閑話-1
初ログインの翌日。
俺は教室にいて、クラスメイト達と話をしていたのだが・・・
「七瀬君!君がやっているゲームを教えてくれないか?彼氏である僕に!!」
問題を起こす筆頭である奴の発言で教室内の空気が凍り付いた様に止まる。
その声がした方向へと身体毎向けると、七瀬の席の前に仁王立ちした件の男がいた。
「お付き合いはお断りした筈です。いつから私が貴方と彼氏彼女の関係になったんですか?いい加減にして下さい!迷惑です!」
七瀬が奴に面と向かって告げる。
「だから、友達から始めようって事だろう?七瀬君!いずれは彼氏彼女になるのだから問題ないさ!!」
相変わらず、自身の都合の良い解釈に変える技能は呆れてしまう。
感心するには、至らないが・・・
関わりあいを積極的に持ちたい訳では無いが、七瀬はゲーム内での大事な相棒の1人だ。
ここで手助けするのは、ゲーム内での関係を保ち円滑にする為には必要だろう。
そう考え、自分の座席から立ち上がり話をしていたクラスメイトに謝罪をいれて、七瀬の席へと向かう。
「岩動。七瀬はお前と付き合わないと述べた筈だか?断られた事が、どこをどう解釈すれば、友達付き合いから恋愛関係へと発展するんだ?」
岩動と七瀬の間へと割り込む形で身体を入れ、岩動の視界から七瀬を隠す様に立ち、そう告げる。
俺と岩動とでは、頭二つ分の背丈の差がある。相対すると、俺が岩動を見下ろす形になる訳で、岩動は顔色を若干青ざめさせている。
「渡瀬!!お前には関係ないだろ!!邪魔をするな!」
青ざめた顔のまま、虚勢を張るように俺を見上げ問い掛けを無視した言葉を叫ぶだけだ。
「岩動。お前がやっている行動、相手が拒絶の意思を示しているにも拘わらず、関係を迫る事がハラスメント行為だと理解出来ているのか?」
そう問い掛けるが、岩動は問い掛けを無視する様に
「僕が決めた事。それが正しいんだ!七瀬君は僕に遠慮して友達から関係を進め様としているだけだ!それをお前が曲解して邪魔をしているんだ!!」
と叫ぶ。
溜め息を吐きたくなる位自己中な考え方だ。
周囲のクラスメイト達の表情は?と窺えば、岩動への侮蔑の視線が向けられているのだが、奴は気付いていない様子。
「お前が決めた事全てが正しいとは限らない。
正義、正しいは人の数だけ存在する。
お前が決めた事が多数の人間にとって正しい事だと認識される事は現状ない。
その証拠に、周囲の人の目を見るんだな?どういった感情が込められている?」
岩動に周囲をみる様に促す。
俺の言葉に、叫ぶのを止めて周囲を見渡す岩動。
周囲のクラスメイト達からの視線を受け、「ヒッ!!」と声をあげる。
「どちらが間違った行為、言動をしている?岩動」
そう問い掛ければ、立っていた場所から踵を返し、岩動はそこから立ち去り、教室を出ていく。
それを見送ると、クラスメイト達から賞賛の声があがる。
「ざまぁ!!」「スッキリした~!」「相変わらずウゼェ~」
クラスメイト達も、岩動には嫌な思いをさせられ続けているので俺を批判する言動はない。
「渡瀬君?良いの?」
七瀬が短く聞いてきたのは、俺が岩動の他者を排除しようとする行動の標的になる確率が高い事への心配が含まれていた。
「アイツが講じる策で、ヤられる程ヤワじゃぁないさ!・・・気にするな?」
身体毎、七瀬へと向き直りそう告げて頭を撫でつつ笑いかける。
奴の筐体番号と筐体アドレスは昨夜の内に調べあげた上で、各ゲーム運営会社に要注意人物の1人として情報を流しておいた。
アレがそれぞれの運営会社が提供するゲームをやった場合、運営側から常に監視される対象に
なるのは確率は高い。
過去の情報を洗い出してみたが、運営側からゲーム内で警告され、アカウントを消された事が何度もあるのが解った。
この情報漏洩でゲームが出来なくなる事はないだろうが監視されるのは確実だろう。
「アイツが、ゲームをやったとしても運営側から常に監視される対象になるさ・・・言動が言動だからな?」
冗談めかして、そうクラスメイト達へ聞こえる様に告げれば、「だよなぁ~!」と同意の声があがった。
七瀬がやっているゲームが何であるか誤魔化す意図はなかったのだが、結果としてクラスメイト達に隠す形となったのは間違い無い。




