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5th episode-3


 右腕が砲となった人型が身構えた。

 口径七十六ミリの、長砲身に、根本から次々に光のリングか顕れ回転し始める。

 そして。


   ドンッ。


 と、大気を揺らす音を響かせ、人型が砲撃した。

 ヒュンッと空を裂き、魔法で強化された砲弾が、ダスクメタリカの戦車型を貫く。一瞬後に内側から膨れ上がって爆発する戦車型。


 その周囲にひしめいていた衝角の頭を持つ蟻のような歩兵型ダスクメタリカ数体が巻き込まれて砕け散った。

 その残骸を乗り越えて前進してくる戦車型、歩兵型に対して進撃していた魔導戦車が次々に停車していき、その胴体に乗せられた砲塔が旋回して狙いを付けた。


 砲身に光のリングが顕れ回転する。さらに砲口の正面に魔法陣が展開。同時に発砲!


   ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 と、単音を連ねて響かせ、居並んだ魔導戦車達から伸びる八十八ミリ砲の群れが火を吹き、砲弾が発射された。

 同じタイミングで魔法陣からも三本の炎槍が射出され、砲弾に絡み付きながら共に飛翔。戦車型一台の正面装甲に命中した。

 魔力強化された砲弾に攻撃魔法をミックスした火砲の威力は凄まじく、次々に戦車型の胴体正面装甲を融解して貫き、内部で炸裂。

 八十八ミリ砲の直撃を受けた数体の戦車型が大爆発を起こした。

 魔導戦車には都合五人の魔導士が同乗し、これを動かしている。


 魔導戦闘機とは違い、出力の低い論理魔導機関や精霊炉を使いながらも、操る魔導士の数で補う形を取っている。

 無論、元々多くは無い魔導士の人数が必要なこの兵器は数は多くは無い。しかし、陸戦ダスクメタリカとまともに戦える戦力であることは確かだ。

 爆発に巻き込まれた歩兵型が次々に砕ける。

 しかし、恐怖を知らないダスクメタリカ共が止まることはなかった。

 砲撃に吹き飛ばされ、粉砕されてなお歩兵型が魔導戦車に肉薄せんと前進してくる。

 これを身体強化甲冑を纏った騎士が迎え撃った。

 メタリカとの戦争の際に異世界より来訪した戦士の一団が使用していた甲冑を再現したものだ。

 その性能は遥かに劣るものの、個人戦闘力は確かに向上した。

 通常に倍する筋力を以て分厚い金属製の盾と装甲目標を粉砕するための巨大白兵武装、重砕剣を構えたその姿は迫力満点である。

 突進してくる歩兵型の衝角を盾で受け止め、重砕剣を叩きつける。

 その強化された筋力と超重武器による圧倒的な物理破壊力に、歩兵型が圧砕された。

 小銃弾や対人攻撃魔法程度ならモノともしない歩兵型ダスクメタリカだが、突き抜けた物理攻撃力に耐えきれなかったようだ。

「よしっ!」

 甲冑に身を包んだ騎士が力強くうなずき、次の敵を探す。

 その視界が、深紅に埋め尽くされた。

 なにかを考えることも出来ず、身体強化甲冑の上半身ごと騎士の意識は消え去った。重砕剣と盾が音を立てて散らばり、残された彼の下半身が、ドウと倒れた。それを戦車型ダスクメタリカの蟹足が踏み砕く。

 胴体上部にある小さな直方体から赤い破壊光線を放ちながら前進するそれに、強化甲冑姿の騎士達が薙ぎ払われた。

 大盾の存在から類推できるだろうが、身体強化甲冑は魔法障壁を張れない。

 その動力源である論理魔導機関による魔力供給量では、甲冑に付与した身体強化魔法を維持するので精一杯なのだ。

 それでも盾を以て戦車型の攻撃に耐えようとするが、盾は二秒と持たずに貫かれ、騎士がまた一人絶命した。

そうして崩れた戦線に、歩兵型が殺到してくる。

 次々に衝角を突き出してくる黒い異形どもに、騎士達は防戦一方となる。が、突然にバガンッ! と、ドラム缶をハンマーでぶっ叩いたような音がして、歩兵型の群れが盛大に宙を舞った。そこに黒い影がぬうっと顔を出す。

