表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は欲深い  作者: 白波ハクア
少女転生編
28/64

第26話 門出

 今日は入学式だから緊張しない?


 そんなことを言った馬鹿はどこのどいつだ。ふざけやがってぶん殴ってやる。

 ……と、私は会場の椅子に座りながら内心荒れていた。


 希望溢れる学校生活の始まり。新入生の期待の眼差し。そんなのはなかった。

 新入生はほとんどが貴族の子供達だ。いかに自分が上の立場につけるか、その応酬が会場に入る前から繰り広げられていた。

 平民のような人は何人か居たけど、全て等しく会場の端っこの方の椅子で大人しくしている。実際、関わりたくないんだろう。私だってそうだった。でも、悲しいかな。私もその貴族達の変な応酬に巻き込まれそうになっていた。


 原因はエリスだ。

 王国騎士隊長というエリスは、勿論有名な存在だった。そこにいる人から尊敬の眼差しを受けている。貴族も平民も、教員と思われる人達全員からだ。めちゃくちゃ人気者じゃん……と呆れてしまった。


 その人達が次に見るのは、エリスと一緒に行動していて、なおかつ仲がよさそうに話している私だ。しかも、エリスは子供を溺愛する母親のように、私のことをめちゃくちゃ心配している。

 普通ならエリスの子供か、それに近しい存在だと思うだろう。……違うんです。彼女とは友達なだけで、決してそういう関係ではないんです。私は何処の馬の骨ともわからない平民です。と言っても無駄なのはわかっている。


 流石にエリスがいる前で私を問い詰めるのはしないのか、校門から会場へ歩いている間は変な視線を受けるだけだった。

 でも、会場に入ってエリスと別行動になった瞬間、貴族の子供達が私に押し寄せてきた。

 咄嗟の判断で逃げて平民らしい人達の席に座ったけれど、平民は揃ってもっと端の方に移動し、空いた両隣に貴族達が座り始めた。


 ……どうしてこうなった。と私は変な汗をかいていた。

 前後左右から視線をビシバシ感じる。顔を上げたが最後、目があった人から何かを言われるに違いない。それが怖くて、私はずっと下を向き続けている。


「──カガミ? 大丈夫か?」


 と、そこで私が何度も聞いた声が聞こえる。

 その方向を向くと、保護者席に座っていたはずのエリスが近くまで来ていた。

 周りが騒がしくなる。生徒達から「エリス様だ……」とか「今日もお美しい」とか囁かれているけど、当の本人は私のことしか気にしていないようだった。


「体調が悪いようなら、教員に言って保健室まで行くか?」


「い、いや……大丈夫だよ。少し、緊張しているだけだから……」


「……そうか。だが、無理をしないでくれ。胃薬飲むか?」


 丸い粒状の物とお水を差し出してくる。

 どうしてエリスがそれを持っているんだよ。とは言えなかった。


「今のところは大丈夫……本当にキツくなったら言うよ」


「わかった。では私は戻るぞ」


「うん、ありがとう」


 最後に私の頭を撫でて、エリスは元の場所に戻る。


 彼女のおかげで少しはメンタルが戻った。

 でも残念ながら、周りからの視線は一層強くなったので、私の緊張感は倍増したのだった。


 入学式が始まると貴族達の無言の圧力は薄まり、私はそこで初めて顔を上げることが出来た。

 式自体は普通だった。国の重鎮達、ガイおじさんやその側近達の言葉。……あれ? エリスはあっち側にいなくていいの? という疑問はあえて考えないようにした。

 その後、生徒会長や新入生代表挨拶。最後に学園長が話して式は終わった。


 まずは来賓であるガイおじさん達が退出し、その後で保護者達が出る。

 ようやく新入生も解散となり、私は再び向けられた視線から逃げるように、その会場を飛び出した。


 そして私は────


「ぶえええええええんっ! エリズぅうううう!」


 外で待っていたエリスに抱きついていた。


「……よしよし、全くお前は甘えん坊だな」


 違うんです。周囲の視線が辛すぎたんです。

 貴族怖い。なんで私と同年代の子供があんな迫力出せるんだよ。あいつら人間じゃねぇ。


「ははっ、前途多難というやつですね?」


「……ん? あ、マディアスさん!」


 そこには側近の一人であるマディアスさんがいた。


「こんにちは、カガミ殿。ご入学、おめでとうございます。側近を代表して、心からの祝福を申し上げます」


「……ありがとうございます。嬉しいです」


 注文していいのなら、もっと人目のない場所で言ってほしかった。

 側近二人に祝福をされている私は、絶賛注目の的だった。背中に凄まじい量の視線が刺さる。

 二人はそういう視線に慣れている……というか気にしないから別になんとも思わないんだろうけど、少しは私のことを考えてほしい。


「……ですが、これでエリスさんとはしばしのお別れですね。寂しいでしょう?」


「ええ、でも、私にはこれがありますから」


 そう言って腰の剣を指差す。勿論、純白の剣の方をだ。

 魔剣はエリスの言った通り、必要だと思った時にしか剣を抜かない。本当は収納に入れておきたかったんだけど、何故か入れることは出来なかったので、仕方なくこうして二本持ちをしている。


「その剣は……魔法剣ですか。エリスさん、今回の褒美を全て使いましたね?」


「だが、これで構いません。私はこの子に助けられました。私が陛下から頂いた報酬は、全てこの子に使うと最初から決めていました」


「そうですか……よかったですね、カガミ殿」


「はい、とても嬉しいです」


 その言葉にマディアスさんは満足そうに笑った。彼は祝福の言葉を言うためだけに来たのか、この後仕事があると言って学園の方に歩いて行ってしまった。

 あれ? エリスはあっち側に(以下略)


「新入生は集まってくださーい。クラス分けの表を提示しました。それぞれのクラスに行ってください」


 教員がそう言い、貼り出された大きな用紙に新入生がわらわらと集まり始める。

 ようやく私のクラスがわかり、新しいクラスメイトとの出会いが始まる。


 ……でも、出来るならまだその発表は聞きたくなかった。だってそれは、エリスとの別れの合図でもあるのだから。


「……行ってしまうのだな」


「……うん、ここまでありがとうエリス。感謝しているよ」


「感謝を言うのは私の方だ。ありがとうカガミ。……いつでも帰って来い。我が家はお前の帰る場所でもあるのだからな」


「うん、わかった。じゃあ、もう……行くね」


「ああ……」


 エリスは私を抱き寄せた。そして、頭を撫でてくれる。

 私も彼女を抱き返した。胸に顔を埋め、別れを惜しむ。


「お前なら大丈夫だ。決して負けるな……」


「うん。うん……!」


「よし、いい子だ。……では、カガミ。元気でな」


「エリスも、元気でね……」


 こうして私達はしばしの別れとなった。

 涙は必死に堪えた。こんなところで泣いていたら、エリスに大丈夫だと安心させられないから。


 エリスに背を向けて私は歩き出す。出来る限り堂々と、胸を張って。

 ……大丈夫だ。私はエリスと約束したから。そのために私は──前に進む。

これにて少女転生編終わりです!

次回からは少女学園編となります。よろしくお願いします。


面白い。

続きが気になる。

応援している。


そう思われた方は、下の方にあるポイント評価から評価の方をお願いします!

私にモチベーションがぐんっと跳ね上がるので、ぜひっ!


では、また明日からもよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