↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/51

第28章「この世界の残酷さの、ほんの一部にすぎない……」

一本の枝を飛び越えた、その瞬間――

ヒカリの瞳孔が極限まで縮む。

凄まじい死の危険を告げる警告が、彼女の頭脳を打ち抜いた!

ヒカリは全力で、空中の身体を傾けて回避しようとする!

だが……

無駄だった……

槍が、彼女の身体を貫いた……

掴もうとした手が枝を外す。

そのまま落下し、さらに四本の枝へ次々と身体を打ちつける。

そして、ようやく巨大な枝の上へ落ちた。

震える両手で身体を支え、立ち上がろうとする。

だが――

すぐに両手から力が抜け、再び崩れ落ちる。

頭を枝へ強く打ちつけ、激しく血を吐き出した。

左肩に突き刺さった槍を見つめ、考える。

「今の一瞬……かろうじて死を避けた。」

「その代わりに……肩をやられた。」

「致命傷じゃない。」

「でも……体力を急速に奪われている。」

「長くは待てない……」

その時――

耳を突き抜けるようなしわがれた声が響いた。

「何……? まだ生きているのか?!」

ヒカリが目を動かす。

そして、その視線が向かい側の枝へ止まった。

そこには、一匹の巨大な猿が座っていた。

背中には何本もの槍。

頭には、灰色の鉢巻き。

ヒカリの目が驚愕に見開かれる。

巨大な猿が口を開く。

「後衛の言った通りだ。」

「どうやら、お前は本当に稀有な者の一人らしい!」

「兄弟たちも、きっと喜ぶだろう……」

ヒカリが、掠れた声で尋ねる。

「一体……あんたたちは誰なの……?」

猿は立ち上がる。

「無礼を許してくれ。」

「まだ名乗っていなかったな。」

そして、拳で自らの胸を叩く。

誇らしげに叫ぶ。

「我々は――四人の鉄兄弟!」

「上位山岳猿族、四大戦士だ!」

「残念ながら、兄弟たちは左側にある大きな危険を察知し、それと戦うために向かった。」

「そしてお前は……ここにいた全員を殺した。」

「後衛までな。」

「本当に信じられない……」

「俺がこれほどまでに警戒を怠って、こんな長い間眠り込んでしまうなんて……」

……

「おい……人間……」

「くそっ!」

「死んだのか?!」

「まずいな……どうやら、俺はこいつを傷つけすぎたらしい。」

猿はヒカリのいる枝へ跳び移る。

そして、一歩。

また一歩。

ゆっくりと彼女へ近づいていく。

やがて、その目の前まで来る。

そして、ヒカリの頭へ手を伸ばした。

だが――

その瞬間。

ヒカリは、右手に密かに握っていた短剣を狂気じみた速度で引き抜いた!

足を、今にも砕けそうなほど強く踏み込む。

身体が、閃光のような速度で飛び出した!

そして――

短剣を、巨大な猿の首へ突き刺す!

ヒカリはすぐさま数歩後退する。

そして、何本もの手裏剣を一気に投げつけた。

顔へ。

両目へ。

正確に突き刺さる!

ヒカリは巨大な枝から素早く飛び降りる。

そして、かろうじて右手だけで別の枝へしがみついた。

やがて――

巨大な猿が、その枝から落下する。

地面へ激突し、そのまま絶命した。

ヒカリはその死体へ一瞥を向ける。

そして、身体を枝の上へ引き上げる。

激しく息を切らす。

傷口から、さらに血が流れ出す。

視界が次第に霞んでいく。

意識が、遠のきかける……

ヒカリは一瞬、息を止める。

そして右手で、左肩に突き刺さった槍を掴む。

そして――

全力で押し下げた!

「っ――!」

激痛に耐えきれず、叫び声が漏れる!

槍の木製部分の大半が、へし折れた!

