第36章「最強の敵よ、いったいどんな大災厄がお前を殺した!」
三人は走り続ける。
そして、リョウタの命令が次々と飛ぶ。
「左!」
「右! 二メートル進んだら伏せろ!」
「右!」
「そのまま!」
そして――
以前との違いは、何よりもその効率だった。
リョウタが命令を言い終えるよりも早く、三人は即座にその指示を実行していた。
そんな動きをしばらく続け――
ついに、地平線の向こうに終着点がはっきりと見え始める!
近い……
もう、すぐそこまで来ている……
リョウタは命令を出しながら、考える。
「もう九十パーセント以上は越えた。」
「動きは、さらに速く……そして、さらに不規則になっている……」
「予測の的中率も、六十パーセント程度まで落ちた。」
「判断にも時間がかかるようになった……いや、正しい答えを導き出し、命令を出せるのは、実行されるほんの一瞬前がやっとだ!」
「それでも……こいつらはまだ持ちこたえている。」
「それどころか――俺が命令を口にした、その瞬間に実行している……!」
視界の端から、エヴァンダーとミズシを見る。
「やはり……最後にものを言うのは、個々の能力か。」
「俺たちはすでに四つの死体を通り過ぎた。」
「これほどの難易度なら、俺たちより先にここまで辿り着いた、あの四人の最上級の精鋭が死んだことにも、別に驚きはしない。」
「だが……」
「俺が本当に気になっているのは――」
「いったい、どんな大災厄が……あいつを倒したのかだ。」
リョウタは遠くにある、五人目の少年の死体へ目を向ける。
その少年は、終着点まであと少しというところまで近づいていた。
そして、地平線にはその終着点がはっきりと見えている。
リョウタは、考える。
「トシロウ・ヤマト……」
「ヤマト氏族の末裔。」
「二級貴族に数えられる名門氏族だ。」
「父親はカギ・ヤマト。ヘクター上位段階。」
「氏族内の支配派閥に属しているとはいえ、氏族長とは遠い親戚にすぎず、共通するのは四代前の祖先だけ。」
「おそらく、それが原因で彼は大きく疎外されていた。」
「だからこそ――息子を、アキタラオ氏族に属するラスト・トワイライト学院へ学ばせに送ったとしても、不思議ではない。」
「一年前……」
「合同訓練キャンプの一つで、俺は一度、あいつと公式の決闘をした。」
「それを表現するなら……」
「熾烈な……」
「死闘だった。」
「最後には……あいつの攻撃を一つ、かろうじて躱し、決定打を叩き込んだ……」
「直後、監督役が決闘を止め、俺の勝利を宣言した。」
「そのとき、あいつは怒りのあまり木剣の柄を強く握り締め――」
「粉々に握り潰した。」
「俺は、あいつを呆然と見つめていた。」
「木剣を怒りで壊したことに驚いたわけじゃない。」
「仲間たちの顔に浮かんでいた、あの衝撃の表情のせいでもない。」
「その瞬間、俺の頭を占めていたのは――ただ一つ。」
「気づいてしまったことだ……」
「俺は十六歳だった。」
「そして――」
「あいつは十五歳だった。」
「たった一年しか違わない。」
「なのに……」
「その一年の差が、もし何らかの形で消えたなら――」
「俺は、あいつに完膚なきまでに敗北する。」
「あの瞬間、そう感じた……」
「だから、あの日から――」
「俺は一時間たりとも、訓練をやめていない。」
「おそらく……あいつも同じだ。」
そして――
初めて。
リョウタの顔を、恐怖が覆った。
そのまま、思考を続ける。
「最強の敵よ……」
「いったい、どんな大災厄がお前を殺した!」
……
三人は走り続ける。
トシロウの死体まで、残り二十メートル。
リョウタは考える。
「来る……」
「いつでも……」
残り十五メートル。
心の中で叫ぶ。
「必ず来る……!」
……
そして――
一つのハンマーを通り過ぎた。
そのまま二メートルも進まないうちに――
突然!
巨大な鐘の音が、三人の耳を貫いた!
ゴォォォン――!!
ハンマーが、止まる!
そして、三人も即座に足を止めた。
リョウタは周囲を見回す。
その表情は強張っている。
音の発生源を探そうと、必死に周囲へ視線を走らせる。
エヴァンダーは素早く剣を抜き、戦闘態勢に入る。
一方、ミズシはその場に留まり、周囲を静かに――そして警戒しながら見渡していた。
巨大な鐘の音は、三秒間鳴り響いた。
そして――
三秒目。
遠くにあるハンマーが、ゆっくりと動き始める。
次第に。
次第にその動きは速くなり――
凄まじい速度で、三人へと迫ってくる!
その瞬間――
三人は理解した。
最大の災厄……
もし、数分どころか何日間もここに座り込み、必死になって予測しようとしたとしても――
決して予測できないであろう、最大の災厄。
彼らの頭脳が、それを導き出せなかったからではない。
あらゆる可能性をもってしても――
それを受け入れることそのものを、頭脳が拒絶していた。
だからこそ――
そもそも、彼らの頭に浮かびすらしなかったのだ。
なぜなら、これは――
分析し、突破を試みることのできる罠ではない。
ただ――
数分の延期すら議論する余地のない、死刑判決なのだから!
その瞬間。
三人は理解した。
パターンが――
変わった!!
思考が、一瞬にして彼らの頭の中を駆け巡る。
エヴァンダーが、リョウタへ叫ぶ!
「天にかけて! これは何だ!?」
リョウタは、いまだ遠くのハンマーを見つめている。
その顔には、明らかな驚愕。
そして、その声には困惑が滲んでいた。
「分からない……」
そして――
考える。
「天地にかけて……」
「天地にかけて……」
「俺が予測したのは、大災厄であって――」
「死刑判決じゃない!」
リョウタは、トシロウの死体へ視線を向ける。
そして、激しく見つめる。
「いったい……」
「どんな地獄を通り抜けて、ここまで来たんだ……」
「俺の計画のほうが正確だった。」
「俺たちは、お前より速かった。」
「この鐘が鳴るのは、たった四分半後だ。」
「どうやって――」
「どうやって、この地獄を三十メートル以上も越えた!?」
「どうやって、異なるパターンのハンマーを十二個以上も突破した!?」
「くそっ……」
「くそっ!!」
「俺たちがここへ来たのは――パターンが変わる、わずか十秒前だった!」
「それに、この忌々しい鐘は――」
「きっと、闘技場の最後にしか設置されていない!」
「なんて狡猾なんだ……」
「忌々しい奴らめ!!」
「本当に……」
「即時の反応だけに頼る以外、選択肢はないのか!?」
「いや……!」
「そんな賭けはできない!」
「エヴァンダーとミズシが一緒なんだぞ!」
「何か方法があるはずだ!」
「そうだ……」
「俺の計画のほうが、あいつより正確だった!」
「あいつは、何かを間違えたに違いない!」
「そうだ……!」
「あいつは、新しいパターンの分析を間違えたせいで死んだんだ!」
「おそらく……逆のパターンだ。」
「俺は、それをすでに何度も見ている……」
「まだ可能性はある!」
「完全に不可能というわけじゃない!」
……
リョウタが混乱し、必死に突破口を探しているその間。
ミズシは、ただ黙って立っていた。
重い沈黙……
その顔には、他の二人と同じように、衝撃の色が浮かんでいる。
それなのに――
何かが、違った。
その疲れ切った瞳は――
まるで、底のない深淵そのものだった。
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