閑話-2
学校が終わりそのまま、研究所へ。
研究所では、体内のN・Sの状況を調べる為に身体中をスキャンされまくる。
「う~ん・・・N・Sのコロニー群が増している事以外は特に変わった事はないわねぇ~・・・身体の重要性の高い場所が密度が高いってだけだし・・・」
恒例となったスキャンが終わり、研究所主任がいる部屋へ通されて、ソファーへと座った俺に主任が述べた第一声がそんな言葉だった。
「で?何かしら問題が生じるんです?」
N・Sの体内環境維持の特性に因って俺は病気らしい病気をせずに済んでいる。
それが問題なのだろうか?と内心首を傾げていると表情からそれを読んだのか
「渡瀬君やN・Sが悪いわけじゃぁないの。・・・何て言ったら良いのかしらね?・・・問題が見つからない事が、私達研究者からしたら問題ってことかな?」
何かしらの問題が生じたならその問題を改善する事が出来るが、問題がないから何も手を打てない事が研究所として問題って事か・・・
確かに、俺やN・Sに問題がある訳では無く、研究サイドとして何も研究出来ない事。それが問題なのは判る。
「俺の他にも被験者はいましたよね?・・・確か10名位?」
と、主任へと問い掛ける。
俺の他にいた被験者達は、それぞれの障害や不具合を正常な状態に維持するだけに留まっていて、俺の様にコロニー群を体内に形成する事には為っていないのだという。
更に言えば、他の被験者達は、通常の生活を維持するのに問題無いレベルに留まっており、俺の様に電子機器に影響を与えかねないレベルには至っていないのだという。
「私達研究者の観点から言わせて貰うと、渡瀬君は試作型・微細機械群・機構での初適合者ってことなのよ?」
対面のソファーに腰掛けていた主任は組んでいた足を組み替えつつそう述べる。
経過観察する対象として、最適の人材という事であろうか?
「更に言えば、渡瀬君自身の生命体としての寿命がどうなるかも、現状判断出来ないの・・・
で、これが最大の懸念事項。
渡瀬君の意思をN・Sが受けて、渡瀬君の身体に何等かの変革をもたらす可能性が高いの・・・」
主任の説明を簡単にいうと・・・
武器を持った人間に襲われた時に、N・Sが身体の一部または、全部を変革・・・端的に言えば武器化させたり、硬質化させたりしてその人間を無力化する事も可能。
俺の意思で腕や拳を金属化したり、衣服を含めた全身を金属化して武器による攻撃を防ぐ事も、可能になるとの事。
どっかの漫画で見た様な身体特徴だとおもったのは秘密だ。
「取り敢えず、現状では日常生活に支障は無い訳ですね?」
主任が丁寧に説明してくれた事の全てをブッタ斬りにしてそう述べる。
主任は、俺の言葉に呆れを顔に滲ませ
つつも、間違った事を述べていない事もあり頷き返してくる。
「まぁ、もしかすると秋原主任が仰る金属化を試す機会が起きるかもしれませんがね?」
そう苦笑いと共に述べる。
今日の学校で起きた、岩動との揉め事というか、言い合い。
とある方法で集めた岩動の人物情報や過去に起こした事例等を記載した10枚にも渡る報告書と、普段の姿と変装した姿が写る写真を添えて、秋原主任へと渡しつつ、それが原因で岩動が武器等を使い、俺を襲撃するに至るであろう可能性があることを告げる。
「・・・歪な性格をしているわねぇ・・・この子・・・確かに、いう通り可能性が高いのは否定出来ないわ・・・ねぇ・・・」
渡した報告書を読みつつ、溜め息混じりに告げる。
秋原主任としては、岩動がまともな社会生活を送れている事、それ自体に疑問がある様だ。
何故、秋原主任が俺が渡した報告書に突っ込んで来ないのかだが・・・
研究者として秋原主任は、「知らない事がある事、それが精神的安定に良い事もある」事を知っている。
「まぁ、程ほどにね?・・・それから、ゲーム?だったかしら?そこでも程ほどにしてね?
データーが獲られるのは嬉しいけど、専門外で解析に手間取るから・・・」
言葉だけで判断すれば、あまりN・Sの能力を使うなと述べているのだが・・・表情を見れば、言葉を裏切っている事が丸分かりだったりする。
要は、期待していると言外に告げている格好だ。
「俺個人としては、N・Sの能力を使おうとは思っていませんよ?・・・無意識に使ってしまうかどうかは別としてね?」
意識的に使えるかどうかは敢えて暈して能力を積極的に使う気がない事だけを告げ、ソファーから立ち上がる。
「まぁ、フォローだけはするけど無理はしないでね?」
そう告げつつ、秋原主任も立ち上がり俺を見送る為に後ろを着いてくる。
主任と数人の研究所所員に見送られて研究所を後にする。
ログインまで時間には余裕がある。
通いなれた道を通り、家路を急ぐ。
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「主任?渡瀬君自身、身体がN・Sの影響で可変する可能性がある事を解っている様でしたか?」
そう主任と共に、少年を見送っていた若い女性研究員の1人が尋ねる。
「どうかしら・・・ね?・・・あの子自身、意識的に感情を隠蔽出来るみたいだから判らないとしかいえないわ・・・ね?」
尋ねた所員は言葉を発する事なく、目を見開いた事で、驚きを顕にしていて、他の所員も同様な有り様である。
「ほんと・・・17歳って思えないくらいやり難いわねぇ・・・」
そういい放つと、踵を返し研究所へと戻っていく秋原。
その後を追い掛ける様に、少年を見送っていた所員達も続く。
その後、研究所内で何が話し合われたかは、彼等のみが知っている。




