旅へ-3
「始まりの町」への旅が始まった訳であるが、問題が出てきたのだ。
モンスターがポップする場所というのは得てしてランダムであるし、その時間もまた一律では無いのが常だ。
簡単にいうと、大型キャタピラの進路上にモンスターがポップする事もある訳で、大きくとも、軽自動車程の大きさのモンスターが己の体躯を軽く上回るキャタピラに踏み潰されて無事でいられる訳がない。
戦闘らしい戦闘がないまま俺達はレベルアップを続けていた。
レベルアップがひっきりなしでは無いのがせめてもの救いだろうか?
「骨のあるモンスターおらんのかいな?」
無体な事をいうイリス。
この陸上戦闘艦に轢かれて無事でいられるMOBがいたら俺が見てみたいと思うが口には出さない。
「いるとしたら、高額賞金首モンスター位じゃぁないか?」
「えっと・・・それって何「やのん」?」
と俺が言えば、イリスもヒカルも分からなかったらしく、異口同音に尋ねてきた。
賞金首モンスター。
この世界で幾度も破壊行為を行った為、ハンターギルドから賞金を首に掛けられたモンスターを総称して賞金首モンスターと呼ぶ。
高額賞金首モンスターはその上位に属し、幾度となく首を狙って挑んだハンター達を返り討ちにしてその首に掛けられた賞金を更に上げたモンスターをいう。
これ等賞金首モンスターは倒された場合、一定期間を置いてリポップするが、賞金額は落ち時間経過と共に上昇していく。
これ等賞金首モンスターを倒した場合、レアパーツを取得する事があり、このレアパーツを組み合わせると、車両や武器になる。
賞金首モンスターが最前線プレイヤー達に狙われる理由がこのレアパーツのドロップにある。
と、説明すると
「あ~それが、メカニックやメディックが戦闘職連中から要らん扱いされる理由なんかぁ~・・・難儀やなぁ~」
そう、何処か遠くを見やりつつ呟くイリス。
「メディックは前衛の戦闘職が全滅したら役立たずだもんねぇ~・・・」
ヒカルがそう溜め息混じりに呟く。
ヒカルが言う様に、前衛の戦闘職が壁になっているなら、メカニックやメディックの活躍の場はある。
が、戦闘職が倒されると戦闘手段を持たないメディックやメカニックは死亡するだけなのだ。
これが、最前線プレイヤーの一部戦闘職達が良くいうメディックやメカニック等の後方支援職不要論である。
戦闘手段を持たないから武器を持たせないまま、前線に後方支援職を引っ張っていって自身のパーティーが全滅したら後方支援職を役立たず扱いするのは如何なものか?
「最前線でパーティーが全滅するのは、後方支援職が役立たずだからじゃぁないさ・・・
敵の能力を戦闘職が詠み違えたのが原因だよ?
車両能力や車載武器の能力が対象の賞金首モンスター倒すだけの能力に届いていない事に気付かずに挑んだ結果で、・・・不要論を説いている連中は、能力が届いていなかった事に目を向けないで騒いでいるだけさ・・・」
と、二人へ説明する。
事実、最前線の最寄りの町で買える武装を最大限まで改造し能力を底上げした車両を使ったら、メカニックやメディック等を入れたパーティーでも、賞金首モンスターを撃破した報告例は探せば探しただけ出てくるのだから。
戦闘職のソルジャーのみのパーティー構成で「始まりの町」近郊にポップする賞金首モンスターの殆んどを回復手段を用いずに撃破できた事が不要論を説いている連中が根強く残っている理由になるだろう。
ただし、それ以降の賞金首モンスター達には同じ編成で挑んでも全く歯がたたなかったらしく、全滅している。
『マスター・・・進路上にプレイヤーが乗車する車両を発見しました。・・・進路を塞ぐ形で停止しています。・・・どうしますか?』
説明を二人へとしているとAIから報告が入る。
進路を塞ぐ形で停止しているとは穏やかじゃぁない気がする。
陸上戦闘艦を見て、欲しいと思って待ち伏せしているのか?それとも別の要件があってなのだろうか?
後者なら、問題はない。
此方が叶えられる件なら、融通はするつもりである。
が、前者なら面倒な事になるのは間違いないだろう。
「取り敢えず、停止。・・・あちらの声を拾ってくれ。」
そうAIに指示を出す。
「なぁジンはん?・・・進路塞いでるプレイヤーって・・・?」
AIの報告を聞き、イリスが尋ねてくる。
声を拾わないでも、十中八九この艦を明け渡せと要求してくるだろう事はイリスにも分かったらしい。
「もし、そうだとしたらどうするの?」
ヒカルも同じ結論に達したらしく、俺の判断を聞いてくる。
「もし、そうなら・・・無視かな?・・・うん。・・・あちらの車載武器でこの艦を撃破出来るとは思えないし、無視で構わないと思うが?」
全地形対応車両の車載武器でこの艦の装甲を撃ち抜くのは至難の業であろう。
無視していれば、恐らく相手は攻撃してくるだろうが、こちらはそれを迎え撃てば良いだけで反撃行為がPK行為とは成らないだろうと予測出来る。
どう事態が動くかは、俺達ではなくあちら「進路塞いでるプレイヤー」に懸かっているのだから。




