第38章「永遠に歪んだ……」
そして――
衝撃的な光景が、繰り広げられた。
意志とは無関係に。
一瞬の出来事だった。
リョウタの手が動く。
短剣の柄を掴む。
そして――
素早く引き抜く。
額の中央から……
右目の脇を通り……
そして――
左側の顎へと至る。
リョウタは、自らの頭を裂いた!
次の瞬間。
自分自身が、そんな技術を身につけていることすら知らなかったほどの技量。
荒々しいほどの速さ。
そして――
信じ難いほどの正確さ。
十七本のハンマーを――
二十五秒にも満たない時間で、突破した!!
終着点の門へ辿り着き――
その先へと抜ける。
そして――
走り始めてから、二十秒にも満たないうちに。
突破者の広場へと到着した。
……
道を、たった一人で抜け。
突破者の広場へ辿り着いた後。
彼は、その場に立ち尽くしていた。
動かない。
何も言わない。
苦しそうに息をしながら。
両目は、いまだ限界まで見開かれている。
一度たりとも――
瞬きをしない。
そして、しばらくの間。
その場を支配したのは……
静寂。
完全な静寂……
まるで、周囲に何十人もの騒がしい突破者がいることなど、最初から存在しなかったかのように。
ただ――
静寂だけがあった……
数分が過ぎた。
すると。
彼の右手が、わずかに持ち上がる。
ゆっくりと。
さらに、ゆっくりと。
そして――
右半分の顔へ触れる。
しばらくして。
その手を下ろす。
彼は、自分の手を見る。
そこには――
血が付着していた。
それを見つめるリョウタの瞳には、重い感情が宿っていた……
後悔?
悲しみ?
無力感?
悔恨?
憎しみ?
怨恨……
――そんな言葉で、本当に今この瞬間のリョウタの感情を表せるのか?
彼は、心の中で自分自身に問いかける。
「俺は……あいつに、いったい何を理解してほしいと思っていたんだ?!」
「世界は、不正で……」
「残酷で……」
「野蛮で……」
「危険だ。」
「氏族は、才能にしか興味を持たない。」
「王国は、その不公平な制度に逆らう者を、冷酷に踏みにじる。」
「それでも――」
「俺たちは、そのすべてを理解していながら、他に選択肢があるという、それだけの理由で……」
「このすべてに関わることを、強いられている。」
「俺は……思い上がっていたのか?」
「誰もが、論理と狂気の間にある細い糸の上に立てる天才だと……」
「慎重さと、危険の間に。」
「理解と、否認の間に。」
「盲目的な信仰と、自制と……」
「そして、完全な崩壊の間に。」
「俺はずっと、自分が生きている場所が――」
「ほとんどの人間には耐えられない、細い一本の糸の上だと分かっていた……」
「だが……」
「だが、お前は……」
「俺が見込んだんだ。」
「俺が去った後、お前なら指導者になれると……」
「そんなお前でさえ――」
「ほんの数分だけでも、俺と一緒に、この糸の上に立つことすらできなかったのか?」
「それほどまでに……」
「不可能なことだったのか?」
「お前が反逆し――」
「俺に真実を明かすよう強いた、その時でさえ……」
「俺は、どんな最悪の結果になろうと――」
「その責任を、自分一人で背負うと決めていた。」
「なのに……」
「なぜだ?!」
「なぜ、事態をさらに悪化させた!?」
「なぜ、最低限の理屈さえも踏み越えた!?」
「エヴァンダーが、何をした!?」
「お前の中に、あの炎を灯したのは俺だった!」
「なのに、なぜ――」
「俺の首を斬ろうとしなかった!?」
「あいつの代わりに……俺を殺せばよかっただろう!!」
「なぜだ?!!」
……
彼は、しばらく黙り込んだ。
呼吸が、少しずつ落ち着いていく。
そして――
再び、口を開く。
「……お前は、知っていたからだ。」
「お前は、あの瞬間――」
「俺に、お前を止める力があることを……よく分かっていた。」
「問題は、単なる力の差じゃない。」
「どれほど強大な戦士だろうと――」
「一瞬の隙があれば、人は死ぬ。」
「違う。」
「お前は、もっと深く理解していた。」
「俺たちのどちらかの命に危険が及んだと俺が感じたなら――」
「俺は、成功する可能性を捨ててでも、ユルヴァナを使って生き残ることを選ぶ。」
「……お前とは違ってな。」
「それどころか――」
「俺はあの絶望的な状況で、すでにユルヴァナを使おうとしていた。」
「お前たち二人を救うために。」
「たとえ、それによって……」
「俺たち三人全員が、失敗することになったとしても……」
そして――
リョウタは、皮肉の混じった小さな笑いを漏らす。
「……この卑劣な野郎。」
「お前の判断は……」
「あまりにも正確だった。」
「あまりにも速かった。」
「賭けがすでに失敗していたと、俺が気づくよりも……さらに速く。」
「結局――」
「お前は、真実に耐えられなかった。」
「そして、復讐する覚悟もなかった。」
「ただの……臆病者だ。」
「エヴァンダーの罪について言えば……」
「裏切り者の友人を持っていたこと。」
「そして――」
「無能な指導者を持っていたことだ。」
「孤独に耐えることすらできないほどの――」
「無能な指導者を。」
突然。
……
彼は、黙り込んだ。
長い沈黙……
ほんの一瞬。
まるで――
この光景が……
初めてではないかのように。
そして最後には。
その心が、痛みに押し潰される。
もし世界が――
何百回焼き尽くされたとしても。
それでも決して埋め合わせることのできないほどの、痛みに……
その光景は――
リョウタの、空虚な瞳とともに終わる。
この世界に……
もう二度と、いかなる善も見出すことのできない――
そんな瞳とともに……
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