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光と影  作者: 紗綾
「避けられるのはまたこう…なんか違うじゃないですか!」 −姫−
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Ⅲ「夕食早くないですか…?」

「あの、碧さん、荷物はどこに…」

大きな手荷物をもつ。洗濯してもらえるにしろ、ある程度の服は必要だと菊さんが持たせてくれた。ついでにお菓子とかも。

因みに、服や下着などは暗殺者となって数日後にどさっと新しいものが届いた。禅さんが注文しておいてくれたらしい。どれもすごく可愛くてセンスがある。…そして、サイズなどはおしえていないはずなのに凄くぴったりだった。………怖い。

「手荷物はあとでお部屋に案内しますので、それまではここに置いておいてくださいです。」

碧さんは来てすぐに通された応接室…立派な置物がかざられた和風の部屋の1角を指さした。荷物を置いて一息。この家は元いた屋敷並に広くて大きい。まあ、どちらかというとオシャレな洋館といった佇まいのあちらと荘厳で趣深い屋敷では全然雰囲気は違うのだけど。これから何もする用事がないのなら、屋敷のあちこちを見学させてもらいたい。時計の針は5時を指している。時間はまだまだだ……。

「さて、お夕食を食べましょう。少し遅くなってしまいました。」

夕……食……?

「あ、あの、碧さん。夕食にはまだ早くないですか…?まだ5時ですけど…」

「んー?」

にっこにっこと有無を言わせない笑顔を向ける碧さん。なにか寒気がした。

「ああ、それはねっ、藤咲家は夕食を普段は4時30分に食べているんだ!まあ、碧様の方針なんだけどねっ」

碧さんの微笑みを見るとさっきまで赤目さんに絡んでいた魁さんがアホ毛をぴこぴこと揺らしながら答える。そして褒めてーとでもいうように碧さんの前でしゃがむとそのままその頭をにこにこと微笑んだ碧さんに蹴られていた。…あっ、嬉しそう。

和テイストのダイニングルームに通されると、そこには美味しそうな和食のメニューが並んでいる。色彩も豊かで旅館のようだった。

「わぁ…!美味しそう!!ってあっ、うなぎじゃないですか!凄い…!」

「……姫。それは天と魁のものですよ。」

「え…?」

興奮した私の服の裾をくいっと引っ張ると、別の食べ物の並んだ席に案内される。そこには質素な少なめのご飯と漬物、そしてサラダ。申し訳ばかりの小さな魚。碧さん同じメニューの並んだ向かいの席に座っている。

「はい…?な、なんでこんなに違うんですか…!?む、むこうはあんなに美味しそうなのにぃ…!?」

「天と魁は一般のお客さんですから。姫は碧と同じ生活を送って学ばせるようにと言われてますです。」

碧さんはにっこりと笑って食べようと促してくる。

「………姫。これ………いや、なんでもない。すまない。」

隣に座ったフルコースの赤目さんが気を使ったようにうなぎののった皿を私の方に寄せようとして、止まる。碧さんの重圧に耐えきれなかったらしい。…絶対足りない…。後でお腹すいて仕方なくなりそう…。

美味しそうな料理を尻目に黙々と白いご飯を食べる。大きな机に対し4人しか座っていないからかとても寂しかった。

「あの、そういえば…藤咲家には他に人、いないんですか…?」

「ああ、他にもう二人の藤咲の人間が空いている時には一緒にお夕食を食べますです。あとは紅たちが遊びに来たり。」

「住み込みのファンクラブ会員は月に1度の碧様と一緒に食べようの会以外は別室だしねっ!!まあ?僕はナンバー1だから、特権をもってるからここにいるんだけどねっ!ねー、碧様ぁっ!」

