第32章「パターンそのものが最大の罠なのか?!」
そして、数分が経った。
リョウタが、ようやく口を開く。
「一見すると、巨大な広場に見えるかもしれない。」
「だが……石柱の区域ほど大きくはない。」
エヴァンダーが、少し気の抜けた口調で尋ねる。
「何を根拠に、そこまで言い切れる?」
リョウタが答える。
「簡単なことだ。」
「この広場からは、終着点の門が肉眼でかろうじて確認できる。」
「それだけでも……石柱の区域より何倍も小さいことが分かる。」
エヴァンダーは、さらに目を凝らして集中する。
そして、皮肉めいた口調で言う。
「まさか……あの点を終着点の門だと判断したんじゃないだろうな?!」
リョウタは、わずかに眉をひそめる。
「お前が何を見ているのかは知らない。」
「だが……俺には、はっきり見えている。」
「まあ、それはいい。」
「少なくとも……これで進むべき道は、ある程度絞れる。」
「この広場は、ほとんど不可能に思えるほど難しい。」
「だが実際には――」
「このハンマーの動きは、決してランダムじゃない!」
エヴァンダーが目を見開く。
「どうやって?!」
リョウタは、広場を見つめたまま続ける。
「この設計そのものが、最大の罠なんだ。」
「俺がこれまで見てきたものの中でも……最も狡猾なものの一つだとすら言える。」
「この広場は、石柱の区域にあった小さな柱と、ほぼ同じ大きさの柱で構成されている。」
「そして、そのすべてが上部で鉄の棒によって繋がれている。」
「そこから……巨大な石のハンマーが吊り下げられている。」
「見た目だけなら、巨大な迷路にしか見えない。」
「だが実際には……」
「分かりにくい三本一組の小さな集団に分かれている!」
「しかも、その組み合わせを見抜くことは……巨大なハンマーの動きを正確に観察しなければ、ほぼ不可能だ。」
エヴァンダーは、驚愕したままリョウタを見る。
「お前……一体何を言ってるんだ?」
「巨大なハンマーの動きを正確に観察するだって?!」
「そんなこと……そもそも可能なのか?!」
リョウタはため息をつく。
「まあ……最初に聞けば、俺の言っていることが馬鹿げて聞こえるのも分かる。」
エヴァンダーが即座に返す。
「馬鹿げてるどころか……その通りだ!」
「おい、最後まで聞け。」
「巨大なハンマーの正確な動きを観察し、そこから柱の三本一組の配置を推測できるようにしている、唯一の要因は……」
リョウタが言葉を切る。
そして――
「巨大なハンマーの動きが、一定だからだ!」
エヴァンダーの目が、大きく見開かれる。
広場を見る。
リョウタを見る。
再び広場を見る。
そして、疑うような目でリョウタを見る。
「……一定?」
リョウタは続ける。
「説明する。」
「一つの組は、三本の柱で構成されている。」
「そのうち一本だけが、残りの二本よりわずかに細い。」
「そして三本の柱は、すべて上部で鉄の棒によって繋がれている。」
「巨大なハンマーは、その三本の中央に吊り下げられている。」
「ハンマーの動きそのものは……一見すると、比較的単純な二つの動きに分けられる。」
「ハンマーは常に、二本の通常の柱の中間地点から動き始める。」
「そこから、細い柱の右側へ向かうか……」
「あるいは、細い柱の左側へ向かう。」
「右側へ向かう動きは、加速する。」
「左側へ向かう動きは、減速する。」
「さらに、細い柱の右側へ向かうハンマーは、反対側……細い柱の左側へ向かうハンマーのおよそ二倍の速度で動く。」
「そして、その高さも地面からおよそ半メートル高く……全体として七十から八十センチほどになる。」
「だから……」
「右側へ向かう加速したハンマーなら、ただ身をかがめるだけでやり過ごせると思うだろう。」
「だが――」
「五分ごとに、加速する動きと減速する動きが入れ替わる。」
「つまり、そこには……無視できない余計な危険が生まれる。」
エヴァンダーが、すぐさま遮る。
「待て……」
「待て、今なんて言った?」
「五分ごとに……入れ替わる?」
リョウタは頷く。
「そうだ。」
「五分ごとに、二つの動きが入れ替わる。」
「細い柱の右側へ向かっていた加速する動きは、減速する動きへ変わる。」
「それでも、進む方向は右のままだ。」
