第三章「アレス! 天と地にかけて、いったいお前は何者だ?!」
ハイヴェンは荷物を携え、アンティラ山脈へ向かって木々の間を歩いていた。
それでもなお、ナイリスの言葉が頭から離れず、困惑しながら思考を巡らせる。
「アレス……」
「昔から、ずっと謎に包まれている……」
「この年齢でピーク・クレターに到達することを可能にした、あの途方もない才能!」
「そして、その事実を誰にも隠していたこと。俺がそれを偶然知ったのも、以前の個人訓練の最中だった。あのとき、俺がアレスに大きな一撃を加えそうになって、最後の瞬間に俺を避けるため、あいつはユルヴァナを使わざるを得なかった」
「そのことを問いただしたときも、あいつは話を逸らそうとして、俺に秘密にしておいてくれと頼んできた」
「それとも、監督者本人にさえほとんど挑めるほどの、あの剣術の腕か!」
「しかも、それを特に集団訓練のときには、徹底的に隠していた」
「それに加えて、謎に包まれた出自……」
「確かに、あいつは正式にはシュアン氏族の一員として登録されている。だが、天と地にかけて、そもそもシュアン氏族とは何なんだ?!」
「俺は一度も聞いたことがない!」
「少し調べてみても、それについての情報は何一つ見つからなかった!」
「これには一つの説明しかない」
「そもそも、正式に登録された氏族ですらないんだ!」
「そして、ここから二つの疑問が生まれる」
「一つ目。正式に登録すらされていない、つまり最も弱い五級氏族よりも下に位置する氏族から、どうしてこれほどまでの途方もない才能が生まれる?!」
「そして二つ目、何より重要なのは……」
「正式な氏族ですらない一族の人間が、そもそも貴族氏族の子供たちのために存在するラスト・トワイライト学院へ、どうやって入学できたんだ?」
「そこには三級氏族の人間ですら、ほとんど見かけないというのに……」
「それに、確かに俺はまだピーク・クレターには到達していない」
「だが、俺の力はすでに、ただのピーク・クレター程度では脅かせないものになっている」
「なら……アレスが一体どれほどの脅威だというんだ?」
「だからこそ、姉さんはあそこまで心配して、自分の剣まで俺に渡したのか?!」
ハイヴェンは立ち止まり、しばらく黙り込んだ。
そして、空を見上げ、思いを巡らせながら、再び考え始める。
「アレス……」
「お前のその目……身震いするほどの意志と野望を宿したその瞳が、あの日の俺を目覚めさせた……」
「だが、俺は知っている」
「その瞳の奥深くに、どれほどの悲しみと傷が刻まれているのかも……」
「アレス……」
「天と地にかけて……」
「お前は……何者なんだ?」
............................................................
しばらくして、ハイヴェンはついに森の道を抜けた。
アンティラ山脈が視界に入る。
そこへ向かって歩いていると、二人の人間が話している声が聞こえてきた。
そのうちの一人が、誇らしげにもう一人へ言う。
「なあ、俺は長い間クレターだったんだ。だが、青瑪瑙ユルヴァナの痕跡も持っていてな。最近、それがかなり成長したんだ」
友人が驚いた様子で答える。
「何だって?! お前、効率が悪かったんじゃなかったのか?」
最初の男が答える。
「そうだ。天が俺の努力に報いてくれたんだ」
「いつかはヘクターになれると思う!」
友人は皮肉げに笑う。
「おいおい、たかが青瑪瑙ユルヴァナの痕跡だろ。あまり夢にのめり込むなよ」
その会話を聞いたハイヴェンは、考え始める。
「ユルヴァナ……」
そして、頭の中に一つの記憶が浮かび上がる。
ハイヴェン、アレス、そして大勢の生徒たちが教室にいる。
彼らの前には教師が立ち、手にした杖で黒板に描かれたいくつかの図を指し示しながら話している。
「まず初めに、人類の半数以上はアルケトラを持っていない」
「そして、アルケトラを持っている者たちでさえ、その半数以上は、極めて少量のアルケトラしか持っていない」