「………こんな特権を与えたことを後悔してるわ。」

碧さんはげんなりした表情でぼそっと呟いていた。…?ほかの藤咲家…。

「もしかして桜さんですか!」

碧さんと同時に紅さんから聞いていた妹さんの話。明るくて優しくて可愛くていい子だと聞いた。会ってみたい人の一人だから、会えるかもしれないと密かに期待してたり。

「ですです。桜は今は所用でお家にいないのです。」

そういうと手を合わせご馳走様でした。という碧さん。私も食べ終わったけど物足りない…。赤目さんはデザートの餡蜜をぺろっと食べ終えていた。恨めしい…。

夕食が終わると早速お風呂に案内され、立派な温泉を楽しんだ。ゆっくり湯船に浸かってから上がってくると時刻は6時30分を回っている。既に上がり終わった赤目さんと既に入ったあとだという碧さんは既に荷物のある部屋で待っていた。

「…おかえりなさいです。じゃあお部屋に案内しますね。」

碧さんに通された部屋は落ち着いた畳の部屋だった。…何故か2組の布団が敷いてある。

「ここが姫と天のお部屋になります。普段使ってない部屋ですがちゃんとお掃除はさせてありますから安心してくださいです。」

「あの、安心の前に赤目さんと同じ部屋なんて…!!」

「………頭領の差し金か……姫。俺は外で寝るからここは一人で使ってくれ。」

今までどこかぼんやりとしてほぼ喋らなかった赤目さんが荷物を持って外に出ようとする。碧さんはにっこりと笑いながら廊下はダメですよ?というと、どうやら屋外で寝るつもりらしい。

「それならいいだろ…アウトドアなら慣れてる。」

「…別に構いませんがおすすめは致しませんです。お外にはわんわんがいっぱいうろうろしてますから。」

ふんわりとした言葉からなんとなくチワワやプードルを予想する。…犬がいっぱいいるとたしかに寝るには邪魔ではありそうだけど戯れたいなあ…。外とつなぐ障子を開ける。そこには大きな強そうな犬たちがグルグルと唸っている。……………。

「…構わない。倒せる。」

「番犬全滅させるとか馬鹿じゃないのかしら?いいわけないでしょう」

んんっ?なんか碧さんの口調がちょくちょく変わってる気がするなあ?…ともかく。赤目さんはこのまま避け続けるつもりなんだろう。…それもそれで尺な気がした。

「…赤目さん。いいです。この部屋で寝てください。」

部屋のはしにずるずると布団を引っ張る。私なりの妥協案だ。赤目さんも少し黙ったあと小さくわかったと呟いて布団をもう片方の端に寄せる。碧さんは満足そうににっこりしていた。

「7時に消灯ですから、おやすみなさいですよ。」

「早くないですか…?」

「夜更かしは美容の大敵ですよ、姫。」

綺麗な肌をつくるためってことか…厳しいなあ…。碧さんが問答無用といった雰囲気で扉を閉めるとやがて赤目さんと私の間に沈黙が降りる。

とりあえずもぞもぞと布団に入る。赤目さんも布団に入ったようだった。そして再び訪れる沈黙。寝ればいいんだけど、まだ7時なのだ。眠れない。

「……赤目さん。」

「………姫。」

その間、ほぼ同時。気まずい沈黙。

「………悪かった」

「…え?」

「…何故か、お前を見ると心が落ち着かない気がして…避けていた」

「……女の子を無視するなんて、赤目さん最低だと思います」

「…禅と同じことを言うんだな」

「…言われてたんですね」

「ああ。」

また沈黙。私は天井を見ているだけだったし、多分赤目さんもそうだったんだと思う。お互いに顔を合わせるどころかそっちも見ない。そんな会話だった。


「…そういえばこの前、禅さんが酷い目にあったっていってましたけど」

「……酷い目?」

「…赤目さんに壁ドンされたとかなんとか」

「……何か問題でもあったのか?」

「それ正気ですか」


ぎゅるるるるるる。

「…姫。大丈夫か」

「大丈夫じゃないですよ…お腹空いた…」

「碧さんは努力家だから」

「そういう問題なんですか…?はぁ…」


その日、どちらからともなく眠りにつくまで私たちは、お互いの顔を見ないまま思いついたことを話していた。決して楽しかったわけじゃないし断じて仲良くなったわけじゃない。…暇だったんだ。

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