」
「危険のほうが、得られるものより大きい」
「特に、半分以上を越え、道の終わりが近づいている今……生徒たちの心理も変わってくる」
「罠への警戒が薄れ始める一方で、先頭から遅れていることへの焦りは強くなっていく」
「そして、道が長くなればなるほど、その焦りはさらに大きくなる」
「何しろ、競争相手は他の三つの道にもいる」
「それに、この第三、第四の区間こそ……仕掛けを作った側にとって、最も危険で、最も悪辣で、最も狡猾な罠を仕掛ける絶好の機会だ」
「いや……」
「俺はもう、迫り来る災厄を感じ取っている……」
......................................................




