Xデー
人類初のコンタクトは、多くの謎を残したまま幕を閉じました。
未来から来た存在――ファスコン。
そして20日後に訪れるという人類滅亡級の危機。
その予言は本当なのか。人類は何を知り、何を選ぶのか。
どうぞお楽しみください。
地球外生命体とのファーストコンタクトと思われたのは、未来からの使者との出会いであった。上空に上がるまでは二人の様子は世界に共有されていたが、ファスコンとの対話している時には、音声、映像ともに通信は途絶えていたため、地上に戻った二人からの話が世界に広まる事となった。
春野は、自分達の周囲の状況、ファスコンとの対話内容を詳細に語った。しかし、人類滅亡の話だけは伏せた。根拠も示せない未来の滅亡を公表すれば、世界に混乱だけをもたらすと考えたからだ。
その後、世界各地で様々な憶測や論議がなされ、またファスコンの言う20日後の隕石の事が正しいのか確証を得るために衛星や地上の大型レーダーを使いNASAや個人の宇宙観測者が隕石を調査したが、そのような隕石が地球に近づく気配さえなかった。ファスコンが言った事に確証はないと言う者もいたが、未来から来たファスコンは幻覚ではなく本物であるという事実から、そのXデーを待つこととなった。
ファスコン、ルームと呼ばれる大型船は毎日メディアの話題であったが、しかしファスコンから音沙汰もなく、人類への影響もない事が分かったため、やがて人々の日常生活は通常通りに戻っていった。
対策本部になった研究所には、世界から優秀な科学者が集結して気球が収集した電磁波データや気球を囲んでいた周囲の成分などの研究が日々行われた。毎日の会議では、ファスコンへの質問を考えるのも議題の一つだった。
「時間の概念」「未来の病気」「惑星間航行」「反重力」「タイムホール」「ルーム」……様々な分野の科学者が集まっていたため、その数が数百項目に達したため、優先順位を決定する事になった。幾つの回答を得られるかわからないが、上から順番に質問する事に決まった。
翌日の会議の時間は、ファスコンに質問を投げる時間となり、ファスコンとの仲介役となった春野、野代は会議室の白板の前に立ち、ファスコンを呼び掛けた。
「ファスコン、この声を聞こえたら答えてください。」
『春野、野代の声は常に聴いている。』
「ありがとう。では、」
春野が最初の質問を読み上げようとした瞬間だった。
『質問には、タイムホールと反重力について答える事になっている。』
「えっ!?」
春野が質問する前にファスコンは語り出した。
『やがて人類は時次元を発見する、次は時次元に入る方法を研究が始まる。その研究成果で新たな物質が生まれる。それはタイムホールを構成する成分だ。それを光速に振動させた粒子エネルギーの強さを調節することで時次元を渡れるタイムホールが完成する。1500年後の話になる。』
淡々と説明が続く。野代はファスコンの言葉をキーボードに打ち込み、その言葉は白板にプロジェクタに大きく映し出された。
『反重力。重力に反発する技術は我々の時でもまだ解明できていない。しかし、重力をコントロールする方法を見つける。それは時次元を発見した時と同時に進行する。
高次元から低次元に引き込まれる力を引用し、あたかもそこに重力があるように見なすのだ。生み出す低次元の大きさや距離を制御することで空中に留まったり、超高速で動作するという原理だ。これはタイムホールよりも早く完成する。』
科学者たちは興奮した。その方法は分からないものの、時間という次元があるという事実を知ったことだけでも大きな成果だった。その日の会議の議題となった。
――Xデー
このまま何も起らないのではないだろうかと思っていた矢先、世界を激震させるニュースが世界に広がる。それは、月の爆発だった。月の表面のクレータ「クレータ・コペルニクス」の中心部付近から突如として閃光を放った。数秒後、巨大な光の花が咲くように爆発が広がる。
地上からも爆発塵が広く舞っている様子が目視できるほど広範囲の爆発である。NASAからの速報によると月内部の大爆発により巨大な岩が凄まじい勢いで地球に向かっているとの事であった。
世界中の人々がスマートフォンや望遠鏡越しにその光景を目撃した。
確認された岩の大きさは、大きいもので約200km近いものもあり、それ相当の巨大な岩が複数向かっているとのことであった。その速度は速いもので秒速15~20kmと推測され、4時間ほどで地球に到達する。衝突するのは日本付近の予想進路も表示された。日本に落下しても別の場所に落下しても、それらが地球に落ちたら舞い上がる塵に覆われ、地上に日の光が届かずに地球の動植物はほぼ絶滅してしまう事は確定であった。ファスコンの情報が正確であったことがここで証明された。
春野、野代にファスコンの言葉が届いた。
『地球防御の準備を始める。』
ルームが真ん中から上下に分かれ、白い波の波紋を疑似したような波動が広がりだした。白い波動の間隔が短くなり、やがて空一面が薄い雲のような膜が張られた。
さらにルームの上側が上下に2つに分かれ、そこからは青の波動が波打つように現れ、空一面が青くなるぐらいの広がりを見せたら宇宙へ急速に上昇していく。上昇に伴い次の青の波動があらわれ、また急上昇していく。その動作は1時間ほど繰り返し実行された。
隕石到着の1時間前になると、ルームの下側が上下に2つに分かれ、白い膜を補強するように薄い黄色の波動が伸びていった。TVでは白い膜の様子を映す衛星画像が流れた。それは日本を中心に5000kmほど広がっている大きなハリケーンのような姿であった。
隕石が落ちてくる予想時間に達したにも関わらず地上は平穏であった。春野はファスコンに問いかけた。
「隕石の状況はどうなっているのか分かっているなら教えてくれないか。」
何事もなかったようにファスコンが言った。
『地球に向かう岩は全て30cm未満に粉砕した。それらは地球の大気で燃え尽きて地上に達する事はないだろう。』
春野も野代も疑うように確認した。
「隕石群を全て粉砕したいうこと?地球の安全は保たれたってことで間違いないのか?」
『間違いはない。記録データ通りに地上にバリアを張ったが、そこまで到達する事もなかった。人類は安全だ。』
このファスコンの会話は一緒にいる世界各国のメディアが生放送で伝えた。世界の人々の声が地球外に届くかと思えるほど、人類全員が歓喜して叫んだ。
後に、春野を通して、ファスコンからの説明を受けた。
ルームの上段から出た青いものは、30cmほどの網目模様であり、網の部分となる電磁波は超高速で振動する刃物の役割であり、それに触れるとダイヤモンドも豆腐のように切れるほどの鋭い切れ味である。それがいくつも巨大隕石とかした巨大な岩を粉砕したのだ。ファスコンの対応に感無量な科学者は拍手喝采し、そして無事を称えた。
各国首脳は共同声明を発表した。人類は初めて地球規模の危機を乗り越えた。その功績を称え、この日は人類を救ったファスコンの日とし、世界共通の祝日とされた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の章では、ファスコンが予告した危機と、人類が初めて地球規模の災厄に直面する様子を書いてみました。
未来の技術や未知の存在を描くのは難しいですが、とても楽しく創造しながら執筆しました。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
次回もよろしくお願いいたします。




