旅へ-4
『音声入ります』
AIの声と共に、周囲の雑音混じりの怒鳴り声が聞こえてくる。
要約すると、お前らにこの艦は勿体ない。俺がありがたく使ってやるから明け渡せ。
パーティー内に女が居るなら、女も置いていけ。
PvsPでどちらがこの艦を所持するに相応しいか決める。
との事だが、あまりにも一方的過ぎる条件提示であり、受けるメリットが此方には無さすぎる。
『そっちが出す物はなんだ?此方の受けるメリット全く無いんだが?
それと、いっておくが此方はPvsPを受けるつもりは欠片もない。』
と、告げ相手の反応を映像で伺う。
相手はヒュームのソルジャーである様で、顔を真っ赤にして激昂している様子。
ヒカルとイリスは、その様子を見て苦笑を浮かべていたが、俺が注目していたのはそれではない。
ソルジャーの男が所持している車両だった。
1人であるにも関わらず、車両を2両も所持している事にだ。
初期取得品であろう、ガトリンクガンを持っているにも関わらず、車両を2両も所持しているのは明かにおかしい。
『AI、車両の映像を拡大。両方の車両を映せ。』
AIに両方の車両の拡大表示を指示し、その映像を見る。
その内の1両には、明らかな弾痕がありプレイヤーを攻撃してその車体を奪ったと思われる事が判明した。
もう1つの車両には弾痕が見られないが、明かにソルジャーが初期取得品の他に車両を持っているのはおかしい。
「明かに片方の車両はPKをして奪った様だな?
もう1つは、ログインして来ていないプレイヤーの初期取得品の可能性が高い。」
と、二人へ告げる。
と、激昂していたプレイヤーから
『まどろっこしい!・・・テメェらをブッ殺す!』
明らかなPK宣言と共に、そのプレイヤーは車両へと乗り込む。
「ってぇことはぁ・・・片方の車両は本当ならウチが貰う筈だったモンちゅう訳やんな?」
明かに、苛立ち気な口調に変わったイリス。
ヒカルもまた、その表情を曇らせている。
『マスター!・・・プレイヤーが攻撃を加えてきました。損害皆無・・・反撃しますか?』
相手は、かなり短気なプレイヤーらしく此方に損害を与えられるかも怪しい車載武器で攻撃をしてきた様だ。
事実、此方の損害は無い。
AIは、AIで損害の無い攻撃に対して煩わしいと感じたのか自己判断で反撃許可を求めてきたのだ。
俺は即座に反撃許可を出さずに、とある案を提示しようとするがその前に
「えっと、反撃は許可!ただし、車両に直接損害を与えるんじゃなくって、衝撃とかでプレイヤーがダメージを受ける形での攻撃とかって可能?」
ヒカルが口にしたのは、俺が出そうとした案と完全に一致していた。
「せやんなぁ・・・ウチもヒカルの攻撃案に1票やな?・・・ジンは、どないやの?」
イリスもヒカルが口にした案を気にいったらしく両手をあげて賛成してくる。
「承認。車両に攻撃せず人員にダメージを与える攻撃を!」
拒否する理由なぞありはしない。
即座に反撃への許可を出す。
恐らく、直接車両を攻撃してダメージを与えてから人員を強引に外に出してから攻撃するより明かに酷い結果になるであろうが、知ったことでは無い。
自身が、利益を獲るためなら手段を選ばない奴に此方が真っ当な方法をとる必要性等ありはしない。
況してや、PKをして車両を奪おうとしてくるならば、反撃される事があるのは相手も解りきっている筈だ。
例え、反撃が苛烈であったとしても、PKの対象にしたパーティーの能力を見誤った己のミスで片付く事だ。
映し出される映像には、地面に爆裂弾を撃ち込まれて何度も車体ごと浮き上がっては地面に叩き付けられ、明らかに落下ダメージを受けてフラフラになっているプレイヤーが映っている。
やや暫くして、落下ダメージの蓄積でLPが全損し、身体がポリゴンの欠片となって砕け散るプレイヤーを確認する。
「AI、残された車両を回収せよ!・・・イリス?回収された車両の修復と整備を任せる。・・・頼めるか?」
と、AIに残された車両の回収命令を出すと共に、イリスへ回収した車両の修復と整備を頼む。
「OKや!・・・艦の積載資材を使こうても構わんやろ?」
と、承諾と共に確認してくるイリス。
それに頷き返すと、イリスはそのまま格納庫へと駈けていく。
その後ろ姿はどこか嬉しげであった。