「あるいは、効率が悪すぎるために、オーラを形成することすら完全に不可能であり、したがって、それをユルヴァナへと発展させることもできない」
「最低限の効率に達し、なおかつ許容できる量のアルケトラを持って、初めてアルケトラックと呼ばれる」
「そして、その数は人類全体の四分の一にすら満たない!」
「アルケトラックがアルケトラを凝縮し、オーラを形成し、それを比較的長い期間にわたって絶えず鍛錬し続けると、オーラは徐々に変化を始め、赤いエメラルド・ユルヴァナの痕跡が現れ始める」
「そして、やがて質的な変化が起こり、オーラそのものが完全に赤いエメラルド・ユルヴァナへと変化する」
「その時点で、正式にクレターの初期段階となる」
「ユルヴァナには、四つの主要な階級がある」
「クレター」
「彼らは通常、兵士や氏族の一般的な構成員だ」
「ジュター」
「彼らは主に教師や各部門の監督者となる。そして氏族においては主力となる戦力だ」
「多くのアルケトラ・マスターがそこで成長を止める階級でもある」
「ヘクター」
「軍におけるマーシャルの階級であり、氏族においては将軍に相当する」
「実際、三級氏族の多く、そして四級・五級氏族の大半は、ヘクターを族長としている」
「そして、これらの氏族を分けるのは、彼らが抱えるヘクターの数だ」
「ティター」
「人類世界の頂点だ」
「軍においてはグランド・マーシャルと呼ばれる」
「その権限は王国全土に及ぶ」
「権力において彼らを上回るのは、貴族氏族と王族だけだ」
「それほどまでに、二級貴族氏族でさえ、交渉することも、強力な理由を提示することもなく、その決定を完全に拒否することはできない」
「これらの階級を昇っていく方法については、基本的には最初に説明したものと非常によく似ている」
「アルケトラを使ってユルヴァナを絶えず鍛錬し続ける必要があり、その量的な蓄積によって、最終的にはユルヴァナに質的な変化が起こる」
「これは、同じ階級の中で段階を上げる場合の話だ」
「だが、一つ上の階級へ移るためには、その痕跡の最低必要量に到達しなければならない」
「そして、痕跡の割合が高ければ高いほど、次の階級での潜在能力は大きくなる」
「つまり、ジュターへ突破するには、最低でも青瑪瑙ユルヴァナの痕跡を五十パーセント必要とする」
「だが、これはあくまで最低限だ」
「もし君の潜在能力がより高く、青瑪瑙ユルヴァナの痕跡を七十パーセントまで到達させることができれば、それはジュターにおける、より大きな潜在能力と、より速い成長速度を意味する」
「そして、銀色ユルヴァナの痕跡が現れる可能性も、より高くなる」
「もちろん、これはピーク・ジュターへ到達した後の話だ……」
一人の生徒が尋ねる。
「先生、可能性というのはどういう意味ですか?」
「ピーク・ジュターに到達したということは、しばらくすれば銀色ユルヴァナの痕跡が自然に徐々に形成され、そのままヘクターへ突破できるという意味ではないのですか?」
教師は答える。
「君の言ったことは、半分は正しく、半分は間違っている」
「説明しよう」
「ピーク・ジュターに到達したからといって、銀色ユルヴァナの痕跡を自動的に得られるという意味では決してない」
「むしろ、こう言わせてもらおう」
「ピーク・ジュターで成長を止めた才能は、数え切れないほど存在する」
「どれほど訓練しても、どれほどユルヴァナを鍛錬しても、銀色ユルヴァナの痕跡が現れない限り、その努力のすべてはアルケトラと時間の無駄にすぎない」
「各世代に存在する才能のうち、優れた効率と豊富なアルケトラを持つ、ごく一部の者たちにだけ銀色ユルヴァナの痕跡が現れる」
「そして、彼らはヘクターへ到達することができる」
「その大半は王族や貴族氏族の出身だ」
「正しい部分についてだが、痕跡が一度現れれば、それは最低必要量の痕跡に到達し、ヘクターへ突破することが確実になるという意味だ」
「たとえ最も弱い潜在能力しか持っていなかったとしてもな」
「ただ、時間の問題になるだけだ……」
