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光と影  作者: 紗綾
『片鱗』  −天−
12/26

壱『驚愕』

 最初、じっと自分を見ている少女を見た際、しまった目撃された、位にしか思っていなかった。今回の仕事は、ターゲットが一般人なため、手っ取り早い選択をした。その結果、開いている窓からの侵入。そして銃での結構。今思えば、凄くなめていた。小さな少女を見かけても、まあちびっこだし、と締めくくり、そのまま戻る。しかし、何故か帰り際に見た少女の、冷静でいて無邪気な瞳が心に残っていた。後味が悪い。

「.........荊。...今回のターゲットの情報を、もう一度見せてくれ。」

「んー?別にいいけど、なにかあった?」

 帰宅早々、引きこもりの荊の部屋に踏み込む。別に、少女が気になったわけではない。特に何がしたいという訳ではないが、妙な雰囲気を感じていたんだと思う。しかし、その程度の興味なら、よくあることなので、すぐに埋もれてしまっていた。


 次に出会った時、俺は一瞬気づかなかった。もうすっかり幼子ではなく、美しい娘と成長している。時の流れは早いものだなぁと思いつつ、俺を俺と気づいていない様子の彼女につれられ、中に入った。

 元は、近隣宅のターゲットの下見をするためのカモフラージュで入った家。奇妙な縁があるものだ。彼女に連れられ、リビングに入ると、穏やかな一家団欒。眩しいほどに平穏な日曜日の朝。と、椅子に座る男が目に入る。息が止まった。ターゲットだったはずの、もうここにいてはいけない男の姿。メガネを外しているものの、明らかにそう思えた。と、少女が唐突に声を上げる。


「点検の方が来ましたし、秋先生、今日はおしまいにしましょうよー。」


 秋先生。聞いたことない名前。彼女が自分に感づいて妙な設定を作り出したのかと思い横目で伺うも、彼女は実に自然だった。素人にこれを嘘でできる度胸はないだろう。ましてや、兄を昔殺した暗殺者の前で、どうどうと。

「ああ...そうねぇ。そろそろおしまいにしましょうか。宿題やっておきなさいよ?」

「うー。分かってますって秋先生。」

 女のような口調。何処か菊さんに重なって、少し可笑しかった。これが、ただのそっくりさんだという気もしなくはないが、念の為というやつだ。裏に入る前の経路のあちこちに盗聴器をしかける。失敗していたわけではないと信じたいが、念には念を。

 作業していると、あの少女が自分を見ている。ターゲットを殺した際に見ていた時の瞳と重なった。

「いつぞやの妹だな、お前。」

「.........」

少女は応えない。ただ、無機質な瞳でこちらを窺っている。

「さっきからなにじろじろみている」

「...おにいちゃんを殺した男のくせに...私を笑いに来たのですか?」

憎悪のこもった、敵対的な視線。ちらりとみてみれば、瞳にも憤怒の色が見て取れた。隠すことでもないので、素直に答えようと思った。

「いや。偶然だっただけ。殺した後のことなんて興味ないからな。」

興味がないわけじゃなく、怖いだけだというのに。淡々と答えているが、自分のそんな小さな嘘に腹が立った。

「どうでしょうね。」

刺々しい態度。...自分は好きでやっているわけじゃない。...そういいたくなってしまう。なにも変わらないというのに。


「さっきの男。兄に似てたな。」

「............そうですか?」

あの男についてでカマをかけてみる。少女の声が揺れた。

「ああ、しくじったかと思った。」

俺の言葉に、少女が息を呑む気配。...もしかして、と思う。彼女は否定するはずだ。...しくじっているのだとしたら。隠したいのだろうから、きっと...

「......私も正直、そっくりだと思ってます。」

 思いもよらない回答。賢そうな彼女とは思えない認める言葉だった。

「馬鹿みたいですよね。兄の面影追っかけて、しょっちゅう教えてもらうって名義でうちに来てもらうのなんて。」

「...ブラコンだな」

 顔を上げると少女は悲しそうに微笑んでいる。それはか弱い、幼い少女のもので。罪悪感。...捨ててもまとわりついてくる感情。少女がそこでようやく、小刻みに震えていることに気づく。...今までのは、虚勢...?

「お前、怖いんだろ」

「.........」

少女は応えない。

「慣れてるし、お前が当然の反応。...じゃあ、終わったから」

痛む心を守るように立ち上がる。これ以上いると、自分が壊れてしまいそうな気がした。車に戻る。盗聴器を聞くため、イヤホンをつけた。

『雛。どうしたんだ?さっきから二人ともおかしいぞ?』

『あはは!なんでもないよパパ。お兄ちゃん今帰ってくるって。』

『全く、急に変なことを言い出したと思ったら』


あれが、演技?最後の表情も全て、演技だというのか?

『...もしもしー?今アニメ見てるからあとにしてくんない?』

「荊!7年前のターゲット、稲葉の妹のデータを送ってくれ!」

『ちょっ、なに、天君なんか違くない?7年前とか今更?』

「.........いいからはやく...!」

『わぁった、わぁったからちょい待ってよ!』

荊が根負けしたようにデータを探してきた。小型プリンタが、紙を吐く。

 稲葉雛。少女は、(ターゲット)の存在を、俺に欺いてみせたというのか?

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