第45章「もう二度と逃がさない……そんなに簡単には!」
数分後――
ハイヴェンは、三体目の人形がある場所へ辿り着いた。
だが……
そこには、すでに斬り倒された人形があった。
「どうやら……遅かったようだ」
ハイヴェンはすぐに周囲へ視線を走らせる。
そして――
地面に落ちているアレスの剣に気づいた!
その表情が険しくなる。
ハイヴェンは即座に周辺の捜索を始めた。
まずは、アレスが通ったはずの道から。
戦闘の痕跡が残っていないか、必死に探しながら考える。
「くそっ……遅すぎた!」
「あの時から……あいつがアレスと互角の相手だと知っておくべきだった!」
ハイヴェンの脳裏に、アレスが初めてシロへ襲いかかり、シロが見事にそれを防いだ時の光景が蘇る。
「彼を一人で行かせるべきじゃなかった……」
「だが……そもそも、アレスが負けるなんて、どういう理屈だ?!」
「三十年の経験を持つ監督官たちとさえ渡り合える……比類なき天才、その頂点級ジョタルなんだぞ!」
「くそっ!」
「今の俺にできるのは……最悪の事態が起きていないことを願うだけだ!」
……
それから数分。
木の枝から別の枝へと飛び移りながら捜索を続けていたハイヴェンは――
遠くに、アレスの姿を見つけた!
アレスは、指定された道から大きく外れた場所から、ゆっくりとこちらへ歩いてきていた。
ハイヴェンは一瞬、訝しむ。
だが、すぐに彼のもとへ向かう。
そして地面へ降り立ち、アレスの前に立った。
「アレス! ようやく見つけた!」
「お前の剣が地面に落ちているのを見た時は、本当に心配したぞ」
ハイヴェンは剣を差し出す。
アレスはそれを受け取ると、何も言わずに鞘へ収めた。
そして――
再び、ゆっくりと歩き始める。
ハイヴェンもその隣を歩きながら、話しかける。
「それで……ユルシャンとは何があった?」
「見つけることはできたのか……?」
アレスが遮る。
「逃げられた……」
「三体目の人形を斬るのを、止められなかった」
「それに……あいつの本当の名前は、ユルシャンじゃない」
「シロだ」
ハイヴェンはしばらく無言で隣を歩く。
そして、やがて口を開いた。
「……すまない」
「途中で、たまたま警備のいない青い人形を見つけたんだ」
「念のため斬っておいたから……少し遅れた」
「数秒くらいなら、大した影響はないと思ったんだ」
アレスは一瞬、足を止める。
そして――
「いや……」
「むしろ、お前がそうしてくれてよかった」
「ハイヴェン……試験終了まで、あとどれくらいだ?」
ハイヴェンは少し考える。
「ええと……それについては……」
「正確には分からない」
「だが……たしか、残り十二分ほどだ」
「それだけあれば十分だ……」
その瞬間――
アレスは突然、左方向へ向かって全速力で駆け出した!
怒りに満ちた声で、自分に言い聞かせる。
「シロ……たとえお前が望まなくても、必ず俺の質問に答えさせる!」
アレスは木々の枝の間を、凄まじい速度で飛び移っていく。
その後ろをハイヴェンが必死に追いかける。
「おい! 待てよ!」
やがてアレスは、一人の監督官が人形を守っている場所の隣にある木へ辿り着いた。
そして――
太い枝の上で立ち止まる。
遠くにある人形を見つめる。
それから数秒後――
ハイヴェンもようやく追いついた。
大きく息を吐きながら言う。
「少しはゆっくり走れよ……」
「俺はお前ほど速くないんだから……」
アレスは監督官を指差す。
「お前……あいつを最長でどれくらい足止めできる?」
ハイヴェンは数瞬考える。
「確実なことは言えない」
「試験が始まってから、監督官の誰とも本気で戦ったことがないからな」
「だが……一定時間、あいつを足止めできるかどうかは、俺たちに人形を破壊させまいとして、あいつがどこまで本気で阻止してくるかにかかっている」
「俺たちがシロを追っていた時に見た、シロと監督官たちとの戦い……あれを基準にすると――」
「最悪の場合、もし監督官が自分の命が懸かっているかのように人形を守るなら……」
「俺が稼げるのは、最大でも四十秒から五十秒だ」
アレスは即答する。
「それで十分だ!」
「今すぐ始めるぞ!」
二人は、人形へ向かって走り出す。
その最中、ハイヴェンが口を開く。
「だが、気をつけろ……」
「試験が始まってから俺が見てきたすべての人形の中で……」
「こいつは、最も濃い赤色に近い」
「もしかすると……八大に次ぐ、第二レベルかもしれない!」
アレスは前を見たまま答える。
「俺を甘く見るな、ハイヴェン」
「もう覚悟は決めた」
「たとえ黒色だったとしても……俺は斬る!」
ハイヴェンはニッと笑う。
「その意気だ!」
「俺が先に行く!」
ハイヴェンは全速力で、人形の場所へ真っ直ぐ向かっていく。
そして、心の中で考える。
「まずは……あいつを人形の場所から、少なくとも二十メートルは引き離さなければならない」
「そして、それを実現しながら一対一で戦うための方法……」
「以前にも言ったが、おそらく最も有効なのは――」
「生命に関わる場所と、そうでない場所へ、連続して攻撃を叩き込んで注意を逸らすことだ」
「まるで、自分一人で監督官を倒せると思い込んでいる、生意気なガキの戦い方を真似する!」
「この作戦の弱点は……連続攻撃の速度に完全に賭けていること」
「そもそも……防御する時間なんて最初から存在しない!」
その頃――
アレスは人形の近くへ進み、身を隠していた。
そして、飛びかかる絶好の機会を待ち構える……
次の瞬間――
何の前触れもなく、ハイヴェンが監督官へ襲いかかった!
最初の一撃。
狙いは――
右足!
監督官は、その瞬間に考える。
「先に隠れたり、様子を窺ったりしても無意味だと分かっている」
「俺なら、すぐに見つけてしまうからな」
「だから……こいつは区域に入った瞬間、即座に攻撃してきたわけか」
「賢い判断だ」
「だが……」
監督官の表情が、わずかに歪む。
「一体……足を狙って攻撃を始める奴が、どこにいるんだ?!」




