エピソード3:王国の影と深緑の誓い(中編)
王国の華やかな表通りの裏側で、静かに広がる病。物語は、冒険者たちが一つの「闇」に向き合う中編へと突入します。
エピソード3:王国の影と深緑の誓い(中編)
1. ギルドの「私状」
「ここだ。あまり長居する時間がないが、話をするには都合がいい」
職人組合の伝令員に促され、火山島の戦士と砂漠半島の巫女は『冒険者の酒場』の暖簾をくぐった。昼間だというのに店内には、心地よい活気に溢れていた。
奥の円卓につくと、職人組合の伝令員は声を潜めて切り出した。
「依頼の内容は、巷を騒がせている『違法薬物』の調査だ。服用した者が次々と重い中毒症状を訴え、廃人同様になっている」
「王立騎士団の管轄ではないのか?」
火山島の戦士の問いに、職人組合の伝令員は苦々しく首を振った。
「まだ『重大事件』とは見なされていない。だが、このまま放置すれば王国の根幹が腐る。ギルド(職人組合)は政治的干渉を避けるため表立っては動けないが、放っておくわけにもいかない。冒険者に依頼を出す事にしたが、中々上手くいかなくてな……そこで、あんたたちだ」
腕が立ち、信頼でき、何より王国とのしがらみが一切ない「異邦人」であること。その条件に納得した二人は、顔を見合わせ、静かに頷いた。冒険者の酒場の親父から火山島の戦士が代表として依頼を受諾し、一行は次なる合流地点へと向かった。
2. 学聖街の邂逅
王国の知性と信仰が集まる『学聖街』。白亜の建物が並ぶ並木道を抜け、角にある静かなカフェに足を踏み入れると、そこにはすでに二人の先客がいた。
一人は、聖職者の法衣を纏った穏やかな瞳の一神教の司祭。
もう一人は、山積みの書類を前に座る大学院の女性学者。
「待たせたな。こちらが今回の調査を共にする仲間だ」
職人組合の伝令員の紹介を受け、五人は一つのテーブルを囲んだ。白亜の建物が立ち並び、知の香りが漂う学聖街。その一角にある静かなカフェのテラス席で、五人の男女が顔を合わせました。
職人組合の伝令員が、円卓を囲む面々を見渡して再び口を開きます。
「さて、まずは互いを知ることから始めようか。これから命を預け合う仲になるんだ。……俺から行こう。職人組合の伝令員をやっている。潜入と情報収集、それから交渉事は俺の専門だと思ってくれていい。今回のチームの『繋ぎ役』を務める」
が促すと、その隣に座っていた法衣の男が、穏やかに、しかし芯の通った声で続きました。
「大聖堂から参りました、一神教の司祭[プリースト]です。日々、救護院で病める人々に寄り添っております。魔薬の毒に侵された魂を救うことはできませんが、肉体の苦痛を和らげ、癒しの奇跡を授けることは可能です。主の教えに背くこの大罪、共に見届けさせてください」
次に、山積みの羊皮紙を無造作に脇へ除け、鋭い瞳を向けた女性学者が口を開きます。
「王立大学院で錬金術を研究している大学院の女性学者[ウィッチ]よ。……あ、挨拶は手短にね、時間の無駄だから。私の役割は、敵が使う『魔薬』の正体を暴き、無力化の術式を編むこと。現場での戦闘は貴方たちに任せるけれど、知識という刃で後ろから支えてあげるわ」
三人の視線が、異邦の装束を纏う二人に注がれました。火山島の戦士は背筋を伸ばし、その視線を真正面から受け止めます。
「火山島から来ました。……主君を持たぬ自由騎士として、この地の法に従い、悪を断つ。剣術と体術、それから多少の符術なら心得ています。前衛は私が引き受けます」
最後に、隣で碧玉の瞳を煌めかせた砂漠半島の巫女が、凛とした声で結びました。
「砂漠の半島から参りました、占星術師です。私は星の導きを読み、砂の海で培った術を振るいます。後方からの魔導援護は任せてください。……砂漠の夜と同じく、この王国の闇も星が照らし出してくれるはずです」
出身も、立場も、信じるものも違う五人。
しかし、卓を囲むその眼差しには、共通して「揺るぎない覚悟」が宿っていました。
3. 禁じられた「魔薬」
「大聖堂の救護院には、毎日中毒者が運び込まれています」
一神教の司祭が重い口を開いた。
「彼らの瞳からは光が消え、まるで魂を何かに喰い取られたかのような衰弱を見せる。これは単なる毒物ではありません」
続いて大学院の女性学者が、分析結果の羊皮紙を広げた。
「大学院で成分を調べたけど、結果は最悪よ。植物由来の成分に、意図的に『魔力』が付与されている。……これは、大憲章で厳格に禁じられている『魔薬』そのものだわ」