 巨体を甲冑に包んだ巨人族の戦士だ。

 五メートルにもなる身長に比例し、その力は強大無比な一族。そんな彼らが手にはハンマーを持ち、前に出る。

 迎え撃たんとする歩兵型の群れを、文字通りに蹴散らしながら進んだ彼が、戦車型に挑んでいく。

 戦車型ダスクメタリカは、赤い破壊光線を巨人へ放つ。

 巨人用の特製甲冑がわずかにそれに耐えるが、そのまま溶けてしまう。が、そのわずかな時間に走り寄った彼が、戦車型に掴みかかった。

 ダスクメタリカの足を捕らえ、そのまま関節部を力づくで逆方向へと曲げた。

 バキャリ! と、足一本を折られ戦車型は後退しようとする。巨人はソレを逃がすまいとさらにハンマーを振り上げた。

 巨大なヘッド部分が、戦車型の上面を叩き、衝撃で戦車型の胴体は大地に激突した。ひしゃげたソレにトドメを刺さんと巨人が再びハンマーを振り上げた。その頭に、赤い光が命中した。

「ゴアアァァアッ?!」

 それまで一言も発しなかった巨人が悲鳴のような声をあげた。

 その顔面は半分焼け焦げていた。皮膚は爛れ、彼の顔は黒とピンクと赤に染まる。

 なまじ耐久力があるが故の苦しみ。

 しかし、それも長くは続かなかった。赤い火線が次々に彼の体を穿っていく。

 戦車型による集中砲火。魔導戦車ですら呆気なく粉砕しかねないほどの過剰な攻撃で、巨人の戦士はその命脈を絶たれた。

 が、報復はすぐにやって来た。

 人型魔導鉄鋼巨兵の後方に位置していた四本足の砲兵タイプ鉄鋼巨兵が、砲撃を開始したのだ。

 口径百五十五ミリの巨砲から撃ち出された巨弾が、次々に着弾し、戦車型が爆炎に包まれた。

 爆裂火球の魔法を仕込んだ砲弾は、広範囲に破壊を撒き散らす。

 戦車型とともにひしめいていた防御の弱い歩兵型はこの攻撃で薙ぎ払われていった。

 かろうじて生き延びた戦車型が再び前進しようとした瞬間。

 その正面装甲に鋼の拳が叩き込まれた。

 人型鉄鋼巨兵が前進し、白兵戦を挑んできたのだ。

 人型鉄鋼巨兵は、右腕が砲門となっているが、左腕は人間の手のような五指を持つ手になっている。

 殴り付けてはかえって壊れてしまいそうなソレはしかし、戦車型を吹っ飛ばし、健在だ。

 錬金術の奥義とも言えるゴーレムの作成術と、メタリカという機械技術の発展した種族の技術が融合した結果、脆いはずの駆動部の強度は飛躍的に向上し、この兵器の機動力を支えていた。

 だが、魔導戦闘機と変わらぬほどに強力なこの兵器は、やはり変わらぬ程度に少ない。

 対してダスクメタリカの数は無数と言っても良いほどだ。

 さらには。

「対地駆逐艦発砲! 防御ーッ!」

 叫び声が響き、陸を行く騎士軍の者達が一斉に防御姿勢をとった。次いで空から無数の円筒が降ってきた。

 それが大地に激突した瞬間、爆発。騎士軍は爆炎に煽られた。対地駆逐艦型中型ダスクメタリカは、対地掃討能力に優れている。文字通り、地上戦力を駆逐するわけだ。

 警告が早かったため、大半の者は防御が間に合ったが、間に合わなかった者達は巻き込まれた歩兵型や戦車型ダスクメタリカと運命を共にした。

 そして、爆煙が晴れきらず視界が悪い中、黒い影が彼らの頭上に差し掛かり、巨大な柱が降ってきた。

 運の無い魔導戦車の一台を踏み潰したソレは、足だ。

 小山のような影が、ぬっと現れる。

 移動要塞型ダスクメタリカ。

 その巨大さは、八メートルの高さがある人型魔導鉄鋼巨兵が見上げるほどだ。

 全高三十メートル。

 ヤドカリのようなその要塞は、行く手を遮る騎士軍地上部隊に気づきもせずに前進する。

 その移動だけで、騎士軍に被害を与えているのだ。

 だが、騎士軍とて座して死を待つばかりではない。

 戦力を結集した彼らが、巨大な要塞へと立ち向かっていった。

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