「一方、細い柱の左側へ向かっていた減速する動きは、加速する動きへ変わる。」
「こちらも、進む方向は左のままだ。」
エヴァンダーの表情が変わる。
「じゃあ……」
「さっき、広場を見ていた時に感じたあの違和感……」
「ただの錯覚じゃなかったんだな!」
リョウタが答える。
「ああ。」
「おそらく……あの切り替わりが原因だ。」
エヴァンダーは、再び広場を見る。
そして、声を上げる。
「待て。」
「だが……そうなると……」
「どうやって、そもそもここを通り抜けるんだ?!」
リョウタは、当然のことのように言う。
「決まっているだろう?」
「正しいパターンを覚える。」
「そして、時間が切れる前に……正しい道を走り抜ける。」
エヴァンダーが呆れたように叫ぶ。
「どうしてそんなに簡単なことみたいに言えるんだ?!」
「俺が言っているのは――」
「正しいパターンを推測して……」
「それを覚えて……」
「さらに、正しい道を選んで走り抜ける。」
「それを……五分以内に全部やるんだぞ?!」
リョウタは少し考える。
「まあ……それについては。」
「俺なら、正しいパターンを推測して覚えるまでに……二分から二分半もあれば十分だと思う。」
「そして、残りの二分間。」
「前の区域で四本目の巨大な柱を通過した時に、俺たちが走っていた集団の平均速度で走ると仮定すれば……」
「成功する可能性は、決して低くない。」
エヴァンダーの目が輝く。
「素晴らしい!」
「すごいじゃないか!」
「じゃあ……どうして、まだ始めてないんだ?」
リョウタは答えない。
ただ、広場に転がる五人の死体へ視線を向ける。
その視線の意味を理解したエヴァンダーの表情が変わる。
「……ああ。」
「そういうことか。」
「改めて考えれば……」
「あいつらには、広場を十分に観察する本当の時間があったはずだ。」
「少なくとも、お前が今話したことの半分以上は……気づけたはず。」
「いや……」
「おそらく、本当にそこまで気づいていた。」
「だったら……」
「どうしてだ?!」
「待て!」
「まさか……」
「この上に、まだ別の罠があるのか?!」
リョウタが答える。
「それに加えて……あの妙な言葉がある。」
「『一部の場合を除く』。」
「一見すると、あまりにも意味不明だ。」
「だが……」
「前にあった言葉と繋げれば、意味が変わる。」
「『年長者に従え、たとえその言葉が意味不明に思えても……一部の場合を除く』。」
「ここから……少し話が複雑になる。」
「これまでと同じように、『年長者』という考えを柱と結びつけるなら……」
「ひび割れた小さな柱は、最も安全だった。」
「そして――」
「ほぼ同じ考え方が、巨大な柱にも使われていた。」
「もちろん……言葉を文字通りに受け取るのは、愚か極まりない。」
「だが……」
「その言葉の裏にある意味を考え、最悪の可能性を想定するなら……」
リョウタは、しばらく黙る。
「もしかすると……」
「パターンそのものが……」
「最大の罠なのかもしれない……」
エヴァンダーとミズシの瞳孔が、一瞬収縮する。
エヴァンダーが困惑した声を漏らす。
「お前……」
「どうして……」
「待て……」
「だが……なぜだ?!」
リョウタは、毅然とした口調で答える。
「前にも言ったはずだ。」
「この種類の試験は、理論上でさえ……全員が生き残るようには作られていない。」
「栄光に惑わされた、無謀な者たちが犠牲にならなければ……」
「試験を突破するために必要な、いくつかの基本的な秘密が明らかにならない。」
「残念ながら……俺たちのタイミングは最悪だった。」
「俺たちがここへ来た時には……」
「あいつらは、もう死んでいた。」
そして、リョウタは目の端から下にいる者たちへ視線を向ける。
「それに……」
「俺には……あの石のような心で、こいつらを死地へ送り込むことなんてできない……」
エヴァンダーは下にいる者たちを見る。
そして、再びリョウタへ視線を戻す。
「だが……この場合……」
「俺たちは、どうすればいい?」
リョウタは再び広場へ視線を戻す。
「もう少し……観察を続ける。」
「何か、他のことにも気づけるかもしれない……」
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