Ⅸ「.........赤目さん、終わりです。」
今日の修行も、赤目さん担当の日。私は昨日言われた紅さんの言葉を反復する。...うん、大丈夫。
「...始めるぞ」
そういっていつものように修行を始める赤目さん。一番いいタイミングを狙って、一発勝負。きっと二度も同じ手は通じない。だからこそ、刃は最後の最期まで見せずに。
「お手柔らかにしてくださいよー?」
「...無理だ。」
ですよね。もう聞き慣れてしまった。手は抜けない。いじわるでも何でもないのだろうけれど。私が武器を身につけるまでは、終わらない。しかし、今日、終わらせてみせる。
暫く、いつもの単調な修行が進む。体力はついてきた。速さもそれなり。それでも尚、彼らに追い付くことはできない。
「...で、こうする。...姫?」
私の呆けた表情にようやく気づいた赤目さんは、心配そうに眉をひそめ、覗きこんでくる。近い。この距離ですらも尚、当たらせはしないんだろうけれど。
「...............です」
「...?」
「赤目さん、好きです。」
ぐっと上目遣いに。彼は鈍感で天然だからこそ、まっすぐと伝えて。私はふわりと微笑んでみせた。明らかな動揺の色が伺える。
そのまま彼の胸に飛び込んで。流れるように抱きしめた。
「......姫」
「.........」
「...姫?」
私は首筋にさり気なく手を置いた。木刀を握ったまま。何かぴりりとくるような感じがする。
私はにこりと微笑んだ。彼は思考が追いついてない。
「......赤目さん、終わりです」
存在感を感じさせるように、首元の木刀をすぅっと引いた。うまくいったことがうれしくてたまらなくて、笑顔がつい浮かんでしまう。赤目さんもようやく気づいてのか、目を見開いている。そして、小さくお疲れ様、というといつもよりおぼつかない足取りで私から離れる。どうやら終わりのようだ。
「...大丈夫ですか?手くらい貸しますけど」
「必要ない。...部屋で休んでて」
いやにはっきりした口調。体調悪かったのか?いくら私が木刀を当ててクリアしたからって大げさな気がする。なんか腹が立って、後ろ姿の赤目さんに叫んだ。
「私っ!本気で好きなわけじゃないですからっ!嘘ですからねっ!?」
勘違いされても困る。彼には聞こえていただろうか。
*
彼女は微笑んでいた。実に可憐に。彼女の触れたところも、心地良く。...そして、木刀の存在に気づいた直後、俺はぞわりと寒気。はっきりとした急所に。的確な位置で。笑顔のまま。溢れんばかりの殺気を放ち。
俺は、殺されていた。
次回より赤目さんこと天君サイドで一旦冒頭より戻らせていただきます。短くてすみませぬ。




