旅路Ⅱ-2
「AI!最大戦速で間に割り込む。
割り込んだ後、急制動を掛けて止まった後右舷の格納庫ハッチを開いてプレイヤーと車両を回収。その後、攻撃側を叩く。」
『了解!実行します。』
艦の速度が上がり、両者の間に開いていた空間に強引に割り込みをかけて、急制動をかけて、その巨体を停める。
と、周囲にもうもうとした砂塵が巻き起こり追跡者達の視界を一時塞ぐ格好になっていた
追跡者側のプレイヤーたちの車両の車高では、この艦(船)の巨体と地面との高さが微妙なネックとなり、また迂回して回り込もうとしても、この艦の長さがネックになり時間が懸かり過ぎるとプレイヤー達は悟ったらしく、此方に矛先を換えて攻撃を仕掛けてきたのだ。
彼等の所持する複数車両の主砲の一斉攻撃程度では此方の防御は貫けないらしく、装甲に爆炎を散らせ表面を煤けさせるだけに留まっていた。
彼等に外部集音マイクを向け声を拾ってみると、罵詈雑言のみが聞き取れ有益な情報は得られずじまいであるので罵詈雑言等は無視して、助けたプレイヤーを優先して事情を聞くこととする。
優先順位を違えては為らない。
どちらが、俺達にとって不利益をもたらすのかを聞かなくては話に為らないのだから。
どうやら、丁度格納庫で整備をしていたイリスが案内役を買って出てくれたらしく、リビングスペースへと助けた人物を伴って連れてきてくれたようだ。
俺も其を確認して、艦橋からリビングスペースへと降りていく。
その途中で、別スペースから戻って来る途中であったヒカルも何処かで合流したらしく助け出したプレイヤーと共にリビングスペースのソファーに腰を落ち着けていた。
「助けて頂き有り難う御座います!ヒュームのクラフターでライルって言います!」
そうリビングスペースに現れた俺へと向かって頭を下げたプレイヤーは、俺達よりも明らかに年下であるようだ。
見た目は女の子っぽいのだが、念の為に・・・彼の名誉を鑑みれば男だと断言せざるえない訳だが。
「助けたのは、此方にも此方なりの思惑があっての事だ。あまり畏まられても困るな?」
苦笑い気味にライルと名乗ったプレイヤーへと告げると、ライルも「ですよね~!」と呟いていたが、悪い気分になっていなかったのは幸いだろう。
「何となくですけど、聞きたい事は僕と彼等の関係ですよね?僕自身「始まりの町」への帰還が目的なのですが、旅している途中で彼等に出会って追い掛けられてたんですよ・・・確か・・・5分位前だったかな?・・・」
ライルの話だと、俺達が救難信号を受信するホンの少し前に彼等に運悪く出会い、持っている車両を狙われた様だ。
「AI!連中はどうしてる?」
そう尋ねると
『「獲物を横取りしやがって」とか、「俺達が有難く使ってやるコイツを寄越せ」だの「コレの所有権を寄越せ!」等と言いながら、艦に向けて車両からの一斉砲撃を繰り返しています。・・・尚、損害皆無』
「どうあっても、外のは車両強奪目的のPKプレイヤーだな?」
と苦笑ぎみに、ヒカルとイリスへと問い掛けると
「撃破一択だよね?」
「自分が得する為なら他人はどうでもええっちゅう考えは好かん!撃破や」
此方の意図を汲んでくれたらしく、二人は外のプレイヤー達の処遇を撃破という形で示してくれたようだ。
「了解!・・・AI!現状で使用可能な左舷武装をもって、強奪目的のPK達を攻撃!所有車両には極力ダメージを与えない様に攻撃してプレイヤーを排除!方法は任せる」
とAIに指示を飛ばすと
『了解。・・・レーザー機銃が該当・・・外部にいる攻撃側プレイヤーを掃討します。』
と返答がなされ、同時に外の映像が映し出される。
そこには、レーザー機銃に狙われ身体中を穴だらけにされ次々とポリゴンの欠片となって砕け散るプレイヤー達の様子が映し出されたのであった。
車両の装甲の隙間を狙ったレーザー機銃の連続掃射を喰らい一方的に穴だらけにされるプレイヤーや果敢にも此方へ攻撃を加えようと銃座に飛び乗るも、椅子に座った直後に銃座に配された装甲間の隙間からレーザー機銃から放たれたレーザーを額にモロに喰らってそのまま身体をポリゴンの欠片と化して砕け散るプレイヤー等様々だ。
そういった光景が1分程続き、その場にいた10数名程の人数で構成された車両狩り目的のPKプレイヤー達はレザー機銃の掃射の的にされ全滅するに至った。