魔薬。それは服用者に一時的な多幸感や魔力の増幅を与える代わりに、精神と肉体を急速に崩壊させる禁忌の産物。
「製造、販売、所持……そのすべてが極刑に値する。誰かが組織的にこれをバラ撒いているのは明白ね」
学者の言葉に、一同の間に緊張が走った。司祭の診察記録、学者の成分分析。それらが指し示す「供給源」の影。
「やるべき事は決まりましたね。……製造場所を特定し、元を断ちましょう」
火山島の戦士が低く告げると、パーティーはそれぞれの武器と知識を携え、新たな情報を得る為に動き出した。
王国の深い闇に潜む、薬物密売組織の尻尾を掴むために。
エピソード3:中編 了。後編に続く。
以下
設定資料
職人組合の伝令員[ギルドのスカウト]。初登場時(第三章から)
出身:西方五国(幼少期は定住せず、西方五国を巡業していた)
性別:男性
生まれ:旅人
能力:膂力B、体力B、身体操作A、感覚B、知能B、集中力B
技能:密偵2、剣士1、吟遊詩人1
呪歌曲:恋歌[チャーム]
装備:衣服、刺刀(3本)、小盾、投石紐、盗賊の七つ道具
ギルドのスカウト。旅芸人の一家で育つが、現在は王国で職人組合に所属し、伝令員して活動している。長身瘦躯の美男子。ギルドのトラブル対応の為、その時王国に来ていた、火山島の戦士と砂漠半島の巫女を勧誘する。一神教の司祭と大学院の女性学者は旧知の間柄。社交的で義理堅い性格。
一神教の司祭[プリースト]。初登場時(第三章から)
出身:侯国
性別:男性
生まれ:狩人
能力:膂力A、体力A、身体操作C、感覚C、知能B、集中力B
技能:霊能者2、山守1、剣士1
降霊術:初級全般
装備:司祭服、長杖、棍棒、投石紐、聖印(十字架)
一神教の司祭。侯国出身で狩人の家系であったが信仰に篤い家庭であり、本人も信仰に目覚めていた為、皇国で修業し聖職者になった。現在は王国の大聖堂に勤めている。巨躯の持ち主だが争いごとは好まず温厚な性格と見た目。パーティーメンバー唯一の既婚者(相手は女性司祭。聖職者同士の婚姻は認められている)
大学院の女性学者[ウィッチ]。初登場時(第三章から)
出身:公国
性別:女性
生まれ:学者
能力:膂力B、体力B、身体操作B、感覚B、知能A、集中力B
技能:錬金術師3、決闘者1
錬金術:中級
装備:学者服、短杖(発動体)、指輪(発動体)、刺刀、本(雑記帳)、筆記具
賢者の学院所属の女性学者。公国の宮廷錬金術師を輩出している家柄で、若いながら本人も優秀な錬金術師。研究の為、公国から帝国そして王国にやって来た。フィールドワークの為に冒険者として活動している。瘦躯で赤髪、美麗な顔立ちをしている。知的で好奇心旺盛な性格をしている。
能力
S(最高)ランクから、A(得意)、B(平均)、C(苦手)、D(最も低い)ランクまで。同じBランクでも一部の能力で、男女差がある場合がある(男性は膂力が高めで、女性は感覚が高め)。
膂力[ストレングス]力の強さ。
体力[ライフ]肉体の頑健さ。
身体操作[マニュピュレーション]手先の器用さや敏捷性、精密な動作。
感覚[センス]五感の鋭敏さ。
知能[インテリジェンス]頭の賢さ。
集中力[コンセントレーション]一つの事柄に意識を集中して取り組む能力。高いと行動の成功率が上がる
技能
習熟度が1(初心者)から、2(経験者)、3(熟練者)、4(達人)、5(名人)まで
剣士[グラディエーター]戦闘技能。一切の制限なく武器を使用する事が出来る、条件を満たせば、特殊戦闘技能を取得する事も可能。
密偵[エージェント]鍵開けや軽業などを行う事が出来る。
山守[サバイバー]罠の発見や足跡追跡などを行う事が出来る。
霊能者[メディウム]降霊術を使う技能。医術や薬学にも詳しい。
錬金術師[アルケミスト]錬金術を使う技能。非常に難解な為、学術や言語の習得が必須となる。
占星術師[アストロガー]占星術を使う技能。占術や伝承に詳しい。
学士[ワイズ]学術に詳しく、言語の読み書きが出来る。符術を取得する事が出来る。
吟遊詩人[ミンストレル]歌唱と楽器演奏が出来る。複数の言語が話せ、呪歌を取得する事が出来る。
決闘者[デュエリスト]軽量の武器を用いて一対一で戦うことを基本としている戦闘技能。護身術としても使える。
特殊戦闘技能
居合、剣舞[アルダ]、突撃[チャージ]、受け流し[パリィ]、交差反撃[カウンター]など。
出自(初期技能)
自由騎士(グラディエーター、ワイズ)
傭兵(グラディエーター、サバイバー)
組合伝令員
聖職者
巫覡
学者
旅人
商人
狩人
農民(初期技能なし)