別の生徒が割り込む。
「先生、先ほど、ジュターへ突破する際の青瑪瑙ユルヴァナの痕跡の割合が高ければ高いほど、潜在能力が大きくなり、ジュターでの成長速度も速くなると言いましたよね」
「そして、銀色ユルヴァナの痕跡が現れる可能性も高くなる、と」
「では、青瑪瑙ユルヴァナの痕跡が一〇〇パーセントに達した場合は、どうなるのですか?」
教師は答える。
「いい質問だ」
「その場合、段階を上がり、突破していく速度は狂気じみたものになる。同世代の者たちを、圧倒的な差をつけて上回るほどにな」
「そして、それ以上に重要なのは、銀色ユルヴァナの痕跡が現れることが確実になるということだ」
「なぜなら、完全な青瑪瑙ユルヴァナの痕跡に到達したということは、君の本当の潜在能力がすでにこの階級を超えていることを意味するからだ」
「ヘクターへ到達するまで、あとは時間の問題にすぎない」
「それでも、このような恐ろしい才能を持った者の数は、極めて少ない」
「それどころか、ティターへ到達した者の多くでさえ、そのような才能を持っていなかった!」
別の生徒が尋ねる。
「ということは、ティターを超えられる者も存在するということですか? それとも、ティターが終着点なのですか?」
教師は答える。
「クレターからピーク・ティターまで。そこまでは、我々が確実に知っていることだ」
「その先については、天上界と、ティターの上に存在する謎の階級について、多くの噂や伝説がある」
「その階級がそもそも存在するのかどうかさえ、確実には分かっていない」
「なぜなら、比類なき最上級の天才たちでさえ、その圧倒的な才能によってピーク・ティターへ到達し、さらにはこの段階の自然な力を遥かに超えていた者たちでさえ、より高位のユルヴァナの痕跡を一切現さないまま、百七十歳を超えない年齢で死んでいるからだ」
「それでも、その謎の階級の存在をめぐる噂はなおも激しく広まり続けた」
「それが、ナクシュラ事件によってほぼ完全に否定されるまでは……」
「その事件において、我々の栄光ある王国アレヴタールの軍を率いる、尊敬されるグランド・マーシャル、ヘヴィス・ウラシが、デモタール王国との国境で秘密任務を遂行していた際、敵の罠に落ちた」
「敵はティターを十二人送り込んできた」
「そのうち三人はピーク・ティターだった!!」
「そして、史上初めての出来事として、グランド・マーシャルのヘヴィスは、彼らを相手に複数の攻防を耐え抜き、そのうち四人を殺し、残り全員に重傷を負わせた」
「三人のピーク・ティターのうち一人など、その後数か月もの間、死の危険にさらされていたほどだ!」
「そして、ヘヴィス卿自身もまた極めて重傷を負い、戦闘を続けることができなかった」
「それどころか、辛うじて命を拾うことができたほどだった」
「それでも、諸王国を震撼させたこの事件によって、グランド・マーシャルのヘヴィスは公然とティター階級の主として認められることになった」
「いや……人類世界の主としてだ!!」
「そして、あの事件以来、その謎の階級の存在そのものへの疑念は、さらに強くなった」
「そうでなければ、同じ階級にいながら十二人のティターと対峙することができる、あの狂気じみた力をグランド・マーシャルのヘヴィスが持っていたことを、どう説明できる?!」
何人かの生徒たちが口々に叫ぶ。
「すごい!!」
「ヘヴィス卿は本当にすごい!!」
「十二人のティターを一人で殺したんだ! なんて狂気じみてる!!」
「我々の王国の誇りだ!」
「いや、人類そのものの誇りであり、その主だ!!」
別の生徒が教師に尋ねる。
「先生、先ほどから『効率』や『アルケトラ』という言葉を何度も口にしていますが、そもそもこの二つにはどんな違いがあるんですか? そして、ユルヴァナとはどう関係しているんですか?」
教師は答える。
「アルケトラは、ユルヴァナを形成するものだ」
「その基盤だ」
「それどころか、異なる階級のユルヴァナそのものが、君が持つアルケトラの量と質を測る尺度となっている」
