旅路-2
「そや!ジンに聞きたい事あるんやけどええ?」
沈んだ気分を変えようと、イリスが俺に尋ねてきたので、それに頷き返す。
「ジンってなんか武術でもやっとったん?・・・立ち姿が綺麗やし、足運びで出る足音がせぇへんし何よりウチと対面しとった時に纏っていた雰囲気がそう思った要因なんやけどな?」
こちらが普段通りにしていたつもりだったのだが、警戒心から無意識に足音を消していた様だ。
どう答えたら良いだろうか?迷う。
「・・・なんと言えばいいのかなぁ・・・確かに武術らしき物はやってたんだが・・・アレを武術って括りにして良いのかってのがな?」
俺が祖父から仕込まれた術は確かにある。ただ、術を武術という括りで扱って良いのか?という疑問は常々もっている。
術を教えてくれた祖父もまた、この術を武術と一括りにして良いのかと考えていたのだから。
「聞きたい様な・・・聞きたくない様な」
とは、ヒカルの言葉。
俺自身、祖父に仕込まれた術を口にするのが難しいのは間違い無い。
基本的に型から型への連続した流れによって相手を打倒するものを武術と定義付け出来る。
俺が祖父に仕込まれた術は人が出せる限界速度での高速移動を繰返し相手を欺き、倒すことを主眼においた武術というより暗殺技術寄りの術であるから、説明し難い。
が、説明しない訳にもいいかないだろうし、どういう説明が判りやすい説明なのかも判断付かないのだ。
「・・・剣術とか空手や合気道といえる武術の括りにあて嵌めることが難しいんだよな?俺が仕込まれた術はね?・・・」
というと、イリスは俄然興味津々になったらしく、目を輝かせて「で?で?」と尋ねてくる。
「・・・ハァ~・・・簡単にいうと、動きで相手を眩惑して、一撃で仕留める術だよ・・・暗殺技術や一部で忍術と目される種類の術だから武術と呼べるかが微妙なんだよ・・・」
と、説明するとイリスは「うわぁ」と目を見開いて呟いていた。
これは、人にいうべきでは無い事だが・・・仕込まれた術の中には無手で相手を貫き仕留める種類の技法もある。
現実と同じ感覚で身体を動かせるのがVRMMOという物である以上、それが不可能とは決して言えないのだから、「言わぬが華」というものであろう。
ヒカルを見やると、イリスと同様に呟いて聞かなければ良かったと言いたげな表情をしているのだった。
「あぁ~・・・言いたくないなら、答えんでええねんけど、どうやったらあないに個人情報を獲られたん?」
と、改めて疑問に思った事をイリスは尋ねてきたが、それについては俺の答えは決まっている。
「黙秘する」
そう述べ、話を強引に終わらせると同時に
「態態自分から闇に足を踏み入れる趣味は持たない方が良いぞ?」
と「ニヤリ」とした黒い笑みを浮かべつつ二人へ告げると、俺の顔をみて何かを感じ取ったヒカルとイリスはお互いに抱き合い震えていた。
何を感じ取ったかは本人達にしか分からないのだから、俺が聞くのは無粋というものだろう。
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ヒカル&イリスside
ジンが見せた黒い笑みって、背筋にゾクゾクとした悪寒を這い上がらせる種類だよね?
私達はお互いに抱き合いながら、背筋を這い上がってくる悪寒に震えていた。
言葉にせず、お互いに今後はこの類いの事は聞かない事にしようと、視線を合わせ頷き合いながら誓う。
「「ジンには踏み込んだ個人事情は聞かない様にしよう!!」」
ジンが、リビングスペースから移動して二人だけになった時、そう声を揃えて誓いあったのは
彼には言えない二人だけの秘密。
私達はこれを機にお互いに遠慮なく色々な事を話し合える友人同志となったのはなんの皮肉だろう?




