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光と影  作者: 紗綾
『片鱗』  −天−
15/26

肆『特訓』 

お久しぶりです。またやっていきたいなあと。良ければ見てくださると嬉しいです…!

 あれからというもの、俺は姫の稽古をつけるか、後始末に追われるかしていた。姫は稽古をそれなりに頑張っている様子もあり、実際ある程度筋はいいのだ。運動神経はいいし、厳しいのメニューも文句を言わずにこなす。男ですら最初は苦戦するメニューをしっかりこなすのだから、そういった意味ではいい感じだ。しかし、どうしてかあと一歩足りない。俺は彼女の奇襲を割と軽々避けられるし、他の奴らも簡単にあしらえてしまう。筋はいいが、その程度、なのだ。やはり女と男との身体能力の差なのか。

「天ちゃん、姫ちゃんはどーう?頑張ってる?」

「…はい。けど、やっぱり…」

「やっぱり?」

「足りない。筋はいいし、身体能力は高い。だが、」

「あとひと押しが足りない、と…」

菊さんが口元に手をやって考え込んでいる。少しぼそぼそとひとりごとをつぶやいている様子だが、聞き取れなかった。

「やっぱり、女の子は違うのよねえ。」

菊さんは笑顔でそう打ち切ると携帯電話を片手にどこかへ行ってしまった。相変わらず忙しい人だ。それでもこうやってメンバーへの気遣いを忘れないのだから尊敬できる。

 時計を見ると、もう稽古の時間を差していた。

「…行くか。」

姫はもう練習場にいるだろう。律儀に毎日時間前から一人でトレーニングしているのだ。本当に真面目な少女だ。

「あ、赤目さん。…ふぅ。」

俺に気づくと切らせた息を整え、そっぽを向いた。いつも俺に対してはあたりが冷たいのだ。正しい名前も呼ばなければ、話しかけても無視か毒舌が返ってくるだけだ。嫌われているのだろう。まあ、嫌いになるのも仕方ないし、嫌われるのも憎まれるのも慣れている。でも、何故か少女に嫌われると思うと少し胸が痛むのだ。罪悪感のせいだろうな。

「…はじめる」

「…よろしくお願いします」

嫌ってる俺に形式上でもちゃんと挨拶をするのだから、彼女は礼儀正しいし真面目なのだろう。俺は嫌われていようとも、そういう彼女を見ていると応援したいと思う。平穏を壊した俺を憎むことで精神が安定するなら、それもまたいいんだろうな。

「…とりあえず、1時間ランニング」

「はーい」

事務的な会話。禅や黒などは、姫とのトレーニングは会話が弾ん

で楽しいと言っていたが、俺とでは最低限の会話しかない。俺が話すのが苦手というのもあるのかもしれないが。

 ランニング中姫は何度か木刀を俺に振りかぶる。その後も何度も仕掛けてきた。俺が説明する最中、休憩中、ふとよそ見をした時。さりげない動きはマスターしてるし一般人ならいけるかもだが、プロにはかすりもしない。この日も一度も当たらなかった。

「…姫、お疲れ様。」

姫は曖昧に頭を下げて、お疲れ様ですと小さくつぶやく。そこに水を注いだコップを持った黒が来た。やっぱり黒も心配しているようで、ちょくちょく俺に様子を聞いてくるのだ。

「おい!天!黒!藤咲家族がもうすぐ来るそうだ!」

壱が興奮したように上がってきた俺達に叫ぶ。藤咲か。あそこの土産の酒やつまみは旨いんだよなあ。空さんにも相談したいことがあったし、これは朗報といってもいいだろう。藤咲家族はここのメンバーに人気だからな、いつも皆浮足立つのだ。


 食事を食べ終わり、酒を飲む。酒が入って酔ったメンバーはそれぞれテンション高く会話を続けている。壱はすでに一杯飲むと酔って寝てしまったし、黒と禅は楽しげに姫の話をしている様子だった。姫は何かと話題に上る。唯一の女子で、容姿も優れていて、素直で真面目なのだから、人気が出るのも当たり前と言えるが。当人の姫は、紅さんと楽しそうに会話をしていた。やっぱり女の人と会話するのは楽しいのだろう。あんなにいきいきとした姫は初めてかもしれない。俺はといえば空さんに相談をしていた。何かといえばもちろん、姫のことだ。

「……へぇ。姫ちゃんが冷たいのが気になるんだ。」

「…いや、……まあ…」

嫌われるのがしかたないとはいえ彼女を不快にさせ続けるのも気になる。できることならこれ以上、傷つけたくないし…

 今までの経緯や姫の態度を最初から話していくと、空さんは一口ビールを口に含み、微かに口角を上げた。

「…意外と、嫌われてはいない…かも?」

「……それは…ないだろ」

空さんはこういう冗談いうタイプだったかな。否定すると、空さんが珍しくいたずらっぽい表情で微笑んでいた。

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