第十四章「論理が通じない時……残るのは賭けだけ」
遠くにある小さな柱が次々と倒れていく。
その崩壊の連鎖が、徐々に自分たちへ近づいてきている!
一瞬――
リョウタの目が、眼窩から飛び出しそうなほど大きく見開かれる。
そして、頭の中で呟く。
「アイヌーン……全面的な殲滅にしたのか?!」
「もう……打てる手は尽きた……」
「巨大な柱へ進み、もしそれが倒れれば……反応速度などという話ではない。」
「全員、確実に押し潰される!」
「なら、ここに立ち続ければどうなる?」
「ただ、死刑執行を先延ばしにしているだけだ!」
「数分もしないうちに……俺たちは柱に押し潰される!」
リョウタは周囲を見渡す。
「まだ……誰も気づいていない。」
「迫り来る、この大惨事に……」
「どうすればいい?!」
「これが……本当に最後なのか?」
「くそっ……崩壊が近づいている!」
「柱が倒れる音も、どんどん増えている!」
「いつ、全員が気づいてもおかしくない!」
「そして、その瞬間……」
「恐怖が混乱を生み、混乱が全員を殺す!」
「考えろ……」
「考えろ!……」
「考えろ!!」
内なる声。
「ユルヴァナ……」
「そうだ……ユルヴァナだ!」
「ユルヴァナを使えば、少なくとも小さな柱の崩壊には耐えられる。」
「そうだ……少なくとも、最後の生存の可能性はある。」
「最悪の場合は……ユルヴァナを使う。」
「だが……」
「それでは、俺がここまでしてきたことのすべてが……無意味になってしまうんじゃないか……」
「罠の弱点を見つけるための代償として死んでいった者たちまで……」
「彼らの死を、無意味にしてしまうんじゃないか?!」
「違う!」
「必ず、解決策がある!」
「これまでのすべての経験を通して……俺は、一つだけ確信したことがある。」
「この試験の設計者は、完全に絶望的な状況を、何の手掛かりもなく残すはずがない。」
「たとえ小さくても……」
「たとえ分かりにくくても……」
「たとえ間接的なものだったとしても……」
「必ず、どこかに存在するはずだ!」
その瞬間――
一つの記憶が、リョウタの頭をよぎった。
リョウタの瞳孔が収縮する。
そして、しばらく無言で立ち尽くした後――
口を開く。
「年長者に従え……たとえ、その言葉が意味不明に思えても」
「本当に……俺に……?」
リョウタは、しばらく躊躇う。
そして、考える。
「危険だ……」
「危険すぎる……」
「限りなく危険だ!!」
「もし俺の分析が間違っていて、巨大な柱が倒れたら……」
「俺のユルヴァナでさえ、その崩壊には耐えられない!」
「これは……完全な賭けだ!」
「そして、最悪なのは……」
「それでも……」
「やるしかない……」
次の瞬間――
リョウタは、すぐさま巨大な柱を指差す。
そして、群衆へ向かって叫ぶ。
「死は後ろにある!」
「生き残る道は前だ!」
「動け! 俺についてこい、今すぐに!」
リョウタは巨大な柱へ向かって走り出す。
その姿を見たエヴァンダーは、一瞬、衝撃で目を見開いた。
だが――
何も言わず、すぐに後を追う。
そしてミズシもまた、すぐに我に返り、二人を追って走り出した。
ヒトシは拳を強く握り締める。
苦しそうに息をし、額には汗が滲んでいる。
だが、すぐに気を取り直し、後方の群衆へ向かって叫んだ。
「指導者についていこう!」
「リョウタ卿は間違えない!」
「動け!」
そして、群衆の大半がヒトシの後に続く。
だが――
三人が動かない。
その場に立ち尽くしたまま、極度の衝撃に顔を凍りつかせている。
走りながら彼らを振り返り、ヒトシが叫ぶ。
「動け! 死ぬぞ!」
返事はない。
柱の崩壊の連鎖が、さらに近づいてくる。
ついには――
最後に倒れた柱が、わずか数メートル先にまで迫っていた!
ヒトシは再び彼らへ向かって叫ぶ。
その目からは、涙がこぼれ落ちる。
「カズ! シン! ミズキ!」
「頼む……動いてくれ……」
返事はない。
彼らは、その場で完全に凍りついていた。
避けることのできない死を目の前にした衝撃。
時には、その最初の犠牲者となるのは――
人間の頭脳そのものなのかもしれない。
そして――
悲劇としか言いようのない光景の中で、柱が彼らの上へと倒れ込む。
三人が押し潰された。
ほんの一瞬の出来事だった。
最後に彼らに残されたものは――
そのうちの一人が上げた、最後の叫び声。
その叫びが響き終わるよりも早く、巨大な石の一つが彼の頭を打ち砕いた。
その叫びは――
その場にいた全員の中にある何かを、打ち砕いた。
そしてヒトシにとって――
その瞬間、彼はすでに殺されたも同然だった。
あの叫びに――
心を殺されたのだ。
エヴァンダーは目の下に流れた涙を拭う。
そして、強い苛立ちと無力感を浮かべたリョウタを見る。
そのまま、頭の中で呟く。
「リョウタは……一度たりとも後ろを見なかった。」
「冷酷だったからじゃない。」
「ただ……一瞬でも後ろを振り返れば、その後で自分が躊躇してしまうことを恐れたんだ。」
「また……感情を押し殺している……」
「もう……それが上手くなってしまった……」
「心の奥底に、すべてを隠している……」
「おそらく……ここで一番苦しんでいるのは、彼だ。」
「そうでないはずがない。」
「あれほど無惨な彼らの死の責任を……自分自身に背負わせているのだから。」
エヴァンダーは手を伸ばす。
そして、リョウタの肩にそっと手を置いた。
涙を流しながら、掠れた声で語りかける。
「もういい……なあ。」
「そんなことを続けたら、お前自身が死ぬぞ……」
リョウタは、しばらく黙っていた。
そして――
いつもの毅然とした口調で答える。
「俺の感情では……彼らを救えない。」
「俺たちに可能性を与えられるのは……分析の正確さだけだ。」
...
そして――
約三十秒後。
彼らはすでに巨大な柱を通り過ぎ、その範囲から抜け出していた。
足を止める。
何人かが巨大な柱を振り返り、口々に呟く。
「……倒れなかった?」
「本当に……?」
「解決策は……ただ、巨大な柱に沿って歩くことだったのか?!」
「そもそも……そんなことを考える狂人が、どこにいる?!」
皮肉を込めた声が響く。
ヒトシは疲れ切った目で彼らを見つめ、静かに呟く。
「生き残った……」
「ほんの少しだけ……長く……」
リョウタは手で額を拭い、深く息を吐く。
そして群衆を見渡す。
その顔には、深い悲しみと沈痛な表情が浮かんでいた。
中には、まだ涙を流している者もいる。
リョウタは、彼らへ向かって語りかける。
「今回のことが……俺たち全員にとって、辛いものだったことは分かっている。」
「だが……彼らの犠牲を、無駄にするのはやめよう。」
「心を奮い立たせて……彼らの歩みを、俺たちが引き継ごう。」
「俺たちが彼らに捧げられる、最大の慰めは……」
「これ以上、仲間を犠牲にしないことだ。」
そしてリョウタは、ある方向へ向かって歩き始める。
エヴァンダーとミズシが、その後に続く。
リョウタは群衆へ向かって告げる。
「無駄にする時間はない。」
「進もう!」
そして――
ヒトシと残りの者たちも、彼の後に続いていく。
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