Ⅱ「辛辣だね!いいよいいよ!もっと罵ってえええええええええ!!!」
「碧様!お掃除完了しました!!」
「今日の昼食は碧様のおっしゃったとおり季節の野菜をふんだんにあしらってみました!いかがでしょうか!」
「碧様!お、お洗濯担当を…わ、わたくしめがやってもよろしいのでしょうか…!?」
建物内には、『I♡碧様』と書かれたハチマキを身につけた男があちこちで家事をしていた。碧さんを見るとみんな目を輝かせて土下座をしながら口々に自分の功績を伝えている。
「こ、これは一体…」
「あら…えへへ、ありがとうございます。皆とってもとってもお上手ですよー☆」
対する碧さんはその男たちに笑顔を振りまきながら悠々とすり抜けていく。…なんか…凄い…。赤目さんは眉間にしわを寄せながら「相変わらずだな…」などと呟いていた。いつもの光景なのか…。
「あ・お・さ・まああああああああっっっっっ!!!!」
と、突然に現れた謎の人。碧さんに抱きつこうとしてするりと避けられ後ろの柱に激突していた。謎の人はかなり勢い良くぶつかったためか一瞬固まる。痛そう。しかしすぐに振り向くと、凄く嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「へへへ、碧様のそんなところも愛してるよぉぉぉっ!!生まれ変わっても貴方様の下僕になりたい…っ」
「ありがとうございます。碧も貴方が生まれ変わって顔と身体と中身が変わったらもっといいなあと思います。魁。」
「辛辣だなぁっ!いいよ!もっと罵ってぇぇぇっ!!!」
その人は、何も言わなければ儚げな美少年といった佇まいのすごく綺麗な人だった。さらさらとした長めの髪も、線の細い体も白い肌も、女の人だと言われたら信じてしまいそうなほど中性的。…しかし、表情はだらしなく緩み、言っている発言も気持ち悪い。…この人は一体…。
「あ、あの…碧さ…」
「はっ!こんなところに美しいエンジェルがいるじゃないか!ツインテールの君!是非ともベッドで語り合わないkげふぅっ」
私の存在に気づいた男の人が今度は私の手を握り口説こうとしてきたタイミングで赤目さんがその男の人を殴り飛ばした。おお、綺麗な右ストレート。
「この強く愛のある右ストレートは誰かと思ったら…天くんじゃないかあああああああああっ!今日もイケメンだね?そろそろ甘い蜜月を過ごしてくれる気になったかげふぅぅぅぅぅぅ!?!?!?」
この後のことを語るのは野暮ってものだと思う。
☆
暫くしてようやく落ち着いたところで、やっと彼の紹介をされた。碧さんがにっこりとした笑顔で吊るしあげられた魁さんを指す。
「この方は魁。闇医者さんですよ。ですが見ての通りド変態さんでドエムさんなので関わることはお勧めしませんです。」
「やだなぁ碧様!ただ僕は美少年美少女が大好きなだけのごく真面目な医者ですよぉっ」
吊るされながら興奮したようにぴこぴこと二本のアホ毛を揺らす魁さん。
「というわけではじめまして!美少年美少女をこよなく愛する魁と申します。碧様ファンクラブ会長にしてしがない闇医者やってまーす!」
「あのー…色々突っ込みたいのですけど…」
「いいよ!どこにでもつっこんじゃってぇっ」
こ、この人怖い。そそくさと碧さんの後ろに隠れると碧さんが「よしよーし☆」と撫でてくれる。女神だと思った。
「あの、碧様ファンクラブ…ってなんですか?」
「碧のためにご奉仕してくれる人がいーっぱい集まったファンクラブです。家事をしてもらったりお小遣いをもらったら見返りに碧がよしよししてあげるシステムです!」
なんかよくわからないけど碧さん悪女説…!?よしよしするだけであとは働かせるってなんだろうよくない感!!赤目さんに視線で訴えると凄く微妙な表情で肩をすくめていた。
「あの、それってようは男をこき使って…」
「はー…人聞き悪いわねぇ…」
可憐で愛らしい碧さんが突然暗く大人びた響きになった気がした。
「あ、あの…?」
「碧はただ、優しい人たちにお手伝いしてもらってるだけですよ!」
一瞬でその雰囲気は消え可愛らしくにっこり微笑む碧さん。
…………。…敵に回してはいけない。そう確信した。
紅さん、碧さんはいい子だよっていってましたよね…?早速雲行き怪しいんですが…ッ!帰りたい…。