身体が傾き、落ちかける。

だが、ヒカリは手に力を込め、どうにか身体を支える。

全身から、激しく汗が流れる。

やがて深く息を吸い――

立ち上がる。

槍を折ったことで、身体の動きは少しだけ楽になった。

ヒカリは木々の終わりへ目を向ける。

そこには、岩に囲まれた窪地が見えた。

そして、考える。

「たぶん……あれが終着点ね。」

……

その一方で――

アレスが姿を現した。

ローブはあらゆる方向から切り裂かれ、顔も衣服も血に覆われている。

右手には剣。

その切っ先から、血の雫が落ち続けている。

左手には、一匹の猿の死体。

その背中には、数え切れないほどの矢が突き刺さっていた。

アレスは後ろを振り返る。

そこには、二十体を超える武装した猿の死体が転がっていた。

さらに視線を動かす。

そこには――

三体の巨大な猿の死体。

その背中には何本もの槍。

頭には、赤、青、緑――三色の鉢巻きが巻かれている。

アレスは、しばらく沈黙する。

そして考えながら、ゆっくりと剣を鞘へ収める。

「今回の試験の難易度……普通じゃない。」

「いや……俺が知っているものとは、完全に異なる。」

「この道は……慎重に選んだ。」

「それでも、その難易度はすでに……過去数年の『地獄の道』に近づいている。」

「いや……」

「俺と、あの少女が何度も介入していなければ……死体の数は、倍になっていただろう。」

アレスは拳を強く握り締める……

「もっと早く気づいていれば……」

「ハイヴェンの実力を信じて、別の道を進ませたりはしなかった。」

深く息を吸う。

そして、木々の間を走り、枝から枝へ跳び移りながら進んでいく。

「ただ……無事でいてくれ……」

……

二分後。

アレスは、四方を石壁に囲まれ、まるでトンネルのようになっている岩の窪地を通り抜けた。

一分もかからず、その道を抜ける。

そして――

巨大な広場へ出た。

遠くには、何人もの監督官が見える。

その前へ主任監督官が降り立つ。

手にした帳簿を開き、読み上げる。

「アレス・シュアン、参加者番号201。」

「サリナ・スター・センターの訓練生。」

「全十六回の合同訓練キャンプのうち、十四回に参加。」

「公式決闘は五十六戦。」

「五十四勝、二敗。」

「総合評価9.4。」

「十二名の直接監督官による全会一致の評価により、評価および信頼性において、ラスト・トワイライト学院全体で第三位。」

「私はリョウマ・マサト。」

「由緒あるラスト・トワイライト学院の最終試験、その第一段階において第一位を獲得したことを、心より祝福する。」

「そして今、この功績の報酬を君に渡そう。」

リョウマが指を鳴らす。

すると、銀色のユルヴァナが周囲で輝く。

その光の中から何かが現れ、眩い輝きを放ちながら、彼の掌へ降りてきた。

リョウマは、それを見せながら言う。

「これは……」

アレスが、その正体を口にする。

「『祖先の栄光のヴィラ』。」

「形成の道における主要な系統の一つ。」

「特に、中級ユルヴァナ形成の中でも際立ったものですね。」

「これほど貴重なものが……こんな些細な功績に対する報酬だとは、にわかには信じられません。」

リョウマは微笑む。

「よく勉強しているな、少年。」

「お前くらいの年齢の者の大半は、偽りの力という幻想に惑わされ、何もかもの基礎を忘れてしまう……」

「知識だ!」

「だが、一つ見落としている。」

「大きな功績に対する報酬は、その価値が大きく異なる。」

「貴族や王族の氏族の学院と、統合学院とではな。」

アレスは両手を合わせ、わずかに頭を下げる。

「この若輩、心より感謝いたします……」

リョウマは背を向け、歩き去りながら言う。

「最終報告書には、君の名を金字で記しておこう。」

「これからも、さらなる高みを目指せ。」

……

その頃、ヒカリは右手で左腕を支えながら、石壁に身体を預け、ゆっくりとした足取りで歩いていた。

時折、何人かの参加者が彼女の横を通り過ぎ、奇妙な視線を向けてくる。

そして数分後――

ヒカリは、ようやく試験通過者たちのいる広場へ辿り着いた。

周囲を見渡す。

そこには、何十人もの試験通過者がいた。

そして、掠れた声で呟く。

「これで……」

「ようやく……終わった……」

その場に膝をつく。

震える手で槍の端を掴み、左肩からゆっくりと引き抜く。

そして――

槍を完全に引き抜き、脇へ投げ捨てる。

そのまま左肩を掴み、強く押さえる。

そして、血に染まったローブへ視線を落とす。

石壁の間で押し潰された者たち。

矢によって殺された者たち。

ワニに引き裂かれた者たち。

次々と、その光景が脳裏に蘇る。

そして、彼女の目から数滴の涙がこぼれ落ちた。

その瞬間――

ヒカリは痛みを感じた。

だが、それは肩の傷による痛みではなかった。

心の奥に、それよりもはるかに強い痛みがあった……。

彼女は、この世界の残酷さの一端を理解した……

.....................................



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。