『プレイヤーは全滅を確認!・・・サーチ結果で攻撃側が所有していた全車両への損害軽微!・・・目的を達しました!』
そうAIが報告を挙げてくる。
その報告を聞きつつ、ライルは?と横目で見やれば「うっ・・・わぁ~!」とでも言いたげな顔で映像を見ている。
「終わったな?・・・さてと、ライル次第だが・・・俺達と共に「始まりの町」へ帰還しないか?」
と、ライルへ向き直りつつ問い掛ける。
「私はOK!だよ」
「ウチも問題あらへんよ?」
俺のライルの質問の意図を汲んでパーティーへの加入に是を唱える二人に、笑みを浮かべつつ頷き返しつつ、改めてライルを見る。
即決ともいうべき速さでパーティー入りが決まった事に目を白黒させつつも
「えぇっと・・・クラフターなのであまりこのパーティーの戦力に為らないかもしれません。それでも構わないなら、宜しくお願いします!」
そのライルの一言で、彼のパーティー参入が決まった。
ライルは年下だが男なのは間違いは無いが、どちらかというと、少女っぽい顔付きをしており良く言えば、男の娘。
悪く言えば、アバター選択を間違えた或いはシステムバグで現状のキャラにでも成ったのか?と言いたくなる程少女っぽい容姿をしている。
そ男だと判ったのは骨格と身体の動かし方だが、一見すると少女にも見えるのだから始末が悪い。
それは、本人としても言われたく無いだろうから、『黙殺・封殺』する事にしてパーティーメンバーの紹介と共に、ライルのホーム登録を行う事にする。
「俺は、このパーティーの暫定的リーダーを受け持っている、ヒュームでハンターをやっている「ジン」だ。で・・・アニマル達に埋まりながら此方を見ている女性が、ヒュームでパーティーの回復、治療を担うメデイックの「ヒカル」。それから・・・現在進行形でライルを後ろから抱き締めているのが、ヒュームで車両全般の整備、修理を受け持つメカニックの「イリス」だ。・・・」
その後アニマル達の紹介になったが、その間中イリスが背後からライルを抱き締めていたのは言うまでも無い。
ハラスメント行為になりそうな案件であるのは間違いないのだが、立場として逆なので微妙としか言えない。
抱き締めているのが男で、抱き締められているのが女性なら、ハラスメント案件であるのだが、実際上は逆で抱き締めているのが女性で抱き締められているのが男なので、案件として微妙と言わざる得ない。
ライルは顔を真っ赤にして俯いているのだが、行動(ステータス操作)を起こす様子は一向に伺えない。
嬉しくもあり、困惑する状況でもあり・・・と微妙かつ初心男心なのだろう、気持ちとしては解らなくもない。
ただ、一つ言わせて貰うなら俺に、イリスに離してやれという権限は無い。
離す離さないはイリス本人の気持ち一つで決まる事であり、決定権はイリスが持っていると言っても言い過ぎには成らないだろう事柄であるのだから・・・
また、下手に突っ込むと言葉によるハラスメント案件に引っ掛かる可能性がなきにしも非ずである為下手な事は言えない訳だ。
ヒカルも言うに言えないジレンマがある様で、ライルを気の毒そうに見ているが、未だ口出しも手出しすらもしていない事からも、それは推察出来る。
「イリス?・・・満足したら離してやれよ?」
俺が言えるのは、ただそれだけである。
「そやんなぁ?・・・これ以上やったらハラスメントでアカBANかもやんなぁ・・・オシイケド・・・」
そういってライルを離したのだが、何か小声で呟いたのだけは口の動きで解ったが内容までは分からない。
ライルは?と見ると、それが聞き取れたらしく、赤い顔を更に赤くしているので録でもない内容なのは確かだろうが、俺にそれを問い質す蛮勇は欠片も持ち合わせていない。
「まぁ、・・・こんなパーティーだが、これから宜しくな?ライル。」
そう告げて、ライルへと右手を差し出すとライルは握手する為に手を握り返してきつつ
「了解ですっ!・・・これから宜しくお願いします!リーダー!」
そういって、此方へ笑いながら手を上下させてくるライル。
色々問題はありそうだが、パーティーメンバーは四人となった訳だ。
後は、イリスがライルにハラスメント行為を働いてアカBANに為らない事を祈るのみだが・・・
自重はしてくれると願うばかりだ・・・