「もちろん、君が持つ基礎アルケトラの量が多ければ多いほど、より長い時間ユルヴァナを鍛錬できる」
「したがって、成長速度も速くなる」
「そして、アルケトラの量が多いということは、より長時間戦い続け、より多くの技を使用できるということでもある」
「一方、効率とは、アルケトラをどれだけ自在に制御し、その本当の価値を引き出せるかということだ」
「つまり、同じユルヴァナ階級と同じ量の基礎アルケトラを持つ二人がいるとしよう」
「だが、一人目の効率がもう一人の三倍だったとする」
「その場合、二人が同じ技を使えば、一人目の技の威力は二人目の三倍になる」
「あるいは逆に、二人目と同じ威力で同じ技を使うために、三分の一の量のアルケトラしか使わないこともできる」
「もちろん、実際の技はそれより遥かに複雑だ」
「だが、これはあくまで分かりやすくするための例にすぎない」
「そして、話はそれだけでは終わらない」
「効率の高い者は、ユルヴァナをより速く成長させることもできる」
「なぜなら、効率の高い者ほど、アルケトラをより巧みに利用してユルヴァナを鍛錬できるからだ」
「そして、ユルヴァナそのものも、効率が高くなるほど、より速く適応する」
「それだけでも終わらない」
「戦闘において、特に高位の段階では、効率が高ければ高いほど、同時に複数の技を制御する能力も高くなる!」
「もちろん、効率が高いほど、ヴィラを鍛錬する能力が高まり、戦闘においてより多くの道筋をカバーできることについてまで、いちいち説明する必要はないだろう」
「最初は、効率の不足をより大量のアルケトラで補えるように思えるかもしれない」
「だが、真実は違う」
「効率こそが、アルケトラ・マスターの真の力を決定する要因なのだ……」
......................................................
ハイヴェンは丘へ到着し、いくつかの印を注意深く見つめ始める。
「どうやら、本当に着いたようだ」
突然!
丘の上から声が響く。
「ずっと待っていた……」
ハイヴェンは声のした方向へ視線を向ける。
そして、丘の頂上にアレスが立ち、空中に浮かんでいる姿を目にして驚愕する。
その周囲には、巨大な青いオーラが渦巻いている。
左手には、紫色に輝く紋様が刻まれた剣。
そして右手には、膨大なアルケトラが集まり、紫色のオーラによる円形の技を形成している。
そこからは、紫色のオーラの舌が幾筋も立ち昇っている!
その姿のアレスを目にした瞬間、ハイヴェンの目は飛び出しそうなほど大きく見開かれる。
そして、心の中で叫ぶ。
「青瑪瑙ユルヴァナ!!」
「ピーク・ジュターの本物のオーラ!!」
「まだ最終試験すら受けていないというのに!!」
「姉さんの心配は完全に正しかった」
「やはり、あの人はピーク・ヘクターなんだ……!」
「きっと、以前からあいつの正体に気づいていたんだ!!」
数瞬の沈黙の後、ハイヴェンは顔の半分に手を当てる。
そして、アレスが怪訝に思うほど、狂ったように笑い始める。
やがて、ハイヴェンは笑うのをやめる。
クリシダの剣を鞘から抜くと、彼の周囲から輝く青いオーラが立ち昇り始める。
そして、狂気じみた笑みを浮かべて言う。
「驚いたよ、アレス……」
「本当に、驚いた……」
「このまま俺たちの差を、もっともっと広げてくれ」
「お前が強くなればなるほど、もっと面白くなる!」
「どうせ、俺を倒せるのは、尊きピーク・ジュターくらいなんだからな!!」
アレスは目を細め、ハイヴェンを鋭く睨みつける。
そして、毅然とした口調で告げる。
「お前は間違っている、アキタラオの後継者……」
「お前は昔から、ずっと間違っている……」
「ただのピーク・ジュターなど、俺の格には到底ふさわしくない!」
.....................................................................................................




