第20章「何度、俺の頭脳は俺を欺いたのか……」
そのすべての狂気の中で……
リョウタは鋭い眼差しを浮かべながら、走っていた。
石が雨のように降り注ぐ中――
突然……
一つの岩が、リョウタの真正面へ落下する。
地面に触れるよりも前に、リョウタは鋭い角度で横へ身を逸らした。
岩は彼の顔すれすれを通り抜ける。
その勢いで生じた風が、彼の髪を激しく乱すほどだった。
さらに一つの岩が、頭上から落下してくる。
リョウタは素早く腕を上げ、走りながら身体をわずかに傾ける。
岩が、肩をかすめる。
最初の岩と二つ目の岩を避け終えるか終えないかのうちに――
今度は、二つの巨大な岩が彼の真正面へ落下する。
あまりにも巨大で、地平線さえ塞ぎかねないほどだった!
リョウタは横へ跳び、最初の岩をかわす。
だが……
二つ目の岩が、彼の真上にある!
ミズシの目が大きく見開かれる。
「まだ空中にいる!
これじゃ、すぐに動けない!!」
「なら……」
その瞬間、驚愕で言葉を失う。
リョウタは、まさにこの瞬間にそうなることを、恐ろしいほど正確に計算していた。
リョウタは最初の岩を足で蹴り、その反動で空中で身体をひねる。
そして――
わずか数ミリの差で、二つ目の岩をかわした!
両手を地面につき、そのまま身体を押し出す。
再び跳び上がり、両足で着地する。
そして、先ほどの岩々に立ち向かった時とほぼ変わらない速度で、そのまま走り続ける。
……
ミズシは、強張った表情でリョウタを見つめる。
そして、考える。
「こいつは……」
「上から岩を投げている奴でもいるのか?!」
「ただ避けているだけじゃない……」
「落下の軌道、そのすべてを読んでいる!」
ミズシは歯を食いしばる。
「この狂気の中でさえ……」
「お前はまだ、無秩序の中にパターンを探しているのか?!」
……
その時――
突然、二つの岩がエヴァンダーの前へ立て続けに落下する。
エヴァンダーは歯を食いしばる。
一つ目を飛び越える。
そして二つ目の岩と巨大な柱の壁との間にある、あまりにも狭い隙間へ身体を強引に滑り込ませる。
その瞬間、石の破片が彼の服の一部を引き裂いた。
彼は激しく息を切らしながら、皮肉な笑みを浮かべる。
「くそ……」
「これは試験なんかじゃない……」
「大量虐殺だ……」
……
一方、ミズシ。
彼の状況は、まったく違っていた。
リョウタのような感覚を持っているわけではない。
エヴァンダーのような身体能力を持っているわけでもない。
だが……
彼には、別のものがあった。
静けさ……
誰もが叫び、周囲を振り返る中――
ミズシの目は、まっすぐ前だけを見ていた。
上を見ない。
後ろを見ない。
ただ、地面。
影。
そして、砂埃の流れる方向だけを見ている。
突然――
死角から一つの岩が、彼へ向かって落下する!
その一瞬――
ミズシは反射的に身体を低くする。
岩が、その頭上すれすれを通り過ぎた!
一人の生存者が、驚愕に目を見開く。
「どうやって……」
「どうやって避けたんだ?!」
ミズシは走り続ける。
そして、一瞬だけ気づく。
もはや、考えることすら高価な贅沢になっている。
周囲にある、ほんの僅かな異変を察知し、それに即座に反応する。
そのために、自分の感覚を極限まで研ぎ澄まし、持てる集中力のすべてを注ぎ込まなければならない。
彼の身体は、ただ生き残ろうとする本能だけで動いていた……
その時――
ヒトシは、後ろから何かがつまずく音を聞いた。
誰かが、走っている途中で地面へ倒れた。
立ち上がろうとする。
だが……
負傷した足は、もう身体を支えられなかった。
彼は仲間たちへ手を伸ばし、叫ぶ。
「俺を置いていかないでくれ……」
その瞬間――
一つの岩が、彼の下半身を覆うように落下する。
叫び……
短い……
引き裂かれたような叫び……
そして……
静寂……
ヒトシの目が激しく揺れる。
「いや……」
思わず、彼のほうへ振り返りかける。
だが――
リョウタが即座に叫ぶ。
「後ろを見るな!!」
そして、初めて……
ヒトシは、あることに気づく。
それは……恐ろしい事実だった。
「リョウタは、最初から全員を救おうとしていたわけじゃない……」
「彼がやろうとしていたのは……」
「どんな犠牲を払ってでも、集団全体の崩壊を防ぐことだった。」
「たとえ、その代償として集団の一部を犠牲にすることになったとしても!」
「最初から分かっていたんだ。」
「この罠は、石で人を殺すんじゃない……」
「人間の反応によって殺すんだ!」
「見ること……」
「ためらい……」
「慈悲……」
「恐怖……」
「本能……」
「人間を人間たらしめる、すべてのもの。」
「それそのものが、この罠における殺人の道具なんだ……」
「だから……」
「リョウタの命令は、あれほどまでに苛烈だった。」
「ただ……」
「生き残るためには……」
「彼らは、走らなければならない……」
「まるで……」
「隣で誰かが死んでも……」
「自分たちには関係ないかのように……」
ヒトシは目の下に溜まった涙を拭う。
「でも……これは、難しい……」
「とても……難しい……」
「どうして俺に、兄弟たちの死をそんなに簡単に受け入れろと言うんだ?!」
「俺たちは……あなたのような人間じゃない、指揮官殿……」
「俺たちは、痛みに負けてしまう人間だ……」
「俺たちは弱い……」
「俺たちは、戦士じゃない……」
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そして――
永遠にも感じられる数秒の後。
残った者たちは、ようやく落石地帯から抜け出した。
安全な距離まで離れた、その瞬間。
何人かが足をもつれさせ、地面へ倒れ込む。
一人が、吐く。
別の一人は、身体を震わせながら崩れ落ちる。
ヒトシは口元を手で覆い、泣き出すのを必死に堪えていた。
一方、リョウタは……
その場に立ち尽くしていた。
無言で。
落石地帯を見つめる。
その背後を。
エヴァンダーとミズシを除けば、群衆の中でまだ生きているのは、たった五人だった。
五人……
残りは、完全に消え去っていた。
……
リョウタは一瞬、目を閉じる。
そして、考える。
「五人が生き残り……五人が死んだ……」
「また俺は……敗北した……」
「俺の決断は……ほとんど意味を持たなかった……」
彼は、いまだ堂々と立ち続けている巨大な柱へ目を向ける。
そこには、降り注いだ岩によってわずかに削られた痕しかない。
そして、瓦礫と、その下に埋もれた死体へ視線を落とす。
「……明らかだった。」
「亀裂は、崩落の警告じゃなかった。」
「むしろ……目を逸らさせるための手段だった。」
静寂……
「なら……」
「何度……」
「俺の頭脳は……俺を欺いた?」
そして、生き残った者たちへ視線を向ける。
奇妙なほど穏やかな声で、告げる。
「自分たちが見ているものを、信じるな。」
「自分たちが望んでいるものを、信じるな。」
「自分たちが予想しているものを、信じるな。」
静寂……
「そして……」
「俺が、お前たちに伝えることさえ……」
「すべてを……信じるな……」
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