第十五章「精神的な圧力……最も狡猾な災厄」
歩きながら、リョウタは考え始める。
「ここまで見てきたものを考えると……あの仮説は、ますます確かなものになってきた。」
「このアリーナは、完全な円形じゃない。」
「そんなことは、あり得ない。」
「ただ……そう感じさせられているだけだ。」
「そして、それを不可能にしている最大の理由の一つが……少なくとも理論上、あまりにも多くの論理的な矛盾が存在していることだ。」
「そもそも、このアリーナは巨大な迷路に近い。」
「特に、これほど張り詰めた空気の中で、致命的な罠まで仕掛けられている。」
「無数の小さな柱の間を彷徨いながら、ただ数分でも長く生き延びようとする。」
「そんな状況で、道に迷わずに進み続けることなんて、ほとんど不可能だ。」
「最後には……何か一つでも判断を誤って押し潰されるか、それより先に精神が壊れる。」
「だからこそ、ここには案内役が必要になる。」
「そして、俺たちにとっての案内役が……あの巨大な柱だ。」
「だが……完全にそうとも言い切れない。」
「なぜなら、あの巨大な柱そのものが、別の迷路……いや、正確には一つの謎だからだ。」
「まず、その数は二十本を超えている。」
「しかも、その配置は……あまりにも無秩序に見える。」
「だが……完全に無秩序なわけじゃない。」
「もし本当に巨大な柱の配置が無作為で、そのうえ、このアリーナが完全な円形だったとしたら……」
「その時こそ、本当に生き残る希望はない。」
「仮に誰かが奇跡的にすべての巨大な柱を巡り、出口を探し出せたとしても……」
「方向を示すものは何もない。」
「結局、完全に道を失ったまま、同じ場所をぐるぐると彷徨い続けることになる。」
「それは、この学院の試験そのものの論理と完全に矛盾する。」
「この試験の目的は……どれほど苛酷な手段を用いていようと、あくまで選別だ。」
「殲滅じゃない。」
「同じ理由で、アリーナが長方形という可能性もない。」
「そんな形なら……あまりにも分かりやすくなりすぎる。」
「だからこそ……」
「迷路としての性質と、完全な謎に包まれた感覚を維持しながら……」
「同時に、極めて正確な判断によって、最低限の生存の可能性を残せる形。」
「それは……楕円形であるはずだ。」
「そうであれば、初めて明確な終着点が存在する。」
「そして、アリーナそのものが……本来の進行方向にある、ただの曲がり角にすぎないという最悪の可能性も否定できる。」
「円形だと考えていた場合には……それを確かめる方法がまったくなかった。」
「なら……」
「他の巨大な柱から、あれだけ離れた場所にあるあの柱が……おそらく終着点だ。」
リョウタは、皮肉な笑みを浮かべる。
「……まあ、あれが他の柱から最も離れていること以外に、そう考える理由なんてないんだけどな。」
リョウタは怒りに歯を食いしばる。
「また……絶望的な賭けだ。」
そして、考えを続ける。
「いずれにせよ、あそこまでは……あと二本の巨大な柱を越えなければならない。」
「それまでに……残りの全員が生き残っていてくれればいいが。」
突然――
血にまみれた、謎の黒い手がリョウタの肩を掴む!
リョウタは肩に置かれた血まみれの手へ目を向ける。
その瞳孔が、衝撃で一気に収縮する。
そして――
恐ろしい声が、耳元で囁く。
「また……何かを見落としたんじゃないか?」
……
「リョウタ……」
「リョウタ……」
「リョウタ!」
リョウタは、エヴァンダーの呼び声で我に返る。
そして肩を見る。
そこにあったのは――
エヴァンダーの手だった。
血など、一滴もついていない。
傷一つない。
リョウタはエヴァンダーを見る。
その表情には、まだ衝撃が残っている……
エヴァンダーが心配そうな声で尋ねる。
「リョウタ……大丈夫か?」
「具合が悪いなら、少し休んでもいい。」
リョウタは再び険しい表情に戻る。
そして、ただ前を見つめたまま答える。
「必要ない。」
「俺は大丈夫だ……」
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彼らは歩き続ける。
突然!
巨大な亀裂音が、全員の耳を貫いた!
リョウタが即座に叫ぶ。
「右だ!」
全員が一斉に動く。
だが――
そのうちの一人の脳裏に、先ほど死んだ三人の姿が浮かんだ。
あの場で凍りつき、迫り来る死を前に何もできなかった三人。
ほんの半秒――
その人物は、動くのが遅れた。
そして慌てて、他の者たちの後を追う。
だが……
小さな石が――
肩をかすめた。
彼は一瞬、身体を強張らせる。
それでも、そのまま走り続ける。
……
生き延びた後。
誰も、口を開かなかった。
その人物は、まだ震えている自分の肩を見つめる。
そして、心の中で呟く。
「俺は……死ぬところだった。」
「ほんの一瞬……躊躇しただけで。」
「本当に……リョウタ卿の命令は絶対なんだ。」
「生き残りたいなら……これ以上、余計なことを考えるな。」
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それから数分。
彼らはその間にも数多くの罠を通り抜け、一人の犠牲者も出すことなく進み続けていた。
そして――
二本目の巨大な柱が、地平線の向こうに姿を現す。
前回と同じように……
突然、周囲が静まり返る。
そして、徐々に二本目の巨大な柱の姿が鮮明になっていく。
突然、リョウタが足を止める。
巨大な柱へ視線を向け、目をわずかに細める。
「亀裂……」
「前回より……多い。」
「だが、それ以外は……前回と何も変わらない。」
「遠くの柱が倒れていく様子も……」
「その崩壊の間隔も、速度も……ほぼ同じだ。」
……
柱の崩壊が、さらに近づいてくる。
リョウタは拳を強く握り締める。
数秒――
そして、ゆっくりと拳を緩める。
振り返り、群衆へ向き直る。
そして、毅然とした口調で告げる。
「何も違わない。」
「この道は安全だ。」
「進む!」
エヴァンダーが口を挟む。
「だが、リョウタ……あそこには――」
「黙れ、エヴァンダー。」
リョウタは、怒気を帯びた声で遮る。
そして再び巨大な柱へ視線を向け、群衆へ向かって叫ぶ。
「進む!」
「急げ!」
彼らは一斉に、巨大な柱へ向かって走り始める。
そして突然――!
巨大な柱に走っていた亀裂が、急速に増えていく。
次々と亀裂が走り、ついには柱全体を覆い尽くす!
その瞬間――
凄まじい亀裂音が、彼らの耳を貫いた!
前回よりも……さらに大きい!
まるで、今にも崩れ落ちることが決まったかのような轟音。
恐怖が、彼らの顔を覆う。
何人かが、反射的に上を見上げ始める。
リョウタは、即座に叫ぶ。
「上を見るな!」
「倒れない!」
「ただ走れ!」
大半の者が、上を見るのをやめる。
そして、恐怖で震える目を前へ向けたまま、走り続ける。
その一方で――
ミズシは、驚愕に満ちた目でリョウタを見つめていた。
そして、心の中で呟く。
「どうして……」
「どうして……そんなにも自信満々に、嘘をつけるんだ……」
